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アーリア物語 ~神と白竜と私(勇者)~  作者: いちこ
第1章 クリフト王国の日々
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第1章6幕 腕試しとギルドでの出会い

 ギルドマスターのヨルマに連れられ地下の修練所に到着すると、周りには野次馬が集まっていた。なにせ10歳の子供がギルドでも有名な槍使いであるエリクと手合わせするというのだ。こんなに面白いイベントなど見逃せるはずもない。

「全く、物好き共が。暇があったら依頼でも受けてこいってぇんだ!」

 ヨルマはそう言い放つも周りからは「そりゃねぇよマスター」だの「今はそんな急ぎの依頼なんて来てないって」と笑いながら反論が飛んで来る。ヨルマも怒っているわけではないようだ。


 訓練場の中央にはグレーの髪が美しい狼人族の男が十字槍を持って待っていた。彼がエリクなのだろう。

「こんな子と戦えってんですか?マスター」

「あの西の森の賢者様の愛弟子だそうだ。油断してると足元救われるやもしれんぞ」

 ヨルマはアルトの出自を明かすとエリクを含む周りの様子が変わりざわつき始めた。シルヴィアってやっぱ有名なんだな、とどこか嬉しく感じるアルト。

「そりゃ油断できないな、じゃあ行くぜ。えっと名前聞いても良いか?俺はエリクだ。」

「俺はアルトだよ。よろしくお願いします!」そう答えながら剣を抜き構えるアルト。


 エリクが槍を構え戦闘態勢に入るや否や、アルトは槍の間合いへと入る。

(簡単に間合いに入ってくるとはいい度胸だ)と思いつつ突きを繰り出した瞬間エリクは驚愕した。とても子供とは思えないほど、いや大人でもこれだけの力で弾く奴はそうそう居ない力強さで槍を弾いたのだ。


 バックステップで距離を取るエリクに、相対距離を変えず付いていくアルト。エリクは十字槍を一層強く握りしめ薙ぎ払うようにしながら下がる。これをさも当然のように止めるアルトだったが、その瞬間エリクは槍を前に突き出した。十字槍の特性を使って押し出そうとしたのだ。しかしアルトはビクともしない。


「そろそろ行くよ!」

 そうアルトは宣言すると共に槍を押し返す。その力はエリクでなければそれだけで体勢を崩していたかもしれないほど強く、巧みに十字槍を扱いその力を逃がしつつアルトの行動を注意深く目で追う。


 エリクの十字槍をやや上方の押し返す形に力を込めたアルトはそのまま勢いよく懐に飛び込むと、槍の柄で受ける様に胴体に向け真っ直ぐ蹴りを繰り出した。

 しかしエリクも強者である。柄で受ける事を誘われていると判断し身体を捻って横へと避けると共に、その足を目掛け槍を振り下ろす。


 アルトは避ける動作を見た瞬間に軸足を浮かせ、蹴り脚で空中にとどまる様な斜めの足場を形成。そしてそのまま空中へと飛ぶ。その動作に周囲の誰もが驚いた。

 そしてまるで樹々を撥ねる動物の様に空中で方向を自由自在に変え、エリクを翻弄し始める。時には槍の間合いに入り、すぐに離脱を繰り返す。そんな動きを三次元的に行うその独特な戦法にエリクは戸惑いを隠せなかった。


 そして隙を見て自分の間合いに入るアルトの剣戟を受けるだけで精一杯という状況に追い込まれる。

(コイツ、強いなんてもんじゃねぇ、バケモンだ!)エリクは焦っていた。高速で動き回るアルトを捉える事は極めて困難である。本気で相手をするしかないか、と魔法を使う覚悟をした時に声が掛かる。

