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花の都ヴィーラリアの君  作者: ゆりあ
エレガノットの妖精姫
1/14

〈露草の妖精姫〉エレオノーラ

花の都・ヴィーラリア王国。


大陸の南の端っこにある一番小さな王国だ。


そのヴィーラリア王国の王族のひとつ

エレガノット公爵家には、大変可愛いらしい

三姉妹が産まれた。それぞれ、通り名が付く

程に、王侯貴族たちに親しまれている。


長女の〈露草の妖精姫〉エレオノーラ

次女の〈白百合の妖精姫〉エウラリーア

そして、三女〈春紫苑の妖精姫〉フェリチタ。


その中でも、一際美しいと評判なのは、金髪に

碧眼の美女〈白百合の妖精姫〉エウラリーア。

一番可愛いと評判なのは、金髪に薄ピンク色の

瞳を持つ〈春紫苑の妖精姫〉フェリチタだ。


わたくしは、〈露草の妖精姫〉エレオノーラ。

お父様やお兄様に似て、黒の長い髪に青目を

している。今年17歳になったばかり。


姉妹たちの中では、一番最初に産まれた

はずのわたくしなのだけど、可愛いらしい

妹たちのついでに、〈露草の妖精姫〉と

呼ばれ始めたらしい。





「ディルクお兄様、お呼びでしょうか。」


「やあ、エレオノーラ、確かに、呼んだよ。

可愛い妹の君に頼みがあるんだ。」


わたくしたち〈妖精姫姉妹〉の兄であり

エレガノット公爵家の嫡男〈青薔薇の騎士〉

ディルク・ティ・フォルト・エレガノット。


20歳という若さにしてヴィーラリア王国の

次期国王、第一王子のレオニースト殿下の

護衛騎士の団長を務めている。


「レオニースト殿下からの正式な依頼だ。

今回、大国・イザベルカ王国の王族たちに

レオニースト殿下は、婚約者エウラリーアを

紹介する手筈となっている。」


「ええ、それは、お父様から伺っております。」


わたくしの2歳下の次女〈白百合の妖精姫〉

エウラリーアは、殿下と同い年の15歳という

ことで、今回、正式に、婚約者となった。


再従兄妹同士で、昔から、仲睦まじい2人は

この決定に、大変喜んだそうだ。


「慣れぬ大国へ赴く為、エウラリーアの側には

信用できる者が着いて欲しいそうだ。」


「はい、そのご依頼、承知いたしました。」


末っ子のフェリチタなら、お姉様と一緒に

行きたい!って言いそうだけれど、彼女は

まだ10歳になったばかり、大国への長旅に

着いてくるのは、難しいでしょうね。


なるほど、だから、私だけ、ひっそりと

お兄様から呼ばれたのね。






1週間の長い旅路の後。


ついに、レオニースト殿下とエウラリーアの

ご一行は、大国のイザベルカ王国の王都に

無事に、着くことが出来ました。


慣れない旅路に、エウラリーアは、戸惑い、

口数が少なくなっていったが、エウラリーアは

ヴィーラリア王国の、未来の王妃。


どんなに、他国との外交が大変であっても

これから先は、慣れなくてはいけないから

未来の王妃って、大変ね。


「はあ……… やっと着いたわ!

ねえ、エレオノーラお姉様、イザベルカ

王国って、こんなに遠いのね?」


「ええ、そうね。エウラリーア、今のうちに

着替えて、お待ち致しましょう。」


美しい妹〈白百合の妖精姫〉エウラリーア。


ふわふわとした金の長髪に碧眼の美しい

少女が、表情を曇らせて悩んでいる姿を見て

周りの侍女たちも心配そうに緊張している。


唯一、わたくしの侍女、ラナだけ、冷静に

エウラリーアのドレスを持って入室してきた。


「あら、もしかして、レオニースト殿下が

貴女のドレスを用意して下さったのかしら?」


「レオ殿下とお揃いで、白百合をつけるの!

ふふふ。とっても可愛いでしょう?」


「ええ、とても素敵よ、エウラリーア。」


ちょっとは、元気が出て来たのでしょうか?


