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[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
ニコラと、ジャンと。

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ニコラが箱を開けると、珍しいキャロットケーキだ!


ウキウキと、ニコラは家の中に、箱を連れて帰る。

魔の森の入り口に置かれた黒い箱は、魔の森に住む魔女宛の荷物。

ニコラは魔女ではないので、黒い箱以外の箱に入れないと、ニコラの元に荷物は届かない。


今日置かれていた箱、これはおそらく、ルイーダからだ。

カードはないが、ルイーダが何を言いたいのかは、ニコラにはしっかり伝わる。


(元気? そろそろ遊びにおいでよ)


満月の魔女に用事がある時は、カエルかイモリの死骸の入った黒い箱の上に、3枚の、できるだけ汚い、錆びついた銅貨を置いておく。

魔女が、面倒くさくて取りに行くのを嫌がるポーションの材料を贈り、その上に、満月の魔女宛として、満月の魔女の趣味である、小銭磨きを知っている相手だと示すのだ。


磨きがいのある汚い小銭をつけて、「貴方に用事がありますよ、貴方の価値観を尊敬しているものですよ」というアプローチをするのだ。


(そろそろ森から出ても大丈夫かな。ルイーダにも会いたいな。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「魔女の場合は、大体中身を三回くらいもらってもらえたら、やっと用事を聞いてもらえる感じ?」


ルイーダが、今日のおやつを白い箱に入れる。

今日のおやつは、カボチャの入ったクッキー。素朴な甘さがとても美味しい。


たっぷり田舎の素朴なクッキーを箱に入れた後、ルイーダはその箱に、非常に田舎くさい、ピンク色の少女趣味な色のリボンを上にかけた。


「こんな色のリボンを欲しがるのはあの森ではニコラだけだから、ニコラに確実にあげたいものがある時は、このリボンをかけておくの。そしたら他の魔女は大体は放っておいてくれるから。」


ルイーダは、フォレストに説明を続ける。

お貴族様に、どこかのご令嬢にするような方法で、丁寧にお願いしてもらったのだ。

乙女ゲージを満たしてもらってご機嫌なルイーダは、この馬鹿者揃いの騎士達のために、ひと肌脱いでやる気になったのだ。


「三回受け取ってくれたら、それから、どうしたらいいんだ??」


前のめりにルイーダに質問をしているのは、フォレストとの話を割り込んできた、この隊の隊長。

すっかり呪いが癒えて、美しいその顔も元通りに回復している、ジャンだ。


「隊長様、まずはニコラちゃんに受け取ってもらえるようなお菓子を考えるところからだよ!」


ガハハハと豪快に笑うのは、この村の村長の奥さん。


「あの子甘党の割には、ベリーの入ってるやつは半々で食べないからね」


「杏は好きなんじゃなかった?前の市の日、銅貨一枚値上がりしてたのでも、ものすごく嫌そうだったけど、結局二つも買ってたもの。」


「間違いないのは栗のやつだけど、まだ季節になってないからね。栗のは割引してたら、いっつも3つは食べるもんね。」


村の娘たちが、楽しそうにニコラの恥ずかしいおやつの状況を話し合う。


ニコラが首ったけのジャン様とやらが、ニコラが「やばい」認定して逃げ回っているお人と同人物である事、それからニコラの命の恩人である事を、フォレストからルイーダは知らされたのだ。

ルイーダは母である薬局のおかみさんに協力を仰いで、大いに喧伝してもらい、今や村中の女たちが、このどうしようもなく行き違っている二人を、なんとかくっつけようと隊長に協力中だ。


「ニコラちゃんが十分お菓子を食べてくれたら、ややこしい言い回しはなしで、用事だけあっさり書いた紙を箱に入れるんだよ。それからニコラちゃんが気が向いたら、家まで行けるように、魔術を解いてくれるんだよ。」


郵便局のおばあちゃんが、そうジャンを諭した。

ジャンは貴族だ。

貴族とはややこしい言い回しをしてナンボの生き物だ。

だがそういう習性の貴族のやり方の手紙などは、絶対に魔女は読んでくれないらしい。ニコラは魔女ではないが、魔女の方法で育ってきた。


「まあ怖い目にあったから、家にはしばらく誰も呼んでくれないだろうね。どっかのお馬鹿さんが、ニコラの家漁りをしたらしいし」


ジト目で薬局のおかみさんはジャンの方を見る。


お人好しのジャンは、事の次第を包み隠さず全部村中に披露しているので、ニコラの大事なツボも無事を確かめて、ニコラに教えてあげた事まで、全部村中に知られているのだ。


ジャンは叱られた子犬のように、しょんぼりと肩を落とす。


尚、ジャンはそこそこ高位の貴族で、しかもこの隊の隊長だ。

そんな人物、普通は村人達は恐れ多くて近づかないし、こんな生意気とも取れる口は決して利かない。

そもそも貴族に対して大変な不敬に当たるのであるが、ジャンの良いところは、この飾らなさ、そして素直さ。


村人たちは、ジャンの事を、高位貴族の青年ではなく、ただのやらかしてしまって、好きな女の子に会えない困った青年にしか、 見えていない。


おかみさんは、ジャンの肩をバンバンと叩きながら、言った。


「大丈夫だよ隊長様!私が腕によりをかけて、ニコラちゃんが好きなやつを作ってあげるから、次の箱も魔の森まで運んでおくれ!何せ遠いから、隊長様が行ってくれると助かるよ。」



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