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[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
魔の森から出られない訳
18/115

18

大きな魔力が爆発し、子供の前には見事な防御魔法が発動する。

これほどの見事な防御魔法は、憲兵の手でも難しい。


「まんま、まんま」


子供は、今しがた命の危機を迎えていた事も気づかなかった様子で、ボールを捕まえて嬉しそうだ。


やっと間に合った、パン屋の女将さんが、絶叫しながら子供を抱きしめて、号泣する。


(あ、間に合った・・よかった・・)


ニコラは、木の上から、ほっと胸を撫で下ろした。

遅れてやってきた憲兵隊が一斉に子供に駆け寄り、怪我などの無事を確認すると、今度は憲兵の隊長だろう、筋骨隆々とした壮年の男が、木の上のニコラに敬礼した。


「御令嬢、ご協力に深い感謝を。追って魔法伯爵より、正式にお礼申し上げます。お名前を伺っても」


そう、まだ憲兵隊達は暴れる男をなんとか魔法でふんじばって、しょっ引いている最中だ。


パン屋の女将さんも、ほとんど気が触れたようになってしまっているし、よく見るとこの迷惑な男、あちこちの市の商品をなぎ倒しながら逃げていた様子で、折角の市が、めちゃくちゃになっている。


ニコラも自分の商品をチラリと確認したが、この砂埃を被ってしまった商品はあるものの、何も壊れていない。

ほっとして、ニコラもスルスルと木の上から降りてくる。


「憲兵様、お役に立てて光栄ですわ。私はニコラと申します」


なんとかぎこちなく、ニコラは淑女の挨拶をする。


「先ほどの見事な結界は、あなたですね。これほどの結界を、瞬時で練り出せるとは」


隊長は、興味深そうに、まじまじとニコラの放った防御魔法を観察する。


ニコラの貼った結界は、魔女の使う独特の発動の仕方のする結界だ。

機能性もそうだが、美しさが求められがちな魔法学に置いて、魔女の使う魔術は、ちょっとクセが強いので、見るものが見たらすぐに分かる。どうやら発動に心当たりがあったらしい。


「ああ、なるほど、貴方が満月の魔女のところのお嬢さんか。さすが彼女の仕込みは伊達ではない」


ニコラは、祖母を褒めてもらって、少し誇らしい。


「はい、私は祖母のように魔女ではありませんが、多少魔力がありますので、こうして薬師として細々と暮らしております」


「まだ私が若い頃は、よく満月の魔女には揶揄われた物です。いや、実に懐かしい」


「あら、祖母をご存知ですの?」


「まだ私が駆け出しの門番だった頃から、よく色んな薬を・・・」


和やかな会話が始まろうとしたその時。


「キエエエエエエ!!!!」


ニコラの後ろで、耳を切り裂くような、金切り声が上がった。


声の主は、憲兵に縛られて、身動きが取れないままの、先ほどの男だ。

男が首から下げていた、非常に美しい真鍮細工の魔力探知機が、煌々と紫色の光を放ってニコラの方向に浮かび上がっていたのだ。


「キイいい!!!ハハハハハ!!ついに見つけだぞ、ニコール、お前こんな所に隠れていやがった!」


不気味なまでに爛々と輝く瞳は、焦点があっていない。だらだらと涎を垂らしている。この男の薬物中毒が、深刻な物である事をしめしている。

