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第20話:真夜中の味

その夜:


エレノアはベッドの中で何度も寝返りを打っていた。


枕を何度調整しても、毛布をきつく引き寄せても——彼女は眠れなかった。


心が落ち着かないのだ。


クロード。


彼のことを考えずにはいられなかった。


彼がどれだけ厳しく訓練しているか。

そして、彼女の演奏を心から賞賛してくれたこと。


そして今、彼のことを考えるたびに、胸に広がる未知なる温かさ。


「……もう、私ってば、バカみたい」

彼女は呟き、起き上がった。


その時——


鼻に予期せぬ香りが漂ってきた。


温かく、スパイスの効いた香りが空気に混じっている。


何かが料理されている。


彼女は躊躇した。屋敷の料理人はこんな時間に働いているはずがない。


しかし、好奇心が勝った。


ガウンを羽織り、エレノアは静かに部屋を出た。


.................


美味しそうな香りの元を辿り、彼女はキッチンの外にたどり着いた。


中を覗いてみると——


そこには彼がいた。


クロードがカウンターに立ち、小さな鍋で何かをかき混ぜている。


近くのランタンの柔らかな光が彼の顔を照らし、力強い顔立ちに影を落としていた。


彼の表情は穏やかで、集中して——平和そうだった。


エレノアは固まった。


なぜか、彼をこんな風に見ていることが……不思議に親密に感じられた。


胸の鼓動が高鳴った。


彼女は立ち去るべきだ。クロードのを覗き見るべきではないと心の声が忠告。


しかし——


その時、彼が口を開いた。


「そこにいるのはわかってるよ、エレノア嬢」


彼女の息が止まった。


ゆっくりと、エレノアは中に入り、頬を赤らめながら言った。

「ど、どうしてわかったの?」


クロードは面白そうに微笑みながら彼女を見た。

「音が聞こえたから」


彼女は腕を組み、落ち着きを取り戻そうとした。

「えっと……こんな時間に美味しそうなものを作ってるのが悪いのよ」


クロードはふふふと笑った。

「ただのナイジェリア料理だよ。故郷の味」


エレノアの表情が柔らかくなった。

「故郷」


「……懐かしい?」

彼女は尋ねた。


クロードの手がゆっくりと動いた。


「……たまにな」


静かな沈黙が流れた。


そして、エレノアは咳払いをした。

「で、でも、せっかく来たんだから、私にも味見させてよ」


クロードは眉を上げたが、うなずいた。

「わかった。ちょっと待って」


数分後、クロードは彼女に小さな皿を手渡した。


彼女は好奇心を持ってそれを見た。


料理は色鮮やかで、柔らかそうな肉とご飯が、鮮やかなスパイスソースに包まれている。


彼女はためらいながら一口食べた。


……温かく、風味豊か。彼女がこれまで味わったことのない深い味わい。


エレノアの目が大きく開いた。

「これは……」


クロードは誇らしげに満面した顔になった。

「ジョロフライスだよ。故郷の定番料理」


エレノアはもう一口、そしてまた一口食べた。


そして、突然——


彼女は大きく微笑んだ。


「これ、すごく美味しいわよ~!」

彼女は大袈裟な喜び顔を浮かべながら言った。


クロードは胸に暖かな感覚を覚えた。


なぜか、彼女が自分の料理を喜んで食べるのを見て、心は不思議と満たされた気がした。


エレノアが食べ終えると、スプーンを置き、唇を舐めた。


クロードは彼女を見つめ、目を離せなかった。


今夜の彼女は何か……違っていた。


たぶん、それは彼女の金色の髪が柔らかな波を描いて肩にかかっている様子。


あるいは、彼女の目が純粋な喜びで輝いていること。


もしかしたら——ただの可能性だが——彼はようやく、彼女が本当にどれほど美しいか、その女神にも顔負けな美貌に気づき始めていたのかもしれない。


エレノアは彼の視線に気づき、首を傾げた。

「どうしたの?」


クロードは急に目をそらした。

「いや、何でもない」


「そう?」

彼女は柔らかく微笑んだ。

そして、彼を驚かせる言葉を口にした——


「……そんなあなたを見るの、好きだわ、クロード」


彼は彼女を見て、混乱した。

「どういう意味だ?」


エレノアは優しく微笑んだ。

「あなたはいつも真剣だったり、決意に満ちていたりする。でも今、このキッチンで、好きなものを作っているあなた……幸せそうに見える」


クロードの息が止まった。


一瞬、二人は言葉を失った。


ランタンの揺れる光が周りに影を落とし、二人の間に静かな温もりが漂っていた。


エレノアはそっと呟いた——


「……あなたは、私にとってただの護衛であり騎士見習いなんかじゃないのよ」


クロードは胸が締め付けられるのを感じた。


そして、この世界に来て初めて——


彼は部外者ではないと感じ始めた。


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