圭の想い Ⅰ
【残酷な描写】
事件・怪我等(DV)の描写があります。
今回のお話は彩の次兄・圭の視点で書いています。
いつから俺は彩のことを想っていたのだろう
僕が二歳になってすぐ、妹だと連れてこられた時には彩はもうハイハイで動いていた。
左肩から肘までに大きな火傷の痕が残っているのを僕はしっかりと記憶に残している。
塾で忙しい兄は弟妹の事に完全に無関心だった。
だから僕が彩の遊び相手だった。
二年後、華がクチャクチャな顔で生れてきたが、僕は両親のように可愛いとは思えなかった。
彩の方が数倍可愛かった。
僕が中学生になった頃、仲の良い僕達を母親が嫌がる様になり
彩は自ら僕らと距離を置くようになった。
そして彩は高校を卒業した後、就職し一人暮らしをした。
誰も反対しなかった。
俺も頑張れとしか言わなかった。
自分の気持ちに気が付いたのは、彩の彼のDVに気が付いた時だ。
母親には内緒で時々彩のアパートに様子をみに行っていた。
部屋から出てきた男が彩を罵倒している。
「誰だ?こいつ!お前俺の他に男がいるのか?」
拳を振り上げ彩を殴ろうとする。
兄だというと男は拳を握ったまま俺にペコペコと頭を下げている。
彩の顔に痣を見つけた俺は我慢が出来なかった。
彩の会社の先輩だという男を外に連れ出し、どれ程殴っただろう。
二度と近づくなと脅した。
会社自体も壊れたので安心した。
もうあいつと彩は会うことがないだろう。
会社が倒産したので、家に戻ってくると思っていた彩は心を壊した。
退院した彩を迎えに行った俺に
「ありがとう。でも、もう私に関わらないで……」との言葉だった。
ヒーロー顔した俺は愕然とし後悔した。
彩にとって俺はただの兄でしかなかったのだ。
今ベッドで横たわっている妹、
警察から事故の話として、彩自ら車に飛び込んだと言われた。
彼女の心は壊れたままだったのか?
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