精霊の使途
シロクロの世界にグレーのビジネススーツの私。
近くには私のブラウンのビジネスバックのみ。
草むらに座り込んでいると少年が近づいて来て、私に話しかけてくる。
「(兄さんは冒険者?どっからきたの?)」
「私?」
少年は私の声を聞いて驚く。
「(女の人なの?)」
少年の言葉が日本語でないが、意味は理解できる。
外国語を聞いている感覚だ。
「どうして男の人だと思ったの?」
「(だって髪が短いし、変な格好の冒険者かなと……女の人の冒険者は少ないから)」
「そう。ところでここはどこ?」
変な質問をしているのは自覚している。
「ここはユーゼン村の裏地だよ。あそこに見えるのが村の北門だよ」
慣れたのか少年の言葉がスムーズに聞こえてくる。
少年が指さす方を見ると、緩い防護柵で囲ってある村?
長い竹や木を組んだだけの門と呼ばれる所に男性が一人立っている。
遠くに見える女の子達はアルプスの少女みたいな服を皆着ている。
なんとなく違和感を覚えたので上着のスーツを脱ぐ。
鞄の中に入れようとすると見知らぬ青い洋服が入っていた。
取り出すと真っ青のローブだった。
そういえば色を付ける約束を思い出す。
タブレットの中の塗り絵に緑・黄緑、そして私の大好きな萌葱色・常磐色を落としていく。
そして、ペーストのボタンを押してみる。
景色の一部に緑が復活する。
広々とした草原に、遠くに見える森に。
「緑だ!」
少年が叫ぶ。
色が元々無かったのではなく、奪われたのだ。
この少年は覚えていたのだ。
「ねぇ、いつ頃色が無くなったの?」
「3年ぐらい前かな」
水仙のような花を見つけ写真を撮る。
「ねぇ、あの花は何色か覚えている?」
「黄色で中が薄い赤だよ」
タブレットを見せ、どの赤か聞いてみると、不思議そうに覗いていたが牡丹色を指さした。
「ペースト」花たちに色が付く。
「すごーい」少年の目が輝いている。
空の雲の隙間から青空が見える。
さすがに空の色までは奪えなかったようだ。
少し安心した。
光はすべての景色を変えてしまう。
緑が鮮やかに見える。
「お姉さんはシトサマ?」
「私は彩。彩 藤壁よ」
「アーヤ・ジカーベ?」
少年が話すと、タブレットに重なって液晶画面みたいなのが現れる。
―― 名前: アーヤ・ジカーベ
年齢: ??
種族: 人属
職業: 精霊の使途
画家
魔法: 火(生活初級)・水(生活初級)
ペット:聖獣ホワイトタイガー (ユキ)
名前が変わっている。 年齢も?だし
少女が一人遅れてやって来る。
「おにいちゃんこれ何?」
「草の色だよ。これは緑だよ」
ふーんと言いながら不思議な顔をしている。
「僕はケープ。これは僕の妹ダーナ。
妹は色を知らないんだ」
申し訳なさそうに話すケープ。
「ねえ、私って何歳に見える?」唐突な質問に
「二〇歳くらい?」少女が答える。
「もう少し上かな。君は?」
「じゃ、二十五歳くらい?」
カリっと音がする。画面の年齢部分が(25歳)と出たのを横目で確認する。
この少年は特別な力があるのだろうか?それとも偶々か?
六歳ぐらいのサバは許容範囲かな?
話していると草むらに隠れていたホワイトタイガーのユキが起き上がった。
ユキを見て子供達は驚き、逃げ始めた。
「大丈夫よ!私のペットだから」
「ペット?魔獣じゃないの?」
「お兄ちゃん。これって聖獣じゃない?魔角ないよ」
女の子が近づいて確認する。
「そう聖獣よ。君たちが悪戯をしなかったら大丈夫よ」
「やっぱりお姉ちゃんはシトサマだ」
ケープが私の手を見て叫ぶ。
私の手の甲にハートに似た様な紋様が浮かんでいた。
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