エピローグ:騎士の誓い(第1部:『 謎の異邦人編』完;第2部:『騎士の秘めた思い編』)につづく
エレノア嬢の屋敷の窓から差し込む朝日の最初の光が、大理石の床に金色の輝きを投げかけていた。
朝露の香りが開いたバルコニーから漂い、俺は全身鏡の前に立ち、新しい制服を整えていた。
騎士の制服だ。
深いネイビーブルーのコートには銀の細工が施され、肩にぴったりとフィットしていた。
胸には深紅のサッシュが斜めに走り、エレノア・ドユ・リサンダー令嬢の個人騎士としての地位を示していた。忠誠の象徴。彼が守ることを誓った義務だ。
エレノア嬢の命を狙う刺客どもを退けて、救ったことで伯爵さんからの墨付きをもらった証拠だ。
だから、今の俺の人生は変わっている。
ほんの数週間前、俺は部外者だった——見知らぬ土地の異邦人。
でも今、俺はここに立ち、自分が取るとは思ってもみなかった誓いに縛られていた。
「クロード!」
振り向くと、エレノア嬢がドアの前に立っていた。彼女は優雅な乗馬服を身に着け、柔らかな朝の光が彼女の金色の髪を絹のように輝かせていた。
彼女は微笑み、明るい青い目が温かみを帯びてきらめいた。
「ついに私の騎士としての姿を見せてくれたのね。よく似合っているわ」
「そう思うか?」
彼女は前に進み、手袋をはめた手で俺のコートの襟を整えた。
「はい、これで整え終えたわ」
単純な仕草なのに、なぜか……親密な感じがした。
一瞬、俺達の目が合った。
「「.......」」
「...うぅ...」
エレノア嬢の頬が薄く赤くなり、彼女はすぐに顔を背けた。
「と、とにかく!朝の乗馬に行くわよ。騎士は令嬢を護衛しなければならないんだから~!」
「そ、そうだね!よし、行こう!い、いや、行きましょう、お嬢様」
これは慣れるのに時間がかかりそうだ。
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エレノア嬢と俺が館の大きなな庭園を通過し、騎士育成総合施設のある王城敷地内へと向かっていく途中、影が密かに動いていた。
遠く離れた貴族の屋敷の薄暗い廊下で、覆面を被った男が見えない主人の前にひざまずいていた。
「暗殺の試みは失敗しました」
覆面の男は低い声で報告した。
「令嬢は生き延び……そして新しい守護者を得ました」
ゆっくりとした、意図的な拍手が部屋に響き渡った。
深く、ベルベットのような声が、楽しげに返した。
「面白い。異国の騎士だと?これでゲームがさらに楽しくなりそうだ」
ワインのゴブレットが、白い手袋をはめた手の中でゆっくりと回された。
「では、次の手を打とうではないか」
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第1部『 謎の異邦人』完