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黎明戦記  作者:
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第4章 任務:資料を盗み出せ

「では,今回の任務の説明をする。君には第8政府管理室にある人工土に関する資料を盗み出してきて貰いたい。」


現はモニターに第8管理室と資料が保管されているであろうフォルダの映像を映した。


「人工土ですか…?なんでそんな研究をするんです?もっと役に立つ機械とかを作ればいいのに…。」


「決まっているだろう。食料問題を解決するためだ。律,こんなに厳格な選別をしているにも関わらずどうして人類の発展は停滞していると思う?」


「うーん,確かに。どうしてだろう。」


「簡単だ。人口と資源が不足しているからだ。人口が増えないのも食料という資源が足りないからだが,放射能に汚染されていない土には限りがある。従来の土のみで栽培していたら一向に人口は増えないだろう。」


「なるほど…!」


「まあ,そもそも人工土自体は既に存在する。だが、従来のものでは日光が必須なうえ,栄養も溜めにくいので作物が充分に育たない。私が目指しているのは人工の照明だけで充分な栄養豊富な土だ!……まあ,そんな深刻な問題をこの私が解決してあげようと言うのだ。人類の発展は確実になったな!!……話を戻そう。まず第8政府管理室までのルートだが,警備の手薄なーーーーーー」


現はバーチャル模型を用いて律にルートの説明をした。


「ーーーーーーーーーー了解しました。では,直ちに出発します!いつも通りHILでアシストと指示出し,お願いします。」


HILというのは現の開発した小型戦闘機だ。手のひらに乗るサイズだが,最大で部屋ひとつ分ぶっ飛ぶくらいの威力が出る。現はこれを遠隔操作し律をアシストしながら指示を出す。


「任せなさい。では,健闘を祈る。」


現がそう言うと,律は天井付近の通気口に入っていった。この通気口は施設内の殆どの通気口と繋がっており,ー元々はほぼ独立していたが現が勝手に改造したらしいー複雑なルートではあるが,施設内の何処にでも行けるようになる。『一部を除いて』だが。勿論,通気口からの律の居場所の特定を避けるため,フェイクルートや隠し通路,暗号式扉なんかも沢山ある。そんな魔改造された通気口だが,律は任務のため,全てのルートを完璧に覚えている。


「第8政府管理室なんて久しぶりですね。最近は第3とか第4ばっかりでしたし。」


「まあ,そこら辺には機械科学についての文献が多く保管されているからな。 今研究中のテーマ的にも仕方がない。」


「小型戦闘機の開発ですよね。進捗はどんな感じですか?」


「ふむ……ちょっとした学習機能プログラムを搭載したところだ。これで常に最適な戦闘戦術を計算できるようになった。」


「流石師匠ですね。あいつらを倒す日もそう遠くありませんね!」


「うーむ,あちら側にユージェがいる限り容易い状況にはなり得ないな。あやつは本当に隙がない。……そろそろ着く頃だな。状況報告を頼む。」


「了解です。第8政府管理室の4区の上部に到着しました。目視で確認できる異常はありません。直ちにHILの偵察をお願いします。」


律の近くを浮遊していた4つの小型戦闘機ーHILは通気口の隙間から管理室に入ると四方八方に分散して行った。管理室は奥行きが分からないくらい広く,高さも20メートル以上あるのでとても大きく感じる。天井近くの高さまである棚には各列びっしりと本やらファイルやらが詰まっていた。逆にそれ以外はない,無機質と言えば無機質な空間である。


一方その頃現はアジトの一室でHILの操作をしていた。壁には大量のモニターとスピーカー。広めのデスクはタッチパネルになっており,これでHILを操作するらしい。現はタイピングを止めることなくモニターを凝視し続けていた。


「1号機,3区間西側で職員を発見。3号機,目標に到着。異常なし。よし,周囲に気をつけて着地しろ。」


「了解。」


そうい言うと律はワイヤを通気口の床に取り付け,一切音を立てないで地面に着地した。そのまま目標地点まで移動し,無事資料を入手した……とその時,管理室の扉が勢い良く開いた。


「動くな!お前に逃げ場はない。大人しく武器を捨てろ!!!」


5人の保安官が銃を構えながらジリジリと近づいてくる。入口付近では2体の警備ロボが待ち構えている。


「えー,ちょっと師匠,どういうことですか!」


律は資料を腰のバッグにしまいながらため息をついた。


「……管理室前及び管理棟の監視カメラに怪しい動きは見られなかった。これは監視カメラの情報に細工していたな。こんなことするやつは一人しかいない。ユージェだ。私のプログラムを掻い潜ることが可能だとは。これはもう1度解析してみる必要があるな……。」


「そんなこと後でいいですから!!どうするんですかこれ!!」


「勿論逃げるに決まっているだろう。戦闘は最小限にし逃走を最優先に考えろ。私はHILで警備ロボを殺る。」


「はあ…了解です!」


律は投げやりにそう言うと銃を捨てた。


「……そうだ。それで良いのだ。では両手をあげてこちらに…」


保安官の1人が言い終わる前に律は超高速で5人に近寄り,隠し持っていたナイフで手首をシュッシュッと切っていった。4体のHILは警備ロボに近づくとガシャンガシャンと変形し,警備ロボの胸の辺りにレーザーを発射した。警備ロボは一瞬にしてシャットダウンし,地面に倒れ込んだ。管理室には5人の悲鳴と警備ロボの爆発音が響き渡った。律は手首を押さえ悶える保安官を横目に天井に発射したワイヤーを引き上げ,棚の上に登った。


「ま,待て!!お前たち,防御システムを起動しろ!!」


班長と見られる男性がそう言うと4人の保安官は管理室の制御装置まで走っていき,防御システムを起動した。扉はゆっくりと閉まり,横一列に陳列している壁の穴から筒のようなものが出てきた。


「ははっ,お前は完全に包囲されている!!諦めて降りてこい!!」


班長は手首を抑えながら言った。


「えー,嫌だね。」


律は保安官らに催涙弾を投げると通気口に向かって走っていった。


「目がぁ……俺の目がぁ!!!」


「痛い,痛いよぉ!!!」


保安官らは目を抑えてその場に蹲った。班長は舌打ちし,制御装置に走っていき発射スイッチを押した。


(あヤツは通気口に向かっているに違いない……!!直ちに通気口を封鎖しなければ……!!)

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