4話
「名前は?」
「俺の先生になってください。」
「「「え?」」」
その場の誰も予想していなかった問答に全員が困惑する。
「いや、ちがくて、リ、リョウマです。アカシリョウマっていいます。」
「ふふ、面白い人だね。」
「アンさん、この人異世界から来てるんだよ。」
「だから変な服なんだ。」
「そんなに変ですかね??」
「まあこっちじゃなかなか見ないよね。」
少しの沈黙の後アンが口を開く。
「なろっか。君の先生に。」
「え、その、いいんですか?」
「いいよー。何もわかんないでしょ?こっちのこと全部教えてあげる!お姉さんに任せなさい!」
お姉さんと呼ぶには童顔で三つ編みおさげと思ったが心の奥底にしまった。
「じゃあ、よろしくお願いします!先生!」
先生という言葉がうれしいのかアンは誇った顔で頷きながら自分の席に戻っていく。スープが冷めていたようでしょんぼりしながらすすっている。随分と幼気で表情豊かな人だと思いながら自分もぬるくなったスープをすする。
「朝から修行するからね!おやすみ!」
そう言って先生は二階に駆け上がっていった。思わず先生と口走ってしまったが、修行?魔法より先に武術?ついていけるかなと不安になりながら食器を受付にもっていく。
「あ、助けてくれてありがとね!その、かっこ、よかったよ…!おやすみ……!」
そう言って食器を抱えながら宿屋の娘さんはそそくさと奥に戻っていった。明日の不安は人からの感謝で打ち消された。
次の日
「おはよう!じゃあついてきてね!」
勢いよく宿を飛び出していく先生に挨拶をする暇もなかった。外に出るとすでに先生は猛ダッシュ。豆粒くらいになっていた。
「ま、待ってくださーい!!」
何とか息を切らしながら追いつく。
「ここは交易所!農家のひとが野菜やお肉を売ってくれるよ!じゃ、つぎ!」
「まって少しペース落として」
「ここはカイチの店!!日用品から本まである程度売ってるよ。!つぎ!」
「ちょっと」
「ここは教会!つぎ!」
「あの」
「ここは井戸!つぎ」
「は~は~……」
「ここはギルド!つぎ!」
「はぁ……はぁ……」
「ここは井戸!つぎ!」
「はぁ…………」
「さいご!宿屋!」
「は…………は…………」
「だいじょうぶ?」
「村の……あちこち……走り…回って、限界です……。」
「ちょっと飛ばしすぎたかな?」
「ていうか宿の目の前が教会とギルドじゃないですか……。なんで緯度挟んだんですか……」
「準備運動だよ~。そうだ!ギルドで冒険者の登録しよっか!」
「やった……」
異世界らしさあふれる言葉の羅列に心臓がバクバクだ。きっと喉奥に血の味がするほど走ったからじゃない。
教会の横にある建物に入ると受付のおばあさんと目が合った。息を整えながら見回すと、あまり活気はなく怪しいおばあさんが端っこに座っているだけだった。
「登録お願いできる?異世界から来た子なんだけど。」
「その子がかい?まぁ登録くらいはいいけどね。」
あんまり期待されてなさそうだ。
「はい、この短剣を握りながらこう唱えるんだよ。我は剣に仕え、勇を示す。銘を刻め。」
一気にファンタジー感が出てきた!短剣を握る手に力が入る。ゆっくりと深呼吸をし嚙まないようにゆっくりと唱える。
「我は剣に仕え、勇を示す。銘を刻め。」
短剣は鈍く光り見慣れない文字が刻まれた。
「この短剣を肌身離さず持ち歩くんだよ。規定通り下級冒険者からスタートだよ。クエストをクリアして、実績を積むと中級冒険者になれるよ。以上質問あるかい?」
「えっと、クエストはどこから?」
「横にあるボードについてる紙を持ってきな。星が多いほど危険で複雑だよ。まぁ下級冒険者は星2つまでしか受けれないけどね。」
「なるほど。」
クエストボードに目をやると既に先生がクエストの吟味を始めていた。
「よーし!これにしよっ!受付お願い!」
「盗賊の撃退ねぇ…。初心者がいるのに大丈夫かい?」
「いつまでも子ども扱いしないでもらえる?なんとかなるわよ!私だって中級の上澄みなんだし!」「そうだねぇ。悪かったよ。気を付けていってくるんだよ。」
「じゃ!早速出発だよ!!」
「はい!!」
初めてのクエストが始まる。
忘れることのできない始まりが。




