ダンスしようニャ! お布団かけて
「ダンス大会?」
「そうにゃ。今度の日曜、月ノ森公園で競うにゃ」
「うーん、でもあたし、ダンス苦手だしなぁ」
お隣のシマ君が、オレンジ色のしましましっぽを揺らしながら、猫集会のお知らせを伝えてくれる。
ダンス大会かぁ。
思い思いに踊るだけなんだけど、目立つことは苦手なんだよね。
渋い顔をしていると、シマ君が付け足した。
「賞品が豪華にゃ! なんと、優勝者には"仁科さんちの干したてお布団"!!」
「えっ? あの有名な仁科さんちのお布団?」
界隈のネコなら誰しも一度は耳にしたことがある、仁科さんちのお布団。
仁科さんちでは雨の日以外、毎日お布団が干されるらしく、その極上の寝心地といったら、天国もかくやというほどらしい。
ほどよい沈み具合にフィッティング、ぽかぽかとした温もりに包まれながら、鼻をくすぐるのはお日様の香り……。
"それはお昼寝してみたいねぇ"と評判なのに、怖い大型犬がいるせいで、秘密の抜け道を知る者しか、お布団に辿り着けない。
「そうにゃ。ダンス大会主催のタマサブローさんは、仁科さんちに入れる裏ルートを知ってるらしいにゃ。二階にいつも開いてる小窓があるらしくて、そこに安全に行ける方法」
「そ、それは……」
「魅惑的な賞品だにゃ? ミオも参加を考えてみるにゃ」
ダンスは興味ないけど、賞品がちょっと……、ううん、ものすごく気になる。
真面目に検討し始めたあたしに、シマ君が言った。
「そ、それでだにゃ。もし一猫が恥ずかしかったら、オレと一緒に出ないかにゃって……」
「え?」
「か、考えといてくれにゃ~~」
オレンジ色のシマ君が、さらに赤く染まって屋根の上を駆けてった。
ああ、ちょうど夕陽が沈むとこなのね。
あたしもそろそろ帰らなきゃ。
屋根瓦から、すたっとベランダに飛び降りる。
ガラス窓にぴったりと身を寄せると、窓際の勉強机にいたご主人様があたしに気付き、すぐに窓を開けてくれた。
「ミオ~、そこに立たれると影になるって言ってんじゃん」
「にゃ~~ん」
知ってる。だってわざとやってるもん。
伸ばされた指先に、そっと顔を寄せ、ご主人様の手にあたしの匂いを撫でつける。
ほぅら、ご主人様。あたしのモフモフを堪能して。
でもって許して。
「敵わないなぁ、ミオには。ほら、おいで」
あたしを抱き上げたご主人様が、優しくお膝の上に降ろしてくれた。
ふわぁぁぁ。ご主人様の体温、ぬっくぬく。ご主人様のにおい、最高。
(うん。ご主人様のお膝が一番。ここはあたしだけの特別な席)
仁科さんちのお布団は確かに興味あるけど、別に無理してダンス大会に出る必要はないかな……?
夢見心地のまま、あたしはゆっくりと目を閉じた。
夜分。
「お──い、ミオぉ。ダンス大会で優勝するため練習するにゃ~~。オレたちで天下無双するぞ──!!」
いつの間にか目標が壮大になってたシマ君が、すっかりその気で誘いに来たのだった。
えぇぇ……。
お読みいただき有難うございました!
こちら、他の小説サイトに投稿していた作品なのですが、今日ふとカレンダーを見ると11月11日。
ゾロ目だ…。
ぜひ「1」を揃わせて、11時11分に投稿したい。という欲求がムクムクと沸き上がり、でもちょうど書き上がってる短編がないので、じゃあ手持ちを出すぞ、と持ってきました(笑)
こたつと猫が恋しい季節ですね~。
(ガシャポンの猫。しっぽがネジになっていて、回すと転がります(笑) ごろんごろん♪)
寒くなって、日差しの有難さを一層感じる季節です。
シマ君とミオちゃんは素敵なダンスが踊れたのでしょうか? はたして?(笑)
干したお布団に思いを馳せつつ。お身体大切にお過ごしください。




