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[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
双頭の蛇

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「おい、いつまで寝ている、おきろ」


乱暴に、誰かがズカズカと、ニコラが監禁されている部屋に入ってきたらしい。

ニコラは暗闇の中で、軽く、足蹴にされる。


「おい、やめとけよ、始末するにしても、こんな華奢な女の子に、お前には矜持がないのか!」


「格好つけるのか、お前、忘れるな、こいつの父親に頭領は殺されたようなものだ!」


ぼんやりと、ニコラは意識を取り戻した。


(えっと・・3人くらい、中年、若いの二人ってとこか。。この蹴られた感触は、銀貨1枚分くらいの皮のブーツってとこかな・・下っ端ね)


ニコラは、ぼんやりとした意識の中で、ニコラを足蹴にした男の懐具合を弾き出す。

ニコラがこいつにポーションを売るとしたら、賞味期限が切れそうになっているので、安くしてある、ちょっと高めの強壮剤というところか。


「だからといってこんな子供を足蹴にする様な事が許されるか!それに子供とはいえ、貴族の令嬢だ」


「そもそもこの体の細さだ、トラップの魔術がまだ効いてるんだろう。起きないよ。このまま殺せよ」


「寝てる子供を殺すなんか冗談じゃない!お前がやれ!」


ニコラの周囲で、ワイワイなんだか不穏な仲間割れの空気だ。


なお、満月の魔女がニコラを叩き起こす時は、魔法で断崖絶壁に飛ばされたり、魔獣の巣穴に放り込まれたり、と、なかなかのスタンスだったので、ちょっと遠慮がちに蹴られたくらいでは、なにも反応しないし、本気で起こしたかったら、銭でも投げたらニコラはすぐに起きる。


半刻ほど前、ちょい目が覚めた後、直ぐにニコラはそのまま意識を手放した。そこからどのくらい爆睡しているだろう。


別に恐怖から失神した訳ではない。トラップにかかっていた魔術が強かったからでもない。


ニコラは全力で結界を張った後、パン屋さんのおかみさんのお産の手伝いをして、そのまま徹夜でポーションを作成して、ニ刻もかけて村に配達して、取っ捕まったのだ。

疲労困憊で、魔力不足、睡眠不足のニコラの体は、純粋に睡眠を欲していた。


(うるさいなあ・・)


どうせ殺されるのだ。

その瞬間までは、寝かせてほしい。

妄想の世界に逃げ込むことも、許して欲しい。


(何なら、本当に、寝てるうちに一息にやってくれたらいいのに)


ニコラは、頭の上でうるさい男達に気付かれないように、こっそりと自分に、安眠魔法を掛ける。


この魔法はほんとうにささやかな魔力しか必要としないので、攻撃魔法の発動阻害の魔道具にがんじがらめの今のニコラでも、何とか発動できる。


魔女とは、命の理の、彼岸の方に生きる者たちだ。

魔女に育てられたニコラも、銭ほどには、生に対する執着はない。


半分寝ぼているニコラは、魔術を自身に発動させながら、夢の続きに戻る。


------


(無事で・・無事でいてくれ、ニコラ・・)


いつもゆっくりと歩ませる馬の歩みではなく、全速力でジャンは魔の森に走る。

途中で、リカルドが放った、魔術で作った赤い鳥が飛ぶのが見える。警報だ。すぐに騎士団の応援が得られるだろう。


魔の森の入り口まで差し掛かる。ここからは、下馬して歩かないと、面倒な魔女たちの注目を浴びてしまう。


だが、ジャンはそのまま馬を走らせる。魔女達は邪魔してこない。


しばらくすると、ニコラの緑の屋根の小屋が見えてきた。


(いつもなら、認知阻害の魔法がかかっているのに、まるで魔女達が、案内したみたいだ)


不思議に思いながらも、ジャンは馬を急がせる。


「ニコラ! ニコラ!!」


ジャンは、ひらりと愛馬から飛び降りると、鍵のかかっていない玄関の扉を乱暴に開けた。


日の光の下で、可愛いニコラの小さな家の、今まで見ることの出来なかった台所が目に映った。

前回お茶した居間の、そのすぐ横にある、小さな台所だ。


(なんて酷いことを・・くっ)


ジャンは口元をハンカチで押さえて、目を背けた。

ジャンも見覚えのある、カウンターの素朴な可愛いピンク色の皿の上には、ベシャベシャとした魔獣の内蔵らしきものが、血抜きもせず載せらせており、ハート形のまな板の上には悪臭を放つ果物が割られて、そのまま。


釜に放ったままの、大きな銅の底には、ドドメ色の液体が残っており、大方魔法が爆ぜたのだろう、壁にまでねっとりとした液体でドドメ色に染め上げられて、無残な状況だ。


(連中は、こんな嫌がらせまで・・)


ジャンは、無事だったらしい飾り棚の中に、可愛く飾られている、ジャンも振る舞ってもらったハート形の素朴なクッキーを見つけ、この惨状に怒りを覚える。


尚、ジャンは大いに勘違いしているが、この惨状の犯人はこの家の主だ。

そして、少し思い出せば、ジャンがこの家を訪ねた時も、同じ妙な匂いが台所からしていたはずなのだが・・




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