逃亡
今回のお話は ダーレン・カトラス の視点で描かれています。
何故私がこんなにも責められないといけないのか?
ベクターの奴!
そして、アーヤ・ジカーベと勇者のせいだ。
あいつらが俺の全てを狂わせた。
目の前に黒い穴が開いている。
今は逃げるのに絶好のチャンスだ。
「俺をすぐに殺さなかったのが間違いだ」
俺は笑って穴に飛び込む。
誰も付いては来ていない。
こちらで暫く隠れていれば、また勝機が巡ってくるだろう。
神官の服を脱ぎ外に干してあるパーカーとGパンを拝借する。
街のデジタル時計を見ると “2023.12.31”とある。
夜というのに、とても街が五月蠅い。
ブラブラと街を散策すると、目の前にアーヤと呼ばれていた女がいる。
こいつさえ居なければ俺の人生は安泰だったのに
そう思ってパーカーのフードを深く被り、そっと近づき背中を押す。
車に轢かれるアーヤを俺は見つめていた。
これであっちに戻ればきっと何もかも上手くいく。
穴を探そう。
すると男が近づいて俺の耳元で囁く。
《 自分の起こした行動がお前自身を苦しめるだろう。
もうお前の前に穴は二度と現れない 》
ゼノス様?何故?
「お巡りさん、この人が人を殺そうとしましたよ」
「お前は加藤大連だな。窃盗の疑いが幾つもある」
「なぜだ。何故俺と解る?」
「指紋が残っている。お前は今指名手配中だ。今度は殺人未遂だと。罪を重ね過ぎだ」
俺の手に手錠がかけられる。
逃げられない!そうだ、この世界では魔法が効かない。
《 寿命はまだ十分にあるぞ。こちらで苦しむがいい 》
ゼノスが笑って消えていく。
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