第1章 教室にて
初投稿です。よろしくお願いします。
「嫌だあああああ!!!死にたくない!!!死にたくない!!!!!」
無機質な空間に絶叫が響き渡った。瞬間,勢い良く開いた扉から入ってきたメタリックなロボットは叫び続けるその男の子を掴み上げ,ズルズルと引き摺っていった。一見すると異常な光景だがその場にいた殆どの人間は顔色ひとつ変えず,虚ろな目をしていた。
「今回の脱落者は1名か。まずまずと言ったところだな。さて,次回の試験の説明をしよう。第368回試験は1週間後の5月4日に行う。科目は数学。範囲は教科書650ページから783ページだ。各々本気で取り組むように。では解散。」
学生と思しき人達はさっさと荷物を取りまとめると早足に部屋を出ていった。殆どの生徒が出ていき,静かになった部屋内には3人の男子生徒だけが残っていた。
「次の試験は数学か…。僕苦手なんだよね,数学。しかも僕の苦手な範囲だし…。」
「俺もあんまり自信ないな。数学は毎回7割ギリギリなんだよ。て言うかお前もしかして今回で数学赤点4回目?やばくないか?」
「そうなんだよ。あと1回赤点取ったら脱落だ……。どうしよう,もうダメかも。」
「諦めんなよ!全員で生き残るって決めただろうがよ。」
「そうだよ,諦めないで最後まで頑張ろう!数学なら僕得意だから教えてあげられるしさ。みんなで協力して生き残ろうよ。」
「2人とも…。ありがとう。僕,最後まで頑張って見るよ。」
「そう来なくちゃな!」
短髪で筋肉質な少年ーいや,青年がそう言うと前髪が長めで背が低めな青年と長髪でメガネを掛けている青年はにこりと笑い,3人は部屋を後にした。誰も居なくなった空間には怖いくらいの静寂が訪れ,照明がブツンと落ちた。そう,《誰も居なくなった》はずの空間に。
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部屋ーいや,正確には『教室』から出た3人はまたもや何も無い無機質な廊下を歩いていた。窓ひとつ無い廊下には監視カメラと思しきものが大量に設置されている。
「そう言えばさ,あの子どうなったんだろう。」
「あの子?」
「ほら,僕たちが入学して1年もしないうちに主席で卒業しちゃった子だよ。名前は…えーと,なんだっけな。」
「あー,開闢院君ね。彼は凄かったなあ。どの教科でも毎回1位なんだもの。ほんと,尊敬しちゃうよねえ。」
その瞬間,短髪の筋肉質な少年ーメイソンはハッとしたように咄嗟に2人の肩を手繰り寄せ,辺りを見回してからこう言った。
「ここだけの話なんだけどよ…,あいつー開闢院な,このシェルターのどこかに住処をつくってそこで色んな研究をしてるらしいぜ。それで…いつか政府を…」
メガネを掛けた長髪の青年ーリオはメイソンの口を咄嗟に抑えると小さく叫んだ。
「それ以上言うな!どれだけ小声で話しても僕らの会話は筒抜けなんだ。言葉には気をつけた方が良い。」
「……。それで,その噂は誰に聞いたの?」
「この前,警察の奴らが話しているのを偶然聞いてよぉ。まあ,あくまで『噂』だけどな。
「ふうん……。そんなことよりさ,さっさと勉強しに行こうよ。」
「そうだな。行こうぜ。」
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「………………まずいな……。」
3人を見つめる黒い影は何やら呟いていた。