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[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
銭ゲバ事件簿・誘拐事件

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伯爵の金髪の妹は、家の格が同格より少し上の格の貴族に嫁いで、穏やかに暮らしているらしく、社交界でも目立った噂も、特にない。


貴族社会の中では割と重要な位置にいるフォレストからの情報によると、伯爵の妹は控えめな性格で、嫁ぎ先の夫も野心の強いタイプではないし、怨恨で誘拐なぞ、決して夢にも思わないだろうタイプだとか。


参考人として話しを聞きたいと伯爵に妹君の紹介を依頼したところ 伯爵はすぐに応じてくれたが、あいつはそんなことができるタマでないし、しかも甥をとても可愛がっていると、否定的だった。


「人は見かけによらないって言いますからね。怖い話しですね。」


まだ子供の域から出ていないリバーは、素直にそう口にする。


「女は本当に怖いよ。この妖精みたいなニコラちゃんが銭ゲバだって、うちの隊員以外誰も信じないのがいい例だ。」


団員の誰かがそう返して、あたりは大きな笑いに包まれる。

そう、ニコラは妖精の様に美しく、可憐だが、一皮剥けば魔女はだしの銭ゲバだ。


なおニコラは別に銭ゲバである事を恥じていないので、こんな失礼を言われても、ケンカにならない。


「銭が好きで何が悪いのかしらね!結局みんな銭が好きなのに、気取ってもしょうがないと思わない?」


ニコラは、ジャンの馬に一緒に乗って、後ろにしがみつきながら隊員達とおしゃべりに夢中だ。


確かに金が嫌いな人間など、存在しない訳で、人の世の中と価値観を異にする魔女育ちのニコラの主張は非常にポイントをついている。好きか嫌いかと言われれば、当然銭は大好きな隊員達は、苦笑いだ。


ニコラの感受性は銭に特化しているが、この育ちの特殊さからくる一般人との視点の違いこそが、捜査に非常に役に立っている。


そうこうしているうちに、あたりの雑踏は静けさを迎え、緑は深い色を増してゆく。

高級住宅街の一角に一向は到着したのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あの妹は、取り柄は金髪だけだ、などと伯爵は言っていたが、なかなかどうして、高級住宅地の一角にある邸宅から姿を表した伯爵の妹は、華やかさには欠けるものの、上品で控えめな淑女だ。


「兄が大変ご迷惑をおかけしております」


兄の継いだ伯爵家よりも格上の貴族に嫁いだというこのスミス伯爵夫人は、そう深く頭を下げて挨拶をして、地味ながら品のよい客間に一隊を迎えた。


(へえ、結構古いけどいい作りの邸宅ね。ドアのノブは真鍮だし、メッキなんか一つもないわ。あの机も、いいものだけど、めちゃくちゃ古いし、特に高級品でもないわね・・質実剛健ってとこね。)


あのスカした伯爵の妹だというので、もっとニコラは、こう鼻につくような、流行の最先端な感じのご夫人を期待していたので、びっくりしてしまう。


古い貴族は、案外財布の紐が固いのだ。


この流行から3シーズンは遅れたドレスを身にまとった控えめなご夫人に、ニコラが薬を売りつけるとしたら、一番安い方から数えて二つ目の、滋養薬か、睡眠ポーションくらいだ。

こういう連中は、絶対に効果のしっかりしているものしか購入しないし、高級品には目もくれない。

媚薬だの、最新の美肌ポーションなど、新興の貴族が好むような妙なものに手を出したりしない。


(商売には手強い相手ね・・腕が鳴るわ)


ニコラは、こういう銭に敏感な人間は大好きだ。思わず機嫌が良くなってしまう。


(まあなんて綺麗なお嬢さん・・)


夫人は夫人で、むさ苦しい魔法騎士団に囲まれて、ビクビクとしていたが、儚げな美少女・ニコラが満面の笑顔で、チョン、とその真ん中に佇んでいるのを目にして、思わず和んで、心のガードを下ろしてしまう。


この夫人には、立派な息子が3人もいるのだが、娘はいないのだ。


・・実際は、銭へのガードが特級に高そうな伯爵家に、銭へのこの家の感性を感じてご機嫌になって、この銭ゲバから、こともあろうことか親しみを覚えられているだけなのだが・・


「奥様、私はマシェント伯爵令嬢の、ニコラと申します。無理を申し上げて、ごめんなさい。お伺いしたい事がありますの」




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