私の家族
シロクロの世界に私は立ち尽くしている。
「ここは天国というわけではないのですね」
目の前にいるアルテが持つ水晶の中を覗くと病院のベッドで横たわっている私が見える。
家族は次兄にあたる圭だけが心配して付き添っているようだ。
《貴女は可も無く不可も無い人生です》
頭の中でその言葉がリフレインする。
『 この別世界で《徳》を積みませんか? 』
もう一度アルテが尋ねてくる。
私は誰かに優しくしたことがあっただろうか?
誰かの為に何かを自分から行動したことがあっただろうか?
《徳》を積む、生き返る為にも!
―― はて、私は生き返りたいだろうか?
悲観的な思いが私の心を重くする。
高校に入る時自分の戸籍を見て全て納得した。
私は養子だったのだ。
可哀想な子を演じれば、口の軽い親戚が色々話してくれた。
私の本当の両親が交通事故で亡くなった為、
父の遠縁にあたる私を女の子だからと今の両親が引き取ってくれたらしい。
だが、二年後に実子の女の子が出来てしまった。
もう私はいらない子だ。
両親は普通に育ててくれたけれど全て知ってしまってからは、
私から距離を取るようになってしまった。
すると家族も次第に私を避けるようになった。
両親と養子の話をお互いがする事はなかったが、何となくの雰囲気が感じられた。
小さい頃、兄と私はキャンプ場で迷子になった。
両親が心配していたが見つかっても私は抱き締めて貰えなかった。
妹だけは何も知らず、我が侭を言うばかりで皆困っていたが、
誰もそれを咎める事をしなかった。
次兄の圭だけは私に優しかったが、それは妹を守る正義感だと分かっていた。
優しい圭兄を好きにならないように家族の中では自分の存在を殺した。
私は高校を卒業するとすぐに一人暮らしを始めた。
ずっと私は目立たない人生を目標にした。
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