想像と創造
『 どうします?こちらの世界で《徳》を探してみますか? 』
アルテは苛立って再度聞いてくる。
「あなたは本当に創造神ですか?」
『 そうですね……創造神の一人です 』
「答えをNOと言えば?」
『 確実に一ヶ月以内に死にます。あちらの身体も今此処に居る魂も消えます 』
無慈悲な返答だ。
「本当に生き返ることができるのですか?」
『 はい。こちらとあちらは所謂時間軸の異なる
パラレルワールドみたいな物です 』
理解が出来ない。
でも気になる事は残っていた。
黒パーカーの人物……
「では、もし私が徳を積んで生き返った時に、私を殺そうとした人を探してくれますか?」
『 いいですよ 』
えらく簡単に返答を返されて、逆に不信感が募る。
私が黙ったままでいると、女神は不安になったのか早口でしゃべりだす。
『 では、まず初めにこの村に色を付けていってください。
本当はこの村から勇者が生れる予定だったのです。
しかし、予定の期日になっても現れないので
三年前にこの村の様子を見に来たら色が奪われて……。
その為、人が皆 気力がないのです 』
「誰が色を奪ったのですか?」
『 それは……今調査中です…… 』
「神様が色を付ければ?」
『 我々は人の世界に本当は介入してはいけないのです。
加護を与えるのがやっとです 』
「加護?」
『 そうです。あなたは職業が画家となっていますが、
どうやって絵を描くのですか? 』
何故私が絵を描く事を知っているのだろう?
「私は画家ではありません。趣味で描いているだけです。
描くときはこのタブレットを使います」
バッグの中を探す。良かった!入っていた。
バッグからタブレットを取り出し女神に見せる。
『 あなたのやり方で描いて良いです。
全ての原点は想像力です。
後はあなたが創造して使ってください 』
―― 想像と創造? ――
まずは、色を付ける事が前提ならば……タブレットで写真を撮ってみる。
全ての物の輪郭が少し黒い線になっている。
シロクロの画面はまるで塗り絵のようだ。
『 ほう!便利ですね。それに私の力を加えましょう 』
キラキラした光がしたと思ったら、見知らぬアプリがインストールされた。
色の選択をしようと思うが、色の数が少ない。
「あのもう少し色の数増やせませんか?」
『 ああ、出来るわよ。
頭の中で思いながら“増やす”を押してみてください 』
最近和名の色を検索していたので、軽く百色ぐらい思いながら“増やす”をタップすると
横のバーが動き出して止まらない。
「バグってません? それに、充電出来ないですよね?」
充電器を取り出しながら尋ねる。
『 私は創造神よ!魔石で充電とやら出来るようにしてあげる 』
神様慌てている?口調が雑になった気がする。
アルテは赤い魔石を二つ私に渡す。
『 今二つしか持ってないのよね……
お金で買えるから、お金に困らない加護を与えるわ
後は何か気になる事ある? 』
ペットの猫を思い出した。
部屋で一匹のユキのことが気がかりだと言うと
『 こちらに呼んで聖獣のホワイトタイガーにしましょう。
あなたを守れるように 』
「良かった」
アルテが大きな杖を回すと、空から物がゆっくりと降ってきた。
猫だ。
私のユキだ。
ユキはみるみる間に大きくなりホワイトタイガーに変化する。
『 テイムしている証拠の首輪をあなたが付けてあげなさい 』
女神から頂いたチェーンの首輪をユキにかけると、ユキはキラキラと光った。
その時、《 キモチ イイ 》と声が聞こえた。
「誰?」
《 ユキ ダヨ 》
『 これで意思疎通は出来たわ。
魔獣対策はそれでいいとして、
生活魔法とか使えるようにする? 』
女神は次々とミッションをこなしている感じだ。
「意思疎通?生活魔法?」
解らないうちに次に進んでしまう。
『 最低限の水・火にしましょう
まずはこんなもので、困ったら教会に来て では 』
女神はキラキラと消えていく。
質問もなにも、わからないことが多すぎる。
《 アヤ スキ 》
「意思疎通? えっ?ユキと話が出来ているの?」
《 ウン ヨカッタ 》
凄く疲れて私は草むらに座り込んでしまった。
読んで頂き有り難うございます。
感想等いただけると嬉しいです。
宜しくお願いします。