第15話: 故郷の料理、そして子爵令嬢にちょっかいをかけられた
イセリア大聖堂を訪れた後、エレノア嬢さんと俺は王都、『ルメニア』の中心にある賑やかな市場を通り抜けて帰ることにした。
空気には焼きたてのパン、焼き肉、そして香り高いハーブの香りが漂っていた。
石畳の道の両側には屋台が並び、カラフルな果物や野菜から絹織物、装飾品、手作りの宝石まで、あらゆるものが売られていた。商人たちは商品を叫び、熱心な買い手たちと値切り合いをし、子供たちは笑いながら群衆の中を駆け抜けていた。
それはナイジェリアの露天市場を少し思い出させた。人々が値切り合う様子、屋台の鮮やかな色彩、その場所のエネルギー——すべてが活気に満ちていて、どこか懐かしかった。
しかし、俺の目を引いたのは食べ物だった。
歩いていると、何かが目に入って足を止めた。
ある商人が木製のカートに、鮮やかな赤い唐辛子、玉ねぎ、そして見覚えのあるようなスパイスを並べていた。
「……まさか」
とつぶやき、近づいた。
エレノア嬢さんは首を傾げた。
「どうしたの?」
俺は手を伸ばし、その唐辛子の一つを手に取った。
それはまるでアタロド——ナイジェリア料理で使われるスコッチボネットペッパーの一種——のようだった。
口ひげの濃い年配の商人に向き直った。
「これは何という名前なんだ?」
商人は俺の手にある唐辛子を見た。
「それはドラゴンの炎唐辛子だよ、若者。とても辛い——勇気のある者だけが料理に使うんだ」
その唐辛子を見つめ、それからその横にある小さな赤い豆の山を見た。
それは故郷のハニービーンズにそっくりだった。
そして、屋台にある乾燥ハーブ……それはタイムやセントリーフに似ているかもしれない。
思わず興奮を覚えた。
「エレノア嬢さん」
と俺は彼女に向き直り、熱意に満ちた笑みを浮かべた。
「これで故郷の料理を作れるかもしれない」
彼女のサファイア色の瞳が輝いた。
「本当に?あなたの世界の……『ナイジェリア』の料理?」
彼女に向き直って頷いた。
「ああ。もし適切な材料が見つかれば、ジョロフライスや豆のポリッジに似たものを作れるかもしれない」
エレノアさんは手を合わせて興奮した。
「それなら、それを手に入れよう~!あなたの世界の料理をぜひ試してみたいわ!」
俺たちは屋台から屋台へと移動し、必要な材料に似たものを集めた。
完全に同じものではなかったが、なんとか代用できると思った。
米。幸い、この王国にも似たような穀物があった。
トマトと唐辛子——故郷のものとは少し違うが、ドラゴンの炎唐辛子が面白いアクセントを加えてくれるかもしれない。
玉ねぎとニンニク——味付けに必須だ。
干し魚と肉——タンパク質を補うために。
スパイス——タイムやローリエに近いものを見つけたので、使えそうだ。
エレノア嬢さんは小さな籠を持ち、俺が一つ一つの材料を注意深くチェックするのを面白そうに見つめていた。
「あなたは本当に料理に詳しいのね」
と彼女は言った。
「そうしないとね。故郷では、本物のナイジェリア料理を食べたければ、自分で作るか、適切な場所を知っている必要があったんだ。そして、信じてくれ、家庭料理はいつも特別なんだー!」
エレノア嬢さんは温かく微笑んだ。
「それは素晴らしいわ。料理はあなたの文化の重要な一部なのね」
「そうだ」
と認めた。
「食べ物は人々を結びつける——家族、友人、見知らぬ人さえも。その場所について、食べ物から多くのことがわかるんだ」
エレノアさんは思慮深く唸った。
「それなら、あなたの料理を楽しみにしているわ、クロード」
彼女の舞い上がった気持ちを前にして、俺もつられて温かい気分になりながら笑みを浮かべた。
「貴族の基準に応えられるといいんだけどね、『お嬢様』」
彼女は冗談めかして目を丸くした。
「それは私自身が判断するわ、『騎士様』。ふふふ...」
............
