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アーリア物語 ~神と白竜と私(勇者)~  作者: いちこ
第1章 クリフト王国の日々
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第1章17幕 選考試験(2)

 アルト達三人はこれまでの試験でマナの出力と総量がトップクラスである事が判明した。特にアルトは測定不能という規格外の存在であると知れ渡り、忽ち周囲の注目を浴びる事となる。


 次は魔法実技である。魔法の心得が無いものはこの試験はパスしても良いそうなのだが、当然アルト達は受ける事にする。内容は訓練場にある的に対して魔法を放つというものだったがここで問題なのはアルトだ。彼は魔法を外に出す手段を持っていない。


「すみません、ちょとお聞きしたいのですが、魔法を外部に出す手段を持ってない私は場合どうすれば適性のチェックをすればよいのでしょうか?」

 試験官に問うアルト。

「君は全く魔法が使えないのか?なら試験をパスしても良いんだぞ」

「いえ、強化魔法は全て使えますしマナで作った盾を展開する事なら可能なんですが、的にめがけて射出するような魔法は使えないんです」

「防御魔法だけ使えると?属性は?」

「ありません。純粋なマナで形成するものです」

 そう言ってアルトはマナの盾を形成してみせる。


「これは初めて見る…少し待ってなさい」

 そう言うと試験官は別のものを呼び走らせた。

「君の試験については方法を検討する。確定次第伝えるので待機していてくれ」

 アルトは了承する旨を伝えるとリリー達の様子を見に行く。彼女たちも順番待ちのようだ。

「それでどうする事になったの?」

 リリーの問いに「検討中」と答えるアルト。魔法が使えないわけではないのになと不服そうな表情だ。


 リリー達の順番待ちをしている間にレオニスが魔法実技を披露するようだ。さて彼の腕前はどのようなものだろうかと興味津々で見るアルトとレオニスの目が合う。何やら鋭いまなざしで一瞥されたように感じた。


 「風と地の精霊よ。我がマナを対価にその力を我に貸せ。我が望むは雷の槍。空気を割きその槍をもって敵を貫け。ライトニング!」

 彼が使ったのは風と地の合成魔法『ライトニング』で中級レベルのものである。高度な魔法技術が必要とされており、この年でそれを使えるだけでも称賛に値するだろう。周りはどよめいていたが、アルトから見て、あれではせいぜい倒せるのはホブゴブリン一匹程度だろうと感じた。


 この時からアルトは自身の考えが間違えているのではないかと感じ始めていた。首席筆頭候補と言われるレオニスがこの程度ならリリーとシズクに行った訓練は過剰なものだったのではないか、と。そして事実その通りなのである。これが通常の11、12歳の常識なのだ。


「え~アルト君。ちょっと良いかな。君の試験内容なんだが、誰かの魔法をどの程度防げるかというもので実施したいと思うが大丈夫かい?」

「はい、それで構いません」

「もし怪我をするような事があっても治療魔法に長けた者を呼んでいるので安心してくれ」

(それは安心できると言えるのだろうか)と思いつつこちらを見る初老の男性が目に入る。

(あの人が治療魔法の使い手かな?確かに相当な腕を持ってそうだ)アルトの感知能力強化がそう告げていた。


「せっかくだからリリーとシズク、的にしてくれない?二人は注目集めてるみたいだし」

「それは構わないわ、今日こそその盾を砕いてあげるんだから!」

「アルトさん相手なら手加減しなくて良さそうですね、全力で頑張ります!」

 物騒な意気込みを語る二人に苦笑いしつつ順番が回ってくると、アルトは訓練場の中央へ陣取る。そしてマナの盾を半円状に形成し手を挙げて合図した。


「ではリリー・ブラックヴェル、始めてください」

「はい。星を巡る風と水の精霊よ、我がマナを糧にその恩恵を与えたまえ。我が望みは氷の大槍、その偉大なる力を持って我が敵を払いたまえ。アイスランス!」

 リリーの詠唱文は訓練の時に考案したものだ。精霊の力をより多く貸してもらう為に、詠唱文を変更した。精霊を称えその感謝の気持ちをマナに乗せる。そうする事で威力が上がる事が検証で分かった為である。

 リリーのアイスランスがアルトに向かって飛翔する。その速度と物量からは他の生徒では決して真似できない威力を容易に想像させた。轟音と共に弾ける氷塊。靄と土埃が辺りを包む。


 しかしアルトの防壁はビクともしていなかった。頭の後ろに手を組んで待機しているアルトを憎々し気に見るリリーと目が合い苦笑いをするアルト。


「次。シズク、始めてください」

「はい。『おいでませ、おきつね様』」

 皆がシズクを見る。守護精霊を召喚したのだ。

「『おきつね様、私のマナを使いお力をお貸しください。狐火、蒼炎!』」

 シズクの精霊語を受け、白き狐の守護精霊は青い炎の玉を形成しアルト目掛けて飛ばす。着弾した炎の玉は熱風と共にアルトの周囲を焼き尽くす。周囲は煙に包まれているが、やはりアルトの周囲の盾は依然として変化がない。

「全力でしたが及ばずですね。でもお怪我が無くて何よりです」

 シズクはホッとしたような表情を見せた。


「アルト、君はもう大丈夫だ。戻りなさい」

 試験官から声を掛けられアルトはシズクたちの元へと戻る。


 同年代とは思えない魔法の威力とそれを受けても平然としているアルトを見て周囲はますますざわついている。その中で一層強い眼光でアルト達を見るレオニスの姿があった。

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