魔獣ユニコーン
「角が、魔角がある! ユニコーンですよね?」
驚いた私は元の大きさに戻ったユキの後ろに隠れた。
「はい。でも大丈夫ですよ。魔角の根元に金色のリングが見えるでしょ。
あれは魔角リングと言って魔獣の力を押さえるものなんです」
「魔角が薄紅色になるんですね。色がある……」今頃気付いた。
少し落ち着いた私にウェリーが説明を続ける。
「リングが少しだけ魔力を吸うので、薄くなるんです。
色が残っているのは、三年前のあの時ちょうど隣国に配達に行っていたので俺もこいつも色が残っているんです。
しかし、リングを付けたからと言ってすぐに言うことをきくわけではないんですよ。
半年以上の世話をしながら絆を深めて、漸く名を付けて使役獣になるんです」
すぐに成功するわけではないと聞いて納得する。
この一角獣から高いプライドを感じた。
ユキも感じたのか自身も威圧を纏う。
すると驚いたことに、一角獣は前脚を折り聖獣に敬意を表した。
「名前は何と?」
「ポポロって名前です」
「触ってもいいですか?」
「魔角以外ならたぶん大丈夫ですよ」
真っ白な体躯に天色の鬣と尾を伴った綺麗な一角獣だ。
立ち上がった一角獣はウェリーの身長よりもとても大きかった。
首を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
認めて貰ったようで嬉しかった。
「魔角リングってどうやって手に入れるんですか?」
「腕の良い鍛冶師に作って貰って、それから魔術師に力を押さえる術を付与して貰うのです。
金貨四枚ほど掛かります」
「金貨四枚!」
だいたい四十万円だ。
「一角獣はとても長生きで力が強く足も速い。良い馬の三頭以上の働きをするんです」
普段一角獣は大陸の北にあるエルフの森にいるらしい。
そして、エルフの言うことしか効かないらしい。
一角獣は気が荒く縄張りで喧嘩して怪我をする事がある。
ウェリーは偶々怪我をし、エルフの森から出ていた若い一角獣を捕まえた。
「いつか捕まえたいと持ち歩いていたんです。リングは親父の遺品なんですけど」
「遺品?」
「ええ。親父も冒険者だったのですが、一角獣を持つことを夢見ていたんです。
エルフ以外で捕まえる事が出来るのは百いや千人に一人かな」
「凄いです」
「自慢だったんだが、今度の旅でこいつともお別れなんだ」
「何故?野生に戻すのですか?」
「そんなことしないよ。
この怪我の傷を治して貰うためにダッサク共和国の聖女様に寄進するのさ」
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