「そこまで!充分だエリク、アルト!」

 その声に内心ホッとするエリク。これ以上は命のやり取りになりかねないからだ。

「それにしてもアルト、なんだあの動きは?賢者様直伝の移動術か何かか?」

 そう満足げな笑みでにアルトに聞くヨルマ。

「いや、あれは森で修業してる時に思い付いたんだ。俺は魔法を外に出す事が出来ないから、何か強みが欲しいって思って考えたの」

 そう答えるアルトの笑顔は無邪気で年相応の物だ。戦闘時の迫力とその実力と笑顔のギャップにヨルマは調子が狂う奴だなと呆れたのだった。


「アルト、お前は凄い奴だよ。俺はコイツなら問題ないと思いますぜ!マスター!」

「エリク。俺が止めなかったら危なかったかもなぁ」

 意地悪くエリクに語りかけるヨルマを見てアルトは言う。

「いやいや、エリクが魔法使い始めたらこうはいかないでしょ」

 その言葉にヨルマとエリクは驚いた。この少年はエリクの実力を正確に見定めながら戦っていたのだ。


「なるほど、確かにアルトはその歳で推薦状を持ってくるだけの実力はあるみたいだな。ようこそアルト!ギルドはお前を歓迎するぜ!」

 ヨルマは高らかに宣言し、地下に喝采が湧いた。




 二階で手続きを終え一階へと降りるとハンスが話しかけてきた。

「アルト、お前とんでもない奴だったんだな!凄いもん見せてもらったぜ!」

 そう肩を組んでくるハンスは違和感を覚えた。

「お前さん、なんで防御魔法掛けたままなんだ?」

「切ろうと思わない限りずっと掛けっぱなしなのが普通じゃないの?」

 そう答えるアルトの顔はキョトンとしており真面目そのものだ。

 ハンスとエリクを含む周りのメンバーが呆れ顔でアルトを見つめるが、アルトは何がおかしいのか分からない様子で変わらずキョトンとしている。


「ま、まぁそれは置いといてだ。さっきお前さんと手合わせをしたのが風結の誓約のリーダー、エリクだって話はしたよな。他のメンバーも紹介するぜ!」そう言ってハンスは風結の誓約のメンバーがいるテーブルへアルトを座らせた。

「このでっかい筋肉だるまがヨハン、うちの回復担当でこれでも後衛だ。そしてこっちの狼人族の女がアウロラ。チームの指揮役で弓と魔法を組み合わせた後方支援担当だ、逆らうと怖いんだぜぇ」

 そうアルトに冗談ともとれる余計な情報まで吹き込むハンス。

「ちょっとハンス、そんなウソを吹き込まないでよね!よろしくアルト、さっきの戦い凄かったわ。エリクとあんなに戦える男なんてそうそういないもの」

 アウロラがそう握手を求めてくる。握手しながら挨拶をするアルト。

「筋肉だるまとは失礼な物言いだな、ハンス。よろしくなアルト。精霊教の信徒、ヨハンだ。」

 続けてヨハンとも握手する。

「エリクは中衛よりの前衛で、俺が前衛なんだぜ!この四人でチームを組んでるんだよ。」

 そうハンスがまとめると、リーダーのエリクが割って入った。

「ハンス、なんでお前がメンバー紹介の仕切りをやるんだよ。まぁ良いか。改めてよろしくな、アルト。何か困った事があったら俺たちに相談しろよ。」

 エリクはハンスに突っ込みを入れつつ握手で挨拶をしてくれた。

「よろしくお願いします!みんな!」

 そう元気に挨拶をしたアルトを微笑ましく見守る風結の誓約のメンバーたち。


「俺の子もこんな風に元気に育ってくれるといいねぇ、聞くかアルト、俺の自慢の家族のぉ」

と話しかけた所でアウロラが割り込む。

「ハンス、あんたアルトはまだ登録したばかりなんだ。これから色々とやる事もあるだろう。その話は今度だよ」

「ハンスは良い人で、ボケ担当なの?」そうアウロラに聞くアルトにギルドは笑いに包まれた。

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