巫女の預言
第五話まで続けましたが、ストックがあまりないので
第六話からは2・3日ごとになります。
―― この国を護る為、青き衣を纏い、白き聖獣を伴い、
遠くの地より精霊の使途がやって来る
闇を祓い、光を灯す ――
十年程前、巫女と呼ばれる少女の予言だ。
青のローブを着ると
「アーヤは伝説のシトサマにぴったりだ」
ケープの瞳がキラキラしている。
嫌な予感しかしない。
手の甲に憑いた紋様も不安だ。
ケープに連れられこの村の村長に会うことになった。
門の所にはもう人溜まりが出来始めている。
「使徒様だ!」数人が叫ぶ。
門番は恭しく頭を下げる。
「僕が村長さん所に連れて行くんだ」
僕が見つけたと言わんばかりの自慢気なケープ。
ダーナが小さいのでゆっくり歩く。
白黒の世界で真っ青な色が異彩を放つ。
街に入ると道には食品の屋台が数軒あるが、商品に色がある物とない物が混在している。
「違う国の物には色が残っている。この国だけ色が無くなったの」とケープが教えてくれる。
つまり、いま色が付いている物は他国からの輸入品ということだ。
数字はそのままなので読める。
値段が三倍も違う。
村の人は聖獣ユキが怖いのか、遠巻きに私達を見ている。
この大陸にはゼンダール帝国・チューヨウ国・ダッサク共和国の三つの国があり、
このゼンタール帝国だけが色を奪われたということだ。
この村はゼンタール帝国のユーゼン村ということだ。
大陸の南西部にあたるらしい。
ケープが色々教えてくれる。
八歳にしてはかなり優秀な少年だ。
屋台に興味が出たので様子を窺うと、付いてきている皆が同様に立ち止まる。
店の人に「この二つに味の違いは?」と言うと、
「ありませんが」と不安げに答える。
皆に注目され、慌てて店の人が二つをくれる。
お金が無いと言うと、差し上げますと言われた。
そのままここで食べ比べてみる。
トメトというらしいがトマトだと思う。
少しオレンジが混じっているトメトを食べる。
「おいしい」まさに味も完全にトマトだ。
白色のトメトを食べる。
味はたぶん同じ感じがするのだが、やはり食には彩りが味の一つだ。
三倍の値段に納得する。
私が妙な顔をしていたのだろう、ケープがおかしそうに笑い、私の手を引っ張り出す。
民家は土塀作りだが、少し大きめのレンガ木造家屋に到着する。
ここが村の中心で、そしてこの建物が村役場らしい。
誰かが先に連絡していたか、村長が役場の外で私を待っていた。
「精霊の使途様を連れてきたよ」
嬉しそうに胸を張るケープ
中の応接室に通される。
促されてソファーに座ると、村長が
「精霊の使途様で間違いありませんか?」と尋ねる。
「それは……わかりません。
突然呼ばれて……女性?に『この村に色を戻して』と言われたのです」
と答えた。
何故か女神という言葉が適切なのか悩んだので女性と言ったがよかったのだろうか?
村長の横には、小さな子供が二人いる。
「この子達は巫女候補なのです。生まれつき目の悪い子が巫女候補となるのです。
そして、前の前の巫女がこの言葉を残したのです」
―― この国を護る為、青き衣を纏い、白き聖獣を伴い、
遠くの地より精霊の使途がやって来る ――
間違いなく私だろう。
神様に頼まれたのだから……
―― 闇を祓い、光を灯す ――
この言葉が示唆する事はなんだろう?
色鮮やかな青いローブが鞄に入っていたのは女神からの示唆なのだろうか?
「使徒様ならば色を取り戻して欲しいのです」そう懇願される。
「解りました。まだ解らない事ばかりなので少しずつになりますがやっていきます」
そう返答すると、村長も巫女候補も喜んでくれた。
「まずは、作物・薬草の色をどうにかして欲しいのです」
先程の屋台を思い出す。
「作物と薬草ですね」
「お願いします」
村長が深々と頭を垂れる。
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