今回は、レオニースト殿下の婚約者として

未来のヴィーラリア王国の王妃として

挨拶する社交の場となる。


普段は、ヴィーラリア王国で目立つ彼女も

さすがに、大国の王族たちへ挨拶するのは

大変緊張感を伴うのでしょうね。






「ヴィーラリア王国から、第一王子

レオニースト殿下、並びに、エレガノット

公爵令嬢、エウラリーア嬢のご来場!」


合図と同時に、レオニースト殿下が

エウラリーアと共に、入場しました。


瞬く間に、拍手喝采で、レオニースト殿下と

エウラリーアが、少し慄いていますね。


ちなみに、わたくしは、お二人の

後ろに、控えて着いて参ります。


「ヴィーラリア王家の者たちよ

よくぞ、遥々、イザベルカに来てくれた。

私は、このイザベルカ王国の国王、アール・

ティ・ユージェルト・イザベルカだ。

この国を代表して、歓迎しよう。」


「イザベルカ国王陛下、この度は、

ご招待、誠に、有難うございます。

ヴィーラリア王国の第一王子にあたります

レオニースト・ティ・ヴィヴィオーン・

ヴィーラリアです。宜しくお願い致します。」


この方が、最近、大国・イザベルカ王国の

国王陛下となられたお方だ。


確か40代くらいだと思われるが若々しい。

4人のお子さんがいるようには見えない。


大変威厳があられて、レオニースト殿下と

エウラリーアは、非常に、緊張している。


「彼女が、其方の婚約者〈白百合の妖精姫〉

エウラリーア嬢だろうか?」


「はい、私の婚約者となりました

エレガノット公爵令嬢のエウラリーアと

申します。宜しくお願い致します。」


「エレガノット公爵が次女、エウラリーア・

ティ・イクサー・エレガノットと申します。

宜しくお願い致します。」


腰を低くする際に、エウラリーアの髪飾りに

付いている白百合の花びらが揺れた。


緊張して、何処かぎこちない動きではあるが

エウラリーアは、見事に、挨拶を交わした。


「エウラリーア嬢は、私の娘、メルリースと

同い年だと聞いている。後で紹介しよう。」


「はい、有難う存じます。」






「さて、レオニースト殿よ。

質問があるのだが、君たちの後ろに控えて

いるご令嬢は、君たちの関係者なのだろう?

私たちに紹介してくれないかい?」


「はい、こちらは、我が婚約者エウラリーアの

実姉にあたりますエレオノーラ嬢です。」


イザベルカ王国陛下、なぜ、目立たないよう

控えていたわたくしに、お声を………?


普通ならば、付き添いは声を掛けられないと

父から聞いていたのですが………


いったい、何を考えているのでしょうか?


「エレガノット公爵が長女、エレオノーラ・

ティ・イクサー・エレガノットと申します。

宜しくお願い致します。」


「エウラリーア嬢の実姉………

というと、其方が、〈露草の妖精姫〉かな?」


「はい、非常に、恐れ多いのですが、

そう呼ばれております。」









イザベルカ社交会の翌日。


レオニースト殿下、妹のエウラリーア、

そして、なぜか、わたくし、エレオノーラ。


この3人は、国王陛下から呼ばれまして

イザベルカ王家の白亜の宮殿に来ています。


「やあ、久しぶりだね、レオ」


「セテファ殿下!お久しぶりでございます!」


いきなり現れた青年からレオニースト殿下が

レオと親しげに話しかけられて、思わず、

わたくしたち姉妹は、そちらを見ました。


美しい銀色の短い髪に紺色の瞳を持つ青年

このお方、噂で聞いたことがあります!


イザベルカ王国の第一王子………!


「ああ、君たちが

エレガノット公爵家の姉妹かな?

