少年の家族
「おなかがすいた」ダーナが申し訳なさそうに呟いた。
ダーナの言葉に外に目をやるともうかなり暗くなっていた。
「村長の建物の裏は旅館になっています。
そしてその隣が食堂になっています。
ケープの家族が経営していますので、自由にお使いください」
村長に食堂まで案内される。
「パパ・ママ使徒様が来たよ」
ケープの両親が作る食事は美味しかったが、色が付いているのはスープのトメトだけでパンも卵料理も白いままだった。
ケープの母テラが
「お口に合いますか?」と聞いてきた時
「大丈夫です」と微妙な返事をしてしまった。
話題を変えるように食事の後、ケープをカメラで撮ってみる。
肌の色は小麦色で髪は瑠璃色、目の色は金糸雀色と聞いて描いてみる。
洋服の色は適当に黄色いシャツと藍色のズボンにする。
ペーストのボタンを押すとその通りに色づいていく。
二次元から三次元の人になった感覚だ。
本人はもちろんだが、私が一番驚いているかも。
景色と人は別物だ。
感動しているうちに次々と色づけしたくなる。
テラとダーナは亜麻色の髪で、テラの目は金糸雀色ダーナの目は菫色だとケープが教えてくれる。
ダーナの服はまんまハイジの赤色にする。
テラの要望は、ワンピースは青でエプロンは赤がいいとのことだった。
昔からこの国では青が貴重な色だったらしい。
ケープがタブレットを覘いて色を指示してくれる。
難しい色の名前も次々と覚えていく。
この国では、肌の色より髪や目の色を重要視するようだ。
家族の強い繋がりを意味するのだろう。
鑑定を使ってみる。
―― 名前:ケープ(ジャスとテラの息子)
年齢:8歳
種族:人属
職業:使途の助手 (冒険者見習い)
魔法:火魔法(生活初級)・水魔法(生活初級)
スキル:完全記憶
タブレットの上にケープのステータス画面が現れる。
最期に“スキル: 完全記憶”とある??
タブレットの上に現れるステータス画面は私にしか見えないようだ。
しかし、ケープが私の助手?
ケープに私の手伝いをお願いするべきなのか悩んでしまう。
私は疲れたのでと言い、早々に部屋に帰る。
食堂から旅館に廊下が続いている。
部屋の鍵をくれたのは村長の奥さんだった。
ユキも同部屋で良いのかと尋ねたら「勿論です」と返された。
「ここは村役場・旅館・食堂そして、ギルドも兼ねているのよ」
と説明を受けた。
ギルド?
ケープが冒険者見習いってなっていたけど……
そう言えば、私がゲーム会社を辞める頃、異世界物のゲームが人気になり始めた。
私もキャラクターを五十程考えた。
その中にギルドのお姉さんを三種類ほど考えたはずだった。
後、冒険者や商人も描いた事がある。
勇者や聖女は先輩が描いていたなぁ……
倒産がショックであれ以来ゲームを触っていない。
そういえば、圭兄がよく遊びに来てゲームをしていた。
誘われても私はしなかった。
一度ぐらいすれば良かった……。
部屋に入りヘルプ機能を使う。
「ヘルプ?」
【ハイ】
バッグの中から声がする。
タブレットがしゃべり出した。
「ヘルプ〔ギルドとは?〕」
【ギルドとは、各種職業の組合です。この町は小さいので商業・冒険者・薬業等のギルドを兼ねています。ギルドカードは全国共通の身分証となります】
凄い!
鞄を確認すと、小銭入れにしらない硬貨が沢山入っている。
「ヘルプ〔このおかねは?〕」
【この世界のお金で銀貨と大銀貨と金貨が入っています。
銀貨が1,000ドラ(=円)・大銀貨が10,000ドラ・金貨が100,000ドラです。
銀貨以上はどの国でも使えますが、それ以下の硬貨は国によって違います。
ちなみに10枚ずつ入っています。使ってもまた増えますので安心して使ってください】
なんか最後におかしな事を言われた気がする。
読んで頂き有り難うございます。
感想等いただけると嬉しいです。
宜しくお願いします。