第二話 琴峰 朝香 ことみね あさか
まだまだ未熟ですが、どうぞよろしく
その日もまた琴峰朝香は普通道路でバイクをとばし家路を急いでいた。
以前少年を引きそうになったときと違うのは、その時はドラマの録画予約を忘れていたせいだが今回はもっぱらその少年を探す為だった。
あの後やはり少年のことが気になった朝香は会社が終わるとすぐ、以前と同じ時間帯に同じ場所で彼を待ちかまえることにしたのだ。
一度気になると自分が納得するまで突き詰めるのが朝香の性格だった。
その性格のせいで失敗することもままあるのだが・・・
最近は暗くなるのが早い。
夕日が傾きだし、前に来たときより少し暗くなってきた。
それでも少年が現れないので朝香は次のプランに移ることにした。
直接少年が通っているであろう学校へ行くのだ。
朝香は事前にここ周辺の中学校高校を調べ上げ、さらに野球部があるところにしぼり少年が通っているであろう学校を特定したのだ。
少年は学ランを着ていたし、バットがささった部活用のバッグをしょっていたから野球部であることは予想がついた。
インターネットで調べた地図には矢印の先に「桜中学校」と記されていた。
「桜中学校・・・私が通ってたところじゃない・・・」
ふとそんな言葉が口をついた。
と同時に白い息がもれたので、朝香はすこし驚いた。
「もう、そんな季節だっけ?季節が過ぎるのは早いなぁ・・・この間新年会したような気がしてたのに」
夕日が沈むその方向に歩きながら、朝香は何度も口の中で息を暖めては白い息を吐き出した。
少し楽しくなってきた朝香は、口いっぱいに息を吸ってそれをしばらく息を止めて暖めた後に一気に吐き出した。
予想以上にもくもくと白い息が出て、そのときになって少し自分が大人気ないなと思った。
「あんた何やってんの?」
突然後ろから声をかけられ、朝香はビクッとしながら後ろを振り返った。
「と・・・知子!?」
そこには同じ会社でOLをやっている知子がいた。
知子はコートをしっかりと着込んでマフラーを着用し、ニットの帽子までかぶっていた。
その格好がもともとふくよかな彼女をより際立たせていた。
「思いつめたような顔して会社出て行ったもんだから心配してつけて来たんだけど、あまりにも子供っぽいから声かけちゃったわよ」
知子は呆れ顔でそう言った。
「あは、心配してくれたんだ!ありがとう・・・でも、あれだよ!全然大丈夫だから!今日はちょっと母校の桜中学校に用事があってさ、それで急いでただけだから!」
「ふ~ん、そう。だったらいいんだけど。あたしはてっきりこの間言ってた男の子でも捜してるのかと思った」
すべてお見通しといわんばかりの知子の言葉に朝香はすべてがばればれだということを悟って、言い訳をあきらめた。
「もう、知子には嘘がつけないなぁ」
朝香はそう言うと、知子にその男の子が自分の母校に通っている可能性が高いことを話した。
すると、以前の話も半信半疑だった知子はあまりにも熱心な朝香に逆に興味を持ち、一緒に中学校まで行くことになった。
「ところで朝香あなた気づいてないかもしれないけど」
「ん?何が?」
「あなたが嘘をつけてないのは多分あたしだけじゃないわよ」