父から君たちのことは聞いているよ。

私は、イザベルカ王国の第一王子

セテファ・ティ・ティーラン・

イザベルカだ。宜しくね。」


「はい、お初にお目にかかります。

エレガノット公爵が次女、エウラリーア・

ティ・イクサー・エレガノットと申します。

こちらは、私の実姉のエレオノーラです。

宜しくお願い致します。」


「セテファ殿下、宜しくお願い致します。」


エウラリーアは、慌てて、腰を低くして

ご挨拶いたしました。


わたくしは、レオニースト殿下と

エウラリーアの後ろに控えるかたちで

ご挨拶いたしました。


「セテファ兄様ったら!

向かうのが、早すぎますわ!」


「ほら、メル、クォーツ

こちらの方々に、ご挨拶を。」


「うふふ。わたしは、イザベルカ王国の

第一王女・メルリース・ティ・ティーラン・

イザベルカよ! 皆様、宜しくね!」


「メルリース姫の婚約者、島国・イーリスト

王国の第一王子、クォーツ=イーリストです。

皆様、この度は、お会い出来て、光栄です。

宜しくお願い致します。」


「はい、メルリース姫様、クォーツ殿下

宜しくお願い致します。」


こ、今度は、第一王女殿下に

イーリスト王国の第一王子殿下………!


メルリース姫は、兄殿下と同じ銀髪に

王妃と同じ緑色の瞳を持つ美しい少女。

彼女が、妹と同い年なのでしょう。


クォーツ殿下は、黒髪に黒目の青年。

婚約者ということは、メルリース姫は

いずれ、南の島国、イーリスト王国に

嫁入りしていくのですね。


「父からの提案でね、若い世代の我々に

交流の場を、ということみたいだ。」


「うふふ。一緒にお茶しましょう?」








イザベルカ宮殿の客間〈菫の間〉


すでに、その客間には、可愛いらしい

華やかなお菓子の数々が用意されていた。


「うふふ。こちらは、イザベルカ産の紅茶と

ローズティー、イーリスト王国から仕入れた

珈琲です。わたくしは、紅茶を頂きますわ。

お好きなのをお選びくださいませ。」


「では、私は、イーリスト珈琲を頼もうかな。

君たちは、どうする?」


セテファ殿下が

珈琲を選んだからでしょうか。


クォーツ殿下とレオニースト殿下は

珈琲をお選びになりました。


レオニースト殿下は、苦いものが苦手な

はずなのですが、無理をしていますね。


「ローズティーを頂いても良いでしょうか?

エウラリーア、貴女は、どうする?」


「私は、紅茶をお願いします。」







「エレオノーラ嬢と言ったかな?」


「はい、エウラリーアの姉にあたります

エレガノット公爵が長女、エレオノーラ・

ティ・イクサー・エレガノットと申します。

セテファ殿下、宜しくお願い致します。」


「君が、噂の〈露草の妖精姫〉か、美しいね。」


わたくしは、動揺して、思わず、セテファ

殿下の顔をじっと見てしまいました。


〈露草の妖精姫〉と呼ばれることはあっても

直接、美しいと言われることは無いからだ。


このお方、セテファ殿下は、いったい

何を考えていらっしゃるのかしら?


