表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
カーリルン公領統一戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/55

再会

「で、ウィンはこれからどうするのじゃ」

「さて、どうしようか……」

 記憶が戻ったからには、カーリルン公領でのんびりしているわけにもいかない。監察使としては、いったん帝都に戻って任務失敗の報告をすべきである。ラゲルスたちのことも心配だ。だが、カーリルン公領にはこれまでただ飯を食わせてもらった恩義がある。カーリルン公領の内政問題に関わるべきではないが、放っておけないような気もする。

 帝都に戻るべき理由の方が多いのだが、うまく言語化できない何かが、大して長くない後ろ髪を引っ張る。なぜかカーリルン公領にもう少しいるべきだ、と感じる。


 今にも「帝都に帰る」と言い出しそうなウィンを、アルリフィーアは不安そうな顔で見つめていた。記憶が戻ったウィンには、やるべきことも帰るべきところもある。アルリフィーアにはウィンを引き留める権利はない。

「話は変わるがな、ワシの話し方は変か?」

 本当に話が変わった。なぜ今その話題か? というくらい変わった。何でもいいから話題を変えようとしたといった感じである。

 ウィンにとって、アルリフィーアの言動は不可解だった。だから、表層的な対応しかできない。

「変? いや……変わっているけど変じゃないですよ。珍しい、と言うべきかな」

「珍しいのは変なのではないのか?」

「人とは違う、というだけだ。それは変なことではない。だが鼻の穴を広げるのはやめた方がいいでしょう」

「鼻のことなど聞いておらん」

 アルリフィーアは顔を真っ赤にしてウィンを睨み、つぼみのような唇を固く結んで頬を膨らませていた。

「父上がご存命の頃、サルターク伯親子が遊びに来たことがあった。サルターク伯の娘はワシと同年じゃったが、ワシの話し方を変だと言って笑いおった」

「ふむ」

「この話し方はおばあさまに授けていただいたもの。ワシはおばあさまと同じように話すのが誇らしかった。だから笑われてひどく驚いた」

「……」

「おばあさまが笑われたような気がして、悔しいやら悲しいやら。やはり変なのかのう。帝都にもこんな言葉遣いをする者はおらんのじゃろうか」

「私が知る限りでは、お一人。他はもっと当代風の話し方ですね。リフィの言葉遣いは昔の高貴な女性のそれです」

「時代遅れということか」

「さあ? それって悪いことですか?」

「そうじゃな。ウィンに言われて改めて自信がみなぎってきたわ!」

 アルリフィーアはそう言うと、わははと笑った。ウィンの笑い方に影響されたらしい。「その笑い方は淑女っぽくないですよ」と指摘しようかと思ったが、やめた。

 そうしたところもアルリフィーアらしさなのだから。


 二人でとりとめもない話をしていると、侍従長が現れた。

「セレイス卿にお客人がお見えです」

「客?」

 玄関広間に行くと、ベルウェンが居た。

「あれ、ベルウェン。こんなところで何してるの?」

「てめぇ、言うに事欠いてなんだそれは!」

「えっ? 何? 何で怒ってんの?」

「人がてめぇのこと探して右往左往してる間に、てめぇは美女とのほほんとしてやがって。無事なら連絡ぐらいしろ!」

「いや、いろいろすっかり忘れててね」

「忘れてただと? この野郎」

「や、そういう忘れてたじゃなくて……」

 アルリフィーアはベルウェンのけんまくに驚いたが、初めて聞く言葉遣いが面白くて真剣に聞いていた。

 目を輝かせて二人の会話に聞き入っているアルリフィーアを見て、「彼女には何が刺さるのか全く予想がつかない」とウィンは嘆息した。

「まあ、こんなところで立ち話もなんだから、場所を変えよう。あ、私の宮殿じゃないけど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