買い物を終えると、エレノア嬢さんは俺を市場の静かな一角に案内した。
そこには公共の噴水の側に小さな屋外の食事スペースがあり、人々がよく自分たちの食事を持ち寄って座って食べていた。
石の台の上に小さな調理場を設け、親切な食品販売業者から携帯用の火鉢を借りた。エレノア嬢さんは俺の側に座り、期待に満ちた表情で見つめていた。
材料の準備を始めると、近くのテーブルに座っている貴族の女性たちに気づいた。
彼女たちは優雅な服装をしており、精巧に刺繍されたドレスは高い身分を示していた。
そのうちの一人、鋭い緑色の目をしたブロンドの女性が、仲間に囁きながら俺たちの方をちらりと見た。彼女たちは扇子の後ろでくすくす笑い、明らかにエレノア嬢さんと俺を面白深そうに見つめていた。
嫌な予感がした。
「エレノアお嬢さん」
と声を潜めてつぶやいた。
「先客がいるみたいだ」
彼女は肩越しにちらりと見て、ため息をついた。
「無視しなさい。彼女たちはただ退屈な貴族の女性たちで、噂話が好きなだけよ」
彼女たちを無視することが最善の選択肢だとは思えなかったが、お嬢さんの言う通りに料理に集中する。
まず玉ねぎ、トマト、唐辛子を細かく刻んだ。鍋の油が熱くなると、それらを入れ、干し魚、ニンニク、スパイスも加えた。
すぐにジュージューと音がした。
香りが空気に広がった。
エレノアの目が大きく見開かれた。
「まあ……この香り、すごいわ!」
「完成まで待ってて」
米を加え、トマトと唐辛子のミックスと一緒にかき混ぜ、すべての風味を染み込ませた。
故郷の懐かしい香りが漂い、一瞬、俺はナイジェリアに戻り、母のキッチンで料理をしているかのような気がした。
その時、皮肉な声がその瞬間を切り裂いた。
「まあまあ……なんて興味深い光景でしょう」
顔を上げると、ブロンドの貴族女性が友人たちと一緒に立っているのを見た。
彼女は腕を組みながら、俺の料理を軽蔑の目で見つめていた。
「エレノア嬢が……ストリートクックと食事をするなんて、想像もしていませんでしたわ」
と彼女は嘲笑した。
エレノアの表情が冷たくなった。
「ヴィヴィアン様。私たちの前に現れてくださるなんて光栄だわ」
その女性——エレノアお嬢さんに囁かれて名前を知った、その子爵家の令嬢ヴィヴィアンは微笑んだが、決して優しい笑みではなかったようだ。
貴族の女性が誰かを軽蔑する時に浮かべる笑みのそれだった。
いつもアニメを見てきた俺だから言えることだ。
その不敵な笑みが。
「ただ好奇心から言ったまでですわ」
と彼女は付け加えた。
「伯爵の令嬢を魅了するような、どんな平民の料理があるのかと思いまして」
顎を固くしたが、何か言う前にエレノア嬢さんが突然立ち上がった。
彼女はヴィヴィアンの前に立ち、背筋を伸ばして堂々としていた。
「クロードはストリートクックではないわ!」
とエレノア嬢さんは毅然と言った。
「彼は私の大事な側仕え護衛であり、それと同時に大切な友人でもあるの。そして、これは彼の故郷の料理——私が今まで味わったことのない素敵な料理なの!」
ヴィヴィアンは驚いてまばたきした。
「貴女は本当にそんなものを……食べるつもりですか?」
エレノアさんの目は決意に燃えていた。
「食べるだけでなく、楽しむつもりなの」
それだけ言って、エレノア嬢さんは今度、俺に向き直り、微笑んだ。
「クロード、食べようか?」
俺は笑みを浮かべ、湯気の立つジョロフライスのお皿を差し出した。
「どうぞ、お嬢さん」
エレノアさんは一口食べ——そして息をのんだ。
「これ……これはすごいわ!」
お嬢さんはヴィヴィアンに向き直り、勝利の表情を浮かべた。
「あなたは自分が何を逃しているのか、わかってないわね」
ヴィヴィアンの顔は驚きに歪み、俺も笑いをこらえるのに必死だった。
今日はナイジェリア料理の勝利だぜ!
と、柄にもなく愛国心の念を発揮した俺の脳内の呟きが。
...........




