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アーリア物語 ~神と白竜と私(勇者)~  作者: いちこ
第1章 クリフト王国の日々
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第1章20幕 レオニスの矜持

 王立魔法学校に入学してから1ヶ月が過ぎようとしていた。アルトは5月3日で12歳になり、150㎝を優に超えていた。この頃になると、武器をそろそろ刃渡りの長い長剣にした方が良いかもな、そんな事を考えていた。


 武芸の授業では長剣を使っており、これも中々使いやすい。もう少し長い両手剣も興味があるので近々試してみたいと考えながら、今日もレオニスの相手をしていたアルト。レオニスは武芸の授業の度にアルトへ挑戦し、尽くあしらわれるという毎日であった。


 そんなある日、レオニスが放課後にアルトに話しかけてきた。

「アルト、頼みがある。お前のその…その鍛錬の方法を教えてくれ!」

 アルトは面を食らった。レオニスがこうも素直に頭を下げてくるとは思いもしなかったのだ。


「うん、一緒に強くなろう!聞きたい事があったら何でも教えるし、出来る範囲で協力するよ」

「そ、そうか。すまない、早速聞きたいのだが…」

 そう言って根掘り葉掘りこれまでの事を聞かれるアルト。レオニスの目は真剣そのものだ。なるほど、このレオニスという男はやはり努力を人一倍重ねるタイプだな、そうアルトは感じた。結果の為に突き進み、その為には時に人に頭を下げる事さえ厭わない。それこそが彼の矜持なのだ。そういう人間は嫌いじゃない。


 そうしてアルトはレオニスに自分の身体強化と能力強化の二つの魔法統合や、リリーとシズクに教えた際の伸び方から推測する長時間発動によるメリット、魔法詠唱の際に精霊への命令ではなく感謝と畏怖の念を込めて助力を乞うという詠唱文の変更により威力上昇など、これまで得た知識を惜しみなく披露した。

 それはレオニスだけにとどまらずAクラス全員に、そして3か月も経つ頃には同期全体に共有される事になる。


 適性試験を受けていた者は皆アルト達3人の突出した能力を目の当たりにしており、その秘密が明かされたとなるとすぐさま実践し始めた。だがそれは決して容易な事ではない。リリーやシズクは直接アドバイスを受けていた事もあるが相応の適性も必要になる。


 しかしレオニスは影でも人一倍努力した。授業は土日は休日なのだが、彼は密かに自室で強化魔法をかけ続けマインドダウンまでするなどの無茶をした結果、今自分がギリギリ使用できる限界を探り、いち早くアルトに追い付こうと必死だったのだ。通常のマインドダウンであれば数時間で目を覚ます。ベッドで横になったままであれば怪我をする心配もない。


 そして7月になる頃になんとレオニスは2つの統合魔法を見事にマスターしたのだ。もっともその効果時間はまだ1時間程度と短いのだが、これは驚異的な成長速度である。質も稼働時間もまだまだ伸びしろはある。アルトは剣を交えながらもレオニスの成長ぶりを喜び、称えていた。


 そんな中でレオニスもまたアルトに対しての態度が軟化していく。相変わらず物言いは尊大だが、明らかに友として認めているような雰囲気を見せていた。アルトもそんなレオニスを友と感じているようだ。


 Aクラスの面々からも時折アドバイスを求められ、リリーとシズクに手伝ってもらいながら研鑽を重ねていく日々の中で、当初のぎこちない雰囲気は既になく皆が皆、上を目指して努力する姿勢を見せるような活気にあふれる雰囲気がAクラス全体に広がっていた。




 そんな中、ある休日にアルトは鍛冶師トーリンの元へ訪れる。授業で使っている長剣や両手剣がショートソードよりも馴染み始めたため、新たに銀製の剣を作成してもらうためだ。

「トーリンさん、こんにちわ!」

「お前さんはシルヴィアの弟子か、今日はなんだ?遂に剣でも壊したか?」

「いや、体が大きくなってきて学校で長剣や両手剣を扱ってる内にショートソードだとちょっと物足りなくなってね」

「なるほどな。ちょっとお前さんの剣を見せてみろ」

 トーリンに剣を渡すと真剣なまなざしで刀身を見つめる。


「コイツは、お前さんのマナとよく馴染んでやがるな。銀製の武器にはたまにあるんだよ」

「つまりどういう事?」

「これを元に新しく剣を撃ち直した方が良いってこった」

「なるほどねぇ。その方が自分のマナを流しやすくなるんだ」

「そうだ。ちっと時間かかるが預かっていいか?」

「そういう事なら問題ないけど、問題はサイズなんだよね。それも相談したくて」

「それなら長めの刀身の長剣に長い柄でも付けるか。それなら使い勝手も良いだろう」

「うん、じゃあそれでお願いしようかな。あと、閉所用の予備で銀製のダガーも欲しいかな」

「確かに今まではショートソードだったからなぁ、分かった。そっちは新しく用意してやる」

「ところで旦那、お代はいか程で…」

 アルトはわざと下卑た笑いを浮かべ手を擦り、トーリンを見つめる。


「ふん、子憎たらしい笑みを浮かべるな、ちょっと待ってな」

 トーリンは計算を始める。


「占めて小金貨1枚ってとこだな。言っとくがこれ以上は負からんぞ」

「前にシズクの錫杖で安くしてもらったし、それでお願いするよ」

「今回は聞き分けが良いじゃねぇか」

「俺はシルヴィアほど鬼じゃないよ、冒険者としてもそれなりに稼いで貯めてるしね」

「はっは!ちげぇねぇ!1週間ほど時間をくれ」

「わかった、じゃあよろしくね!」

「あいよ!毎度!」

 そんなやり取りをし、トーリンお店を後にした。

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