1話 冒険の予感
嫌いになりつつあるケータイの目覚ましで起きるとそこは近所の神社だった。まだ夢を見ているのかと思ったがほっぺの痛みが否定する。寝ぼけた頭ではなんでこんな石畳で寝てたのか思い出せない。
「……とりあえず一旦、家に帰るか。」
落ちてた学生カバンを拾い、急いで階段を駆け降りる。入り口の鳥居をくぐった先はだだっ広い草原だった。まだ夢の中らしい。明晰夢は初めてだ。
階段に座り込んで唖然としているともう一度目覚ましがなる。ハッとして目覚ましを止め、冴えた頭でケータイの地図を開くが圏外で何もうつらない。寝る前のことを思い出し状況を整理しよう。
高校3年生にも慣れてきた5月末、小テストの結果が良くなかったので神頼みに来たのだった。
「頭が良くなりますようにとは願ったけど…。ここまで世界の見え方が変わるとは思わなかったな…。」
冗談を言いながらもその後のことが思い出せない。勉強から逃げたすぎて北海道かアメリカにでもやって来たのか?じゃあなんで地元の神社で目覚める?疑問は尽きないが考えていても仕方ない。
「電波が拾える所まで歩くか。」
テクテク歩くがずっと先まで草が生えてるだけ。笑えない。高いところの方が電波が拾えるのでは?ハッとして、神社の方を見るが360度草しかない。なんで?
頭がハテナでいっぱいになっているとガタゴトと音がする。
「馬車だ!おーい!」
大声を出し、手をブンブン振りながら馬車まで走る。幸いにも気づいてくれたらしく止まってもらえた。息を切らしながら御者を見ると白人っぽい見た目のおじさんで下手な英語を使わざるをえなくなった。
「ハロー!ナイストゥーミーチュー!アイムファインセンキュー!」
酷い英語だと自覚しながらもおじさんは口を開く。
「何言ってんだおまえ!?」
日本語だった。
「よくわからんが乗ってくか?」
「はい!」
安心からか大声が出た。
馬車の乗り心地の悪さに驚きながらもおじさんに話しかける。
「あの、ここはどこですか?」
おそらく北海道の田舎か、もしかするとヨーロッパかアメリカだろうと回答を予想しながら質問する。
「あんた異世界から来たんだろ?格好を見りゃわかるよ。」予想は全部ハズレ。異世界だった。
「あと1時間もしたら町に着くよ。ワシは村から野菜を売りにきててな、乗せたかわりと言っちゃあなんだが着いたら積荷をおろすのを手伝ってくれんか?」
「もちろん!手伝います!」
「いい返事だ!若いのはそうでなくちゃな!」
おじさんはダハハと笑う。その笑いに釣られて俺の心も踊る。不安も大きいが俺の心を支配していたのは異世界に来た喜びと冒険へのワクワクだ。
俺の冒険が今、始まる!




