不可思議なこと
午前中は作物中心で色付けを行う。
問題なのは人だ。
できるだけ家族・親族で教会に来てもらう事にする。
肌の色・眼の色・髪の色
ケープは村人の九割の特徴の色を覚えていた。
色の名前を番号で覚えて貰う。
「キーナ婆ちゃんは髪が三十五番で目は八十番、 息子も孫もみんな目は八十番だよ」
「お婆ちゃんと息子さん二人とお孫さん四人は八十番の天鵞絨色ね」
こんな感じで進んでいく。
ちなみにこの村では髪は茶系が多く、目は青系と緑系で九割、後の一割がケープのような黄色系だ。
この村で黒髪は皆無だ。
肌は一番小麦色、二番褐色、三番杏色のどれかで良いらしい。
目の色に一番こだわっているが
「こんな色だったっけ?」という人も多数。
ケープが「間違いないよ」と言ってくれるので大きな問題にはならない。
「凄い記憶力で助かっているわ」
照れているのが可愛い。
お礼にと手渡された銅貨を断わるのにケープが困っている。
勿論私も断り、教会に寄付という事にする。
“銅貨”……?
舗装されていない土の道、まだ小さな石がゴロゴロしている。
街並みの色はまだ白い。
屋台でドーナツみたいなお菓子を買う。
一個銅貨1枚(10ドラ)だというので、30個ほど買う。
金貨を出すとお釣りが無いといわれ小銭入れの中銀貨(1000ドラ)を探す。
お釣りは大銅貨(1枚100ドラ)で貰うが、ここで違和感の原因が分かる。
硬貨を確認する。
やはり輸入された訳でもないのに、金銀銅の色はそのままだ。
夕食時にも蝋燭の明かりが黄色とオレンジである事に気が付く。
蝋燭の明かりも硬貨の金銀銅の色そしてステンドグラスの色も奪われなかった。
奪われなかった色について考えるが、まだ答えは出てこない。
他にも奪われなかった色はあるのだろうか?
外に出ると夜空に星が無数に瞬いている。
西の大きい蒼い月をムーナ、真上にある小さな赤紫の月をツールというらしい。
大小二つの月を見てここが異世界なのだと実感する。
ムーナは満月ではなく、新月になりかけていた。
あちらの世界の物……
慌ててマジックバックからユキの餌を30パック取り出した。
そうだ下着などの洋服も取り出す。
保存方法をヘルプ機能に聞いてみる。
【こちらの世界のマジックバックに保存可能です】
バッグに手を入れると思ったより小さいウエストポーチが出てきた。
「これ?」
【はい。保存の容量はこの部屋ほどです。
ちなみに重量軽減はついていますが、時間経過保存機能はついておりませんので
生物の保存には不向きです】
「はっ? つまり小さいけど沢山入るし重さは感じない。
だけど、生物って動物や食べ物は入れて時間がたてば腐るって事?」
【はい。取り出すときは連想して手を入れれば取り出せます】
「そうなんだ。それと……この村で色が残っている物があるけど何故?」
【…… ソレハ …… フメイ です ……】
不可思議は謎のままだ。
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