23 ランドルフの驚き(すぎ)
更新が遅れましたが読みにきてくださり感謝いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
魔鉱石の専売制度の提案にまだ納得していない様子のランドルフに、俺は問い返した。
「あのさ、俺に大丈夫かって訊いてる場合じゃないの、わかってる?今の俺の提案って、君ができるかどうかを訊かれてるんだよ。
俺の提案を受けるとなれば、整備にかかる工事費用の他に採掘にあたる人や監督する人材の派遣が必要になる。これは技術職だし、鉱山での経験のある人間でなくてはならない。
そもそもロードマップの作成が必要で、魔鉱石の供給を急ぐなら分析やスケジュールの策定はすぐにしなくてはならない。
進捗管理はどうする?予算が動くならその管理として別に経理が出来る人間も必要だ。まあこれは若手でも可能だがリソースの配分なんかは経験者じゃないと無理だよね。
法的な知識をもつ人間も必要だ。雇用に関することと、国との契約について計画から任せられる人間。これもそれなりに年季の入った人材を求めたい。
人が増えれば領内で住む家や食料等についても整備が必要。これもどこか信頼できるところにまとめて請け負ってほしい。実績のあるところを頼む。
最後はそういった諸々を見守り警備してくれる組織だ。
これは騎士団とまではいかなくても、王都でそれなりに功績をあげている者にまとめてもらいたい。高値な魔鉱石を扱うのだからね。買収されるような組織じゃあ困る。
そういった人材やらを込みで、軌道に乗るまで数年間負担してもらう。こういうのを同時進行で決めながら領地できることは調査として進めてほしい。どうせ分析に必要でしょ。
…どう?専売にするっていうのは、それくらい国に負担してもらうってことだよ?
もちろん俺だって計画は立てるしチェックもするけど、ある程度はそっちでも素案を立ててもらわないと。
ランドルフ、君はタヴァナーが増産に困って専売を提案したと思っているかもしれないけれど、決してそんなことはない。
どちらにとっても益になる。特にうちにとっては短期的にも長期的にも得だ。
仮に制度が50年で終了となっても、そこまでに領地が成長すれば、魔鉱石の産出以外の生き残りの戦略が見いだせるはずだ。50年というのはそれだけの時間だと俺は思っている。
…と言うことでだよ、君にできる?俺の今の話から、予算案作って上司に掛け合って、議会にかけて、承認取って、人や物資の手配して、実際に動かすところまで。これから君がすることだよ?
君がここに来るって、俺を説得してくるって言ってやってきたんでしょ?
俺にいいのかって訊いてる場合じゃないの。ここに来て俺に増産を持ちかけた君は、俺からの提案に何て答えるつもり?ここで決断して王都に帰る?どうするの?」
ランドルフの顔には無理とあった。人間、驚くと本当に顔が白くなるんだな。
当然だ。これだけの計画、今の彼に即決なぞ出来るわけもない。検討、計画を立てることさえ出来ないだろう。
ランドルフはここに来る際、おそらくは若い男爵をいろいろ煽って、多少なりとも増産を取り付けて帰ろうと考えていたのだろう。そうはいくか。前世もちの俺だよ?
「どうする?『一度持ち帰って、関係各所で検討させていただきます』にするか?」
俺はランドルフに確認する。彼の顔にさっと赤みが差す。そんなの、王都に戻っているうちに俺が心変わりしたら終わりだ。それが分かったのだろう。
うん、それに、『一度持ち帰って、関係各所で検討させていただきます』は言いたくないよな。ソレは『自分には判断できません、すみません』と同義だから。
時間にしたら1分弱。考えていたランドルフが答えた。
「…次までに計画案を作成して持って来ます。鉱山の専門家、そして警備に関しては任せられる人材、無理でも話が通せる者を連れてくるところまでやってみせます。
だから…そのお話、受けさせてください」
ランドルフの顔つきがまあまあ鋭くなった。いいだろう。
「OK、それでいこう」
俺の返答に彼がホッとしたところで、爆弾を落とす。
「ところで、ランドルフ、君、前世はどこの自治体にいた?」
「…っは、えっ?」
ランドルフの目が見開かれ、口が開いた。
「何歳でここに来た?中身は何歳だ?」
「いやっ…あのっ…えっ?」
「転生したのが自分だけ、と思うなよ?」
「えっ…あ……ええっ?」
「俺は『たてはら市』で働いていた。転生は60歳。この世界で8年だから中身は68歳だよ」
「えええ〜っっ?」
ランドルフ、きみ、声大きすぎ。
お読みくださりありがとうございます。今回、ランドルフは驚きどころではありませんでした。
徐々に終わりに近づいてまいりました。完結目指して頑張ります。




