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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
木漏れ日の姫

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軍議

 ロレルは主要な家臣の招集をアルリフィーアに要求した。アルリフィーアの意思確認の場面は家臣に見せるべきものではない。ゆえにあえて2人だけの場で行った。だがこれからのことは密室で進めてはならない。それではカーリルン公の家臣たちは動いてくれない。彼らが持つ詳細な知識も必要だった。

 まず、家臣たちの前でアルリフィーアが改めて親族の討伐という戦略目標を宣言した。あくまでも、公爵の決定を皆が実現するという形でなければならない。

 一同はひどく驚き、困惑した。だが、アルリフィーアの決意に満ちた顔を見て異を唱える者はいなかった。彼女は公爵として命じたのである。できない理由ではなく実現する方法を考えよ、と。


 何をおいても力の源泉は軍事力である。力のない者が意志を貫くことはできない。各勢力が動員し得る兵力を見積もっておく必要がある。

 アルリフィーアに問われ、ニレロティスが答えた。

 「カーリルン公(アルリフィーア)が動かせるのは、騎兵歩兵合わせて6000。北東部を押さえるカラントム卿(スウェロント)が4000、南西部のテルトレイト卿(デベルロント)、南部中央のザロントム卿(トンゾロント)、南東部のディチレル卿(メンエロント)がそれぞれ3000ほどと思われます」

 公爵軍が最大とはいえ、その倍の兵力で挟まれていることになる。

 宿老のベルロントが口を開いた。

 「この状況では武力で従わせるのは困難。彼らの支配下にある小領主を調略して切り崩しを図ってはどうか」

 それに対してニレロティスが異を唱えた。

 「それでは何年かかるか分かりません。そもそもこの3年、どうにもならなかったではないですか」

 「ならばなんとする。代案を出せ」

 「最大兵力をもってまずディチレル卿(メンエロント)を粉砕し、公爵の意思を知らしめてはどうか」

 「その間にカラントム卿(スウェロント)がフロンリオンを攻め落とすだろう」

 しばらく議論が続いたが、進展はなかった。ベルロントもニレロティスも無能でもなければ怠惰でもなかった。この3年間、現状を変えるべく考え抜いてきた。あらゆる可能性を模索した結果、思考の袋小路に入ってしまった。アルリフィーアが望んだのは、変化だった。


 アルリフィーアが「何とかしろ」と言いたげにロレルを睨む。ロレルに対する怒りはまだ収まっていなかった。

 アルリフィーアの視線が突き刺さるのを感じながら、ロレルは機会を待った。そして議論が途絶えた瞬間をとらえて、ロレルは静かに、事もなげに宣言した。

 「まず最大勢力のスウェロント領を取りましょう」

 「それができれば苦労はない」

 「カラントム卿と全面戦争になれば、それこそ南部の連中の思うつぼではないか!」

 「別に正面から攻め込む必要はありませんよ。連中は姫のことを『たかが女』と思っているのでしょう。それを利用しましょう」

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