義足
朝だ!眩しい。
白いカーテンは朝日を拒めない。
ベッドの上のユキは『マダ ネムイ』と起きてこなかった。
昨夜一緒に寝たいから猫のユキに戻れないかと尋ねた。
『チイサクナラ ナレルヨ』と言ったので、元の猫より少し大きいサイズになった。
モフモフのユキを抱き締めて眠った。最高の安眠剤だ。
昨夜寝る前に全てのコインを会社の封筒に入れておいた。
朝にバッグの中の小銭入れを確認すると、本当に各種十枚ずつお金が戻っていた。
早いかと思ったがタブレットだけ持って食堂の方に向った。
朝一番に駆けつけて御礼を言ってきたのは牛乳の生産者だった。
「使徒様!ホルンが草を食べ、ミルクが沢山出たのです。有り難うございます」
ホルンというのが乳牛なのだろう。
今まで放牧しても草をあまり食べず、酪農を諦めるところだったらしい。
草に色が戻って食欲が戻ったのだろうか?
お礼にと新鮮な白いミルクが届けられた。
白いミルクがとても美味しそうだ。
この村の主な生産は農業のようだ。
「卵もあるのだから鶏とかもいるの?」と聞くと
グラスバードという魔獣の家畜化に成功したらしい。
この世界には動物とは別に魔獣という物がいるらしい。
「生まれたての雛が小さい解きに、魔角を折ると温和しくなり人に良く懐くのです」
「魔角?」
「魔獣には必ず紅い角が1~3本、頭から背中にかけて角が生えているのです」
ミルク屋のおじさんが色々教えてくれる。
朝食の準備をしていたケープの父のジャスが厨房から松葉杖を使って出てきた
昨夜は厨房にいたせいで気が付かなかった。
ジャスの右足のすねから下がないのだ。
写真を撮り、鑑定を行う。
―― 名前:ジャス(ジャタの息子・ケープとダーナの父)
年齢:32歳
種族:人属
職業:料理人Lv.24 (元冒険者)
魔法:火属性(中級)
風属性(中級)
迷わず義足を描き足す。
サイボーグを描いたのを思い出す。
( 丈夫な金属で軽く、足首には少し動くように柔軟性を持たせ足のサイズは左足と同じ。そして怪我した足に当たる部分にはフィット性を持たせ上の方に調節バンドをつける )
そう描きながら注釈を付けていく。
髪の色はケープ、目はダーナと同じ色と聞いている。
ペーストボタンを押すと、驚きの声が上がる。
「足がはえた!!」
「義足です。慣れるまで気を付けてくださいね」
私が説明するが、聞いてくれない。
厨房を覗くと足に合わせた小さい踏み台みたいな物がコンロの前に置いてあった。
料理をしている時はあの踏み台に右足を乗せてバランスをとっていたのだろう。
ちなみに、Lv.って何? 24は高いの低いの?
「ヘルプ〔Lv.って……24ってどれ位?〕」
【Lv.は最高がだいたい100なので24ぐらいは中級です。85以上は最上級となります】
ジャスがあまりに騒ぐので、皆が起きてきてしまった。
元冒険者なので体幹が鍛えられていたのだろう。
すぐに義足を自分の足のようにして、松葉杖なしで歩き回った。
「有り難うございます」大喜びだ。
「パパどうしたの?」
「パパが歩いてる」
騒いでいると、村長夫妻や修道女もやって来た。
修道女はジャタといい、村長の奥さんの妹でジャスの母親だった。
皆、驚いてそして泣いている。
「冒険者の時、ウルフが突然現れて右足を食い千切りやがった。
仲間が追い払ってくれたて命は助かったが、群れだったなら死んでいたよ」
説明を受ける。まだケープが小さい時の事らしい。
一応、義足の説明をもう一度する。
義足は帝都まで行かないとないし、いい物はとても高いらしい。
「お礼に何でもします。おっしゃってください」
泣いている妻のテラが、私に頭を下げる。
「お礼なんて……そうだ!ケープくんにこの村の案内をお願いできますか?」
「そんなんでいいなら、どうぞどうぞ」
大雑把な返答がジャスから帰ってくる。
冒険者見習いとあったので、ギルドを通す事にした。
冒険者の本登録は12歳からだ。
しかし、家の都合で働かなければならない子に対して、ギルドは7歳から見習い制度を設けているという。
(これは街や村で異なるらしい)
普通見習いは1日200~500ドラの収入らしい。
なので、1週間3000ドラ(銀貨3枚)でケープと契約する。
ギルドのマージンはと聞くと依頼内容で割合は変わるとの事。
買い取りは三割取るが、見習いからはいずれも取ってないという話だった。
食事の料金を聞いてみると、朝が500ドラ、ヨルが1000ドラらしい。
こちらの世界は一日二食が普通らしい。
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