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16 懐かしい味 〜クレメンスとの思い出〜

クレメンスが帰ってしまって少し寂しい二人のクレメンスとの思い出話の回です。短いです。

 クレメンスが帰って2日が経った。最初は鬱陶しかったが最後はまあまあいい関係になれたかな、なんて思い出す。


 クレメンスが帰り支度をしている間、ベルはこれまで以上におもてなしをしようと思ったのだろう、料理に励んでいた。もちろんクレメンスにとっては初めての味が多いが、俺にとっては懐かしい味で、中でも甘味には感動した。


「ベルっ、これって…もしかして…」


「はい、ぜんざいですよ〜」


「つ…つぶつぶ…」


 期待に震える俺とは逆の意味でクレメンスが震えている。そうか、黒いつぶつぶは怖いか。


 そうだな、俺も最初に娘のマリエに連れられてタピオカミルクティーを飲みに行った時ビビった。そしてその糖質量にも。あれ、ラーメン一杯分くらいなんだって…怖いな。


「小豆が手に入ったから、粒あんとかは簡単だったんだけど、お餅がね〜難しくて時間がかかっちゃった」


「お餅ってどうしたの?お米は無いって言ってたよね?」


「領内に塩湖があるでしょう?視察に行った時、そこでにがりが取れたからお豆腐作ろうと思って頑張ってたの。大豆は買えたから。それでできたお豆腐とジャガイモの片栗粉でお餅っぽくしました。まあまあ美味しいよ」


「へえ〜…えっ、じゃあお豆腐もあるの?」


「ええ、昆布があるからお塩で湯豆腐も食べられるし、ちょっと違うけど麻婆豆腐っぽいものもできるわね。おからもあるからそれでサクレとか煮物とかいろいろ作ってみるつもり。本当に、ダシがとれるのはありがたいわよねぇ。あっ、ほら、いいから食べてみてよ」


 お椀はないのでカフェオレボウルみたいなのによそられたぜんざいをスプーンで一匙すくう。ツヤツヤしている小豆を期待しながら口に運ぶと。


「っ…!!!おいしいっ!」


ヤバい、ちょっと泣きそうなくらい懐かしい味だ。


「お餅も…むぐ…うわ、弾力があるね」


「カイはお餅好きだもんね。もっとあるからおかわりできるよ」


「やった!」


 俺達の会話を聞いて、クレメンスが恐る恐るスプーンを口に入れた…俺達はその様子をじっと見ていたが、クレメンスの顔がパッと明るくなったのを見て二人で顔を見合わせ、続きを食べたのだった。


*****


「クレメンスはもう王都に着いたかなぁ」


「どうかな。まだ2日だし、アンドリューの時と違ってそう急がないといけない理由もないから、のんびり帰ってるかもね」


「変わった物を出しても頑張って食べて、あの子偉かったわよねぇ」


「そうだね。そういうとこ、あんまり冒険しないタイプだと思ったけど、意外とガッツがあった」


「コンビーフとお豆腐を気に入ってたから、次に来た時にはお豆腐づくしにしようかな」


「そこまで歓待しなくても良いと思うけど、でも、ベルがしたいなら任せるよ」


 夕食の後にクレメンスのことを話題にしながら執務室でゆっくりすごす、こんな二人きりの時間は久しぶりでホッとする。ベルも思うところがあったのか、しみじみ言った。


「私、ここではまだ半分くらい子どものつもりで生活していたけど、クレメンスが一生懸命頑張ってるの見てたら、なんだか母親みたいな気持ちになっちゃったのよね〜やだわ〜」


「どんな心持ちでも君は君だよ。好きなことをすればいい」


 俺の言葉にニコッとしたベルを見て、こんな時間がずっと続けばいいなと思った。


 ベルはローテーブルで何やら紙に書いていて、のぞいて見ると豆腐を使った料理名が並んでいて、丸やバツがつけられている。今ある材料で作れそうなものが丸、無理なのがバツだろうか。


「あ、このとうもろこしのかき揚げっていうのがいい!」


「そう?じゃあ今度作ろうかな」


「この豆腐ハンバーグも」


「はいはい」


 この時の俺は、またすぐに攻略対象者が現れるなんて思ってもみなかった…ってまたこれか。

お読みくださりありがとうございました。次に登場するのは誰かな?

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