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[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
銭ゲバ事件簿・犬

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11

わらわらと、大勢の兵士達が、柱の影から、建物の隙間から、次々と現れてくる。


あちこちで捕物が始まっている様子だが、ニコラには全く、なんのこっちゃ。

ただの屋敷の使用人達だったはずの使用人達は、実はどうやら何やら戦闘の訓練されていた人員らしく、四阿の横で控えていた、可愛いメイド服をきたエベリンお嬢様の侍女のお姉様方が、太ももからナイフ出してきて、魔術展開させて戦闘体制に入り、あたりは大騒ぎだ。


キャスはそんな中、本当に気持ち悪くなっちゃったらしくて、茂みの影で、うえ、うえ、とどうやら胃のなかの物をリバースしているらしい。好き嫌いはいけないと、ニコラは思う。


エベリンお嬢様はもう、かわいそうなくらい震えて、四阿の隅で金塊の山みたいな、黄色い体を丸めて泣いてるし、オットーは捕物に加わって、四阿の方には見向きもしていない。


(ひいふうみい、みんな席にいないし、3つだけ残しといたらいいわよね)


ニコラは、テーブルに広がる山のようなお菓子にようやくありつける。

みんないなくなったから、全部ニコラが食ってもいいだろう。でももしも誰か席に戻ってきた時の為に、一応3つは残しておく。ニコラは強欲だが、意地悪ではない。


カキーン!カキーン!と剣を合わせる音がする。剣を奮っていたのは、さっきの執事だ。

あれ、執事の姿では、一部の隙もなさそうな厳しそうなおじいちゃんだったのに、今や兵隊相手に大立ち回りだ。

シェフの格好をしていた男が、包丁をすっ飛ばされて、そのまま反撃に雷魔法を繰り出す。

それを受け止めたオットーとの一騎打ちだ。

なかなか見物するには面白いカオスが繰り広げられているが、甘党・ニコラはそんな事より目の前のお菓子が食いたい。


(うーんこのマカロンはいちご味。あっちのはピスタチオのクリーム。さすが公爵家のお嬢様ともなると、いいもん食べてるわね。じゃあ遠慮してたあっちのチョコレートの粒もいただいていいわね)


手酌で紅茶までおかわりする。

やっぱり川の向こうの紅茶は、香りがちょっと違って、金のかかってそうな雰囲気で美味く感じる。よく出されたお菓子と合うではないか。


この戦闘には「影」の兵隊が呼ばれていた様子。

兵の半分が、屋敷を囲んでいる対魔法の結界の解呪に、呪文の詠唱に入り、ゴロゴロとこの大きな屋敷を囲む、強い結界の全てが、剥がれ落ちてゆく。


何重にも貼られていた様子で、重みを含んだ魔力の塊が、どしん、どしんと美しい公爵家の庭に落ちてゆく。

ニコラのいる四阿も魔力の塊が掠めて行って、ヒいい!とエベリンお嬢様が叫び声を上げている。

これだけ大きな声が出せるのなら、エベリンお嬢様大丈夫そうだ。


やがて結界が解けたのだろう。いくつも紫色の魔法陣が地面に現れて、光を放つと、オットーの部隊の近衛の兵士達が、一斉に紫色の魔法陣から迫り上がってきた。

転移魔法だ。

近衛の兵達は次々に戦闘に加わり、鮮やかな剣技を見せてくれる。見事なもんだ。


茂みでゲロゲロやってるキャスは、毒でも盛られたのかと勘違いされたらしく、近衛所属の白魔術師が、なんだか回復魔法をかけてる。魔力の無駄だと教えてやろうかと思ったが、面倒臭いので、やめた。


しっかりニコラが3杯目の紅茶を終わらせて、あらかたお菓子の山を片付けた頃。

ニコラの大好きな人の声が、四阿に響いた。


「あれ、ニコラちゃん?参ったな、こんな所にいたら、危ないよ」





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