「エレオノーラ嬢、単刀直入に聞くのだが、

今、君には、婚約者はいるのかい?」


「いいえ、わたくしには婚約者はおりません。

婚約者候補はいるにはいるのですけれど……

一向に、決まる気配も無くて………」


公爵家の嫡男であるお兄様は

東に位置するレイベールス辺境伯様の

歳の離れた実妹を奥様に迎え、次は、

次女のエウラリーアがレオニースト殿下の

婚約者となることが決まりました。


そんな兄妹がいるわたくしの夫になりたい

と言う貴族の殿方は、たくさん、たくさん

いらっしゃるのですけれど………


しかし、彼らは、内心何を考えているのか

分からない、野心家の方ばかりです。

正直、あまり気が進みません。


「もし良かったら、私を、君の婚約者に

選んではくれないだろうか?」


「………えっ??」


わたくしは、セテファ殿下の言葉を聞いて

思わず、固まってしまいました。


純粋に驚きましたわ。セテファ殿下は、

わたくしと同じ17歳。婚約者がいても

おかしくない年代のはずですが、、、


「イザベルカ王国の公爵令嬢の婚約者が

いらっしゃると思っておりましたが...」


「実は、このイザベルカ王国の公爵令嬢には

私と歳の近いご令嬢がいないんだ。」


「まあ!そうなのですか?」


後で知りましたが、イザベルカ王国には

一人だけ、公爵令嬢がいます。


ティーラン公爵家の長女、マリーゼ嬢。

セテファ殿下とメルリース姫の母方の従妹に

あたるお方なのですが、まだ、7歳児です。


さすがに、歳が離れすぎているため婚約者

候補から外れたようです。


「うふふ。セテファお兄様の

提案は?いきなりすぎたようですわね。

もし宜しければ、お兄様とお手紙の

やり取りをしてはいかがでしょう?」


「お手紙の………

はい、セテファ殿下、わたくしたちは、

まだ出会ったばかり。セテファ殿下の

ことを教えてくださいませんか?」


「ああ、そうだね。焦りすぎたようだ。

エレオノーラ嬢、宜しく頼む。」







それから、わたくしたちは、

ヴィーラリア王国に戻りました。


エレオノーラは、さっそく、セテファ殿下

宛にお手紙を書いて、兄に渡します。


「まさか、あのイザベルカ王国の次期国王

セテファ殿下に妹が見初められるとは………」


「み、見初められる………!」


ディルクお兄様ったら、確かに、婚約者に

ならないか、という話はありましたけれど


見初められるという感じよりは、政治的な

政略結婚なのでは………という気が………


「エレオノーラよ。

これから、忙しくなるぞ。」


「ええと………

ディルクお兄様、それは、

どういう意味なのでしょうか?」


「レオニースト殿下が、国王陛下に

この件を報告した。その後、あちらから

イザベルカ王国からも正式に報告が入った。

あのセテファ殿下の正式な婚約者として

エレオノーラにも、エウラリーアと一緒に

お妃教育に加わってもらう必要がある。」


「まあ! セテファ殿下………!

承知致しました。宜しくお願い致します。」







あれから、3年が経ちました。


正式に、わたくし、エレオノーラは、

大国・イザベルカ王国の次期国王にあたる

セテファ殿下に嫁ぎました。


後に〈鈴蘭姫〉と呼ばれるようになる

可愛いらしい娘、オーリオラが誕生して

のんびりと平和に暮らしております。


「エレオノーラお姉様、ご無沙汰してます!

可愛い姪っ子、オーリオラ姫に会いたくて

来ちゃいましたわー!!」


「あら、フェリチタ! いらっしゃい。」


わたくしとエウラリーアの可愛いらしい

末妹〈春紫苑の妖精姫〉フェリチタ・ティ・

イクサー・エレガノット。今は13歳。


成人したら、母方のイクサー伯爵ご夫妻の

養女になる予定です。


「オーリオラ姫! 叔母ちゃまですよ〜!」


「ふふふ。オーリオラが、大きくなったら

一緒に、遊んであげてくださいね。」


「ええ、もちろんですわ!」


オーリオラは、セテファ殿下と同じ

色彩で、銀色の髪に紺色の瞳を持つ

可愛いらしい赤ちゃんです。


まだ、お話しは出来ないけれど

明るいフェリチタを興味津々に見てて

本当に、可愛いらしいですね。


「今年、エウラリーアお姉様が、レオ殿下に

嫁ぐことになりましたの。寂しくなるわ。」


「あら、マイオンが産まれてからは賑やか

そうだけど、違うのかしら?」


「マイオンは、お兄様に似て大人しくって!

最近、お兄様の部下の騎士たちに習い始めて

いるみたいなの!忙しいのよ?」


「まあ! もう騎士見習いなのね!」


ディルクお兄様と、レイベールス辺境伯の

妹にあたる女騎士のミレニーレナ様の二人の

間には、息子のマイオンが誕生しました。


可愛いらしい甥っ子は、5歳児にして

早くも、騎士見習いのようですね。


「ふふふ。花の都・ヴィーラリア王国が

安泰そうで、なによりですわね。」

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