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Flyer!  作者: 流暗
一章
7/9

1-⑦

 アルの穏やかな目に、曖昧に笑った俺が映る。


 な、なんだ。そういうことか。


 まぁ実際、大きいドラゴンを従えることで得られる権力に目がくらんで、ドラゴンを道具としてしか見てない人間も、多いらしいからな。


 俺としては当たり前だけど、アルの言ってることも、そのとおりなのかもしれない。


「とりあえず、そこに座ってくれ」


 俺が通された部屋は、バウムクーヘンを半分に切ったようなカウンターの奥にある、ギルド長室ってところだ。


 左右の壁に沿うようにして、大きな棚が並び、奥に長机と椅子、資料の山があり、部屋の真ん中にソファが二つ、木製の机をはさんであるだけだった。


 すすめられたソファに腰かけると、向かい側にアルがティーカップを二つ手にして座った。


「さて、お前の名前を聞かせてもらおうか。あのドラゴンの名前も、あるなら、それも」


 アルがティーカップを俺の前まで、机に滑らせた。


「俺は優花で、ドラゴンはルキ。それで、今回ドラゴ⋯⋯ギルドにきたのは、ルキがドラゴンとドラゴニストを殺してしまったからだ」

「理由があるんだろ」


 アルは机に肘をのせて指を組み、探るような瞳でのぞきこんでくる。


「理由があればいいってことじゃないけどな。実は――」


 ルキが大きくなったこと、俺の左足が潰れたことを伏せ、一部始終を伝えると、アルは小さく息を吐いた。


「そりゃ大変だったな。相棒を殺されかけて、優花も殺されかけたんだから、仕方ないよな。ルキが光属性だから、死に間際で馬鹿力でケガを治し、自分を強化して倒したっていう線が有力か。⋯⋯しっかし、優花が死にかけてなくてよかったな! いくらドラゴンが強くても、自分以外の大ケガを治癒するなんて、できないし。それこそ、古代ドラゴンくらいだ」

「そうだな⋯⋯」


 考えこむアルをよそに、俺は引きつった笑みを浮かべる。


 そうだよな、潰れた足なんていう大ケガ、普通じゃ治せないよな。


 なんの代償もナシにやってのけるなんて、やっぱりルキはスゴいんだ!


 だけど、だからこそ、隠さなきゃいけない。


 スゴいからって、珍しいからって、ルキが悪いヤツらに狙われるのはゴメンだ。


 俺とルキが引き離されるのだって、絶対に嫌だ。


「けど、お手柄だよな」

「何が?」

「何が、って、アレを連れてきたことに決まってんだろ」

「アレ⋯⋯って、アイと男のことか? お手柄なんかじゃない。殺してしまったから、報告にきただけだ」

「はぁ、優花は本っ当にドラゴン協会のことしか知らないんだな」


 本気で言ってんのか? と疲れたようにソファにもたれた。


「そりゃ死体は持ってきてくれたほうが助かるけど、そんなんで報告にくるヤツなんて滅多にいない。大体、殺しちゃったらそこに放置で、俺らギルド職員が通報を受けて、回収しに行くんだ。持ってくる場合は、懸賞金がかかってるのとか、依頼とかだけだ」

「まぁ、たしかに喧嘩とかで殺しちゃいました、なんて、知られたくないもんな」

「そうだけど、別に法とかで裁かれたりとかはしないぞ。なんせ、今の世の中は弱肉強食。狩ってもいいけど、狩りすぎたら世間からはじき出されて、懸賞金を出されるってだけ。ある程度は問題視されないんだ」

「腐ってんな⋯⋯!」


 ギリッと奥歯を食いしばると、体中から熱が発せられているように、皮膚が熱くなった。


 いつかの、命が目の前で消えた情景が、パッとまたたき、胸のあたりがグッと重みを増した。


 強ければ、殺しても許されるなんて、絶対に間違ってる。


 そのたった一つの死で、誰かが奈落に落とされることだってあるのに。もう生きていけないって、命の鎖を断ってしまうことだってあるのに。


 そんなこともつゆ知らず、のうのうと生きているヤツが正しいって?


 ふざけんなよ!

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