第5章 HIL
「通気口だ。奴は通気口に向かっているに違いない!!今すぐに奴を追え!!」
「りょ、了解です!!」
保安官らは血があふれ出る手首を抑えながら目に涙を浮かべて律を追いかけた。
ヒュンーータン、ヒュンーータンーー
律は軽快に棚から棚へと飛び移っていく。だが、その小さな体で鍛え抜かれた保安官を振り切ることは難しかった。
(うーん、プランBに変更かなあ。 てか、あいつら足早すぎだろ…)
ジ、、ジーー
「律、聞こえるか?プランBに変更だ。HILで補助する。その隙に東側の地点Cに向かえ。そこからは、分かっているな。」
「はい。了解ですっっっと。」
ヒュンーータン、ヒュンーータンーー
「捉えました!撃ちますか?!」
「よーし、撃て!!殺しはするな!!!」
パンッ、パンッ、パンッ
乾いた銃声が響く。だが、手首を切られているせいで上手く照準が定まらないらしい。暫くしてなんとか解き放たれた弾丸の一発が律に命中した。
「イ゛ッッッッ!!!!!」
「右足、一発当たりました!!」
「よーし、そのまま捕獲しろ!!」
保安官は棚の上に上り、律に近づいて行った。
「……ん?これは…!!!」
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一方、律は東側に進路を変え、無事に地点Cに着いていた。
(えーと、ここらへんだったかなあ、、、あ、あった。)
律がそばにあったファイルを引き抜くとそこにタッチパネルが現れた。
「暗証番号はー」
「2783948563829694635、ですよね。」
「流石私の助手だ。素晴らしい記憶力だな!!」
「えへへ、ありがとうございます!」
(夜通し唱えてやっと覚えたことは黙っておこう…)
律が番号を入力すると壁に人が一人通れる大きさの穴ができた。律はその中に入ると内側から同じ番号を入力して元通りにした。
「、、、ふう、、。つっかれたあ…」
「お疲れ。よくやった。すまないな、今回は私のミスだ。報酬ははずもう。」
「本当ですか?!やったあ!それにしてもHILって本当に便利ですね。立体映像も作れるなんて。」
「四台揃ってないと不完全になってしまうがな。あまり多用できる技ではない。まあ、今回は緊急事態だったからな。仕方ない。」
「こんなものまで発明できちゃう師匠、やっぱり凄いです…!ほんと、尊敬します!!」
「はは、褒めても報酬は変わらないぞ。それよりも、まだ任務は終わっていない。慎重に普段のルートに戻ってくれ。」
「りょーかいです!!!」
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その頃、保安官は状況に困惑していた。
「班長、映像です!!立体映像でした!!!!」
律の映像は徐々に薄れていき、消えてしまった。
「は?何を…これは!!この小さい機械の仕業か!!」
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ
「うわ、びっくりした!!班長!!このちっこいの、爆発しました!!」
「クソ、分解して調べられないように自己破壊したな…。」
「やりますねえ。」
「やりますねえ。じゃねえよ!!!今すぐ上に報告だ!!!ぼさっとすんな!!!」
「は、はいいいい!!!!」
保安官一行はHILの破片を拾うとそそくさと管理室を後にした。