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アーリア物語 ~神と白竜と私(勇者)~  作者: いちこ
第1章 クリフト王国の日々
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第1章5幕 冒険者登録

 アルトはリリーの護衛として同行し、その後はトラブルに巻き込まれる事無く王都へ入る事が出来た。そして冒険者ギルドの前まで辿り着くと、リリーに語り掛けた。

「案内してくれてありがとう!じゃあ俺、じゃなくて私はこれで依頼達成で良いですか?」

 まだ貴族との会話になれないアルトはぎこちなくリリーへ語りかける。

「良ければ王都の兄の家にお招きしたかったのだけど、お忙しいかしら?」

 リリーは尋ねた。


「お誘いありがとうございます。こいつのお陰で今日中に宿を決めなくちゃならなくて、ギルドの登録とかも一緒に済ませておきたいんです」

 アルトは丁寧に断った。今度は上手く喋れたと内心ガッツポーズを取りつつ、チッチの頭をなでる。


「そう、残念だわ。ところでアルトさんはお幾つなのかしら?とても成人しているようには見えませんが。」

 率直に質問をするリリーに「10歳ですよ」と答えるアルト。

「やはり私と同い年なのですね。アルトさん、冒険者として登録できるのは成人してから、つまり15歳からでないと登録できませんよ?」

「それなら大丈夫です!推薦状持ってますから!」

 そう答えるアルトにリリーは反応した。その推薦状の主が誰か分かればこの少年の事が何かわかるかもしれないからだ。

「珍しいですわね、どなたからの推薦状なのか伺っても?」

 そうアルトに語りかけるとアルトは耳打ちをするように答えた。

「アルトさん…まさかとは思ってましたが本当にあの方のお弟子さんだったなんて。」

 驚きを隠せないリリーだがそれを聞いて納得をしたようだ。

「そういう事なら問題ありませんね。これからのご活躍に期待しています。私も何かあったら頼らせてもらいますね!」

 そう初めて年相応の可愛らしい笑顔を見せてくれたリリーに、アルトは貴族らしさと可愛らしさを兼ね備えた素敵な子だ、と感じた。


 リリーは一行に出発の号令を出すとアルトに手を振り別れを告げる。アルトも手を振り見送った後、緩んだ顔を引き締めチッチにフードに隠れる様に伝えギルドに入っていった。




 中に入ると1階は酒場のうな雰囲気だ。冒険者と思われる人々が何組かに分かれテーブルを囲んでいた。その誰もがアルトに好奇な視線を向ける。不意に20代くらいであろう短髪の男が話しかけてきた。

「君、ここは冒険者ギルドだよ。お使いか何かだった別の店だ。」

 そう言い出口を親指で指す男。


「ううん、俺は冒険者登録をしに来たんだ。推薦状もあるよ。」

 アルトは男に答えた。

「お前さんのような子供がねぇ。ギルドの小難しい受け付けは二階だ、案内してやるよ。」

 男は興味深そうにアルトを眺め、そう答えて二階へと向かう。アルトは慌ててついていった。


 二階は冒険者登録やランク更新など、通常の依頼とは異なる事務業務に関する受け付けを行っている。受け付け担当の女性に短髪の男が語りかけた。

「この子が推薦状を持って冒険者登録をしたいんだと、頼めるかい?」

 受け付けにそう伝えると男はアルトを指さす。

「解りました。推薦状を見せて頂けますか?」

 受け付けの女性はそう言うとアルトに向かって推薦状を求めた。マジックポーチからシルヴィア直筆の推薦状を取り出し受け付けに渡す。

「これは、あの方の推薦とは珍しいですね。偽造でもないようですし、年齢は10歳で間違いないですか?」

 言葉とは裏腹に驚く様子もなく職員は尋ねられたので、アルトは肯定した。


 職員は少し考えこんだ後「少しお待ちください」と言い席を立って奥へと引っ込んでしまった。

「推薦状を持ってくるって言ってもお前さんみたいな子供が来ることなんてそうそうないだろうからなぁ」

 短髪の男はアルトにそう語りかけ「そうだ、まだ名乗ってなかったな。俺の名はハンス、Cランクで『風結の誓約』のメンバーだ!お前さんは?」

 そう気さくに語り掛けてくるハンスと名乗った男。

「アルトです。風結の誓約ってチームの名前?なんかカッコイイね、宜しくハンス!」

「だろう?リーダー達と一晩中悩んで付けた名前だ」

 ハンスはニコリと自慢げに笑ってみせる。

「アルトが無事に登録出来たら他のメンバーにも紹介するぜ!」

 そう応えるハンス。どうやらアルトは気に入られたらしい。


 そんなやり取りをしていると、奥から受け付けの女性と風格のある男が現れる。

「お前がアルトか。俺はこのギルドのマスター、ヨルマだ。あの賢者様からの推薦って事だが、流石に10歳の子供ってぇのは前代未聞でな。ちょいと実力を見せてもらいたい。構わないか?」

 風格のある男はそうアルトに告げる。

「いいよ?ヨルマが相手?」

 アルトがそう答えるとヨルマは豪快に笑う。

「ハッハ!俺を見て怯むどころかそう来るか!度胸は買ってやるが肝心の腕はどうかな」

 そうニヤリと笑うとハンスに向かって「エリクはいるか?」と尋ねる。

「ヨルマ、エリクに相手させるつもりか?居るけどよ、いくら何でもそりゃ無茶だろうよ」

 肩をすくめながらそう答えるもエリクと呼ばれる者が居ると答えた。相当の実力者なのだろうか。


「ねぇハンス、エリクって人は強いの?」

「エリクはな、狼人族の戦士でCランクの冒険者、そして俺たちのリーダーだよ。」

 そう答えながらもヨルマの様子を伺うハンスはヨルマが本気だと悟ると下へと降りていく。

「ギルドの地下には新しい武器の試し切りや修練を行う訓練所があるんだ。そこでお前さんの実力を見せてもらうぜ、アルト」

 そう言いながらアルトに付いてくるように促しズンズンと進んでいくヨルマにアルトは付いていった。

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