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序章
本作は『居眠り卿とナルファスト継承戦争』の続編です。
木陰を抜ける涼風で枝が揺れ、優しい影と夏の峻烈な日光が行き来するのを感じる。木漏れ日がまぶたを貫く。
「生きておるか? ならばほれ起きよ。いつまで寝ておる。起きろというのに」
女性の美しい声がする。と同時に、一気に覚醒した。
目を開けると、木漏れ日で目がくらんだ。
「おお、気が付いたか」
大層古風な話し方をする少女は破顔した。真夏の木漏れ日のような、優しくて柔らかい、そして鮮烈な笑顔だった。
15、16歳くらいだろうか。彼女は、興味津々、好奇心むき出しの表情を浮かべてぐいぐいと迫ってくる。翠玉色の瞳がきらきらと輝いて、面白い答えを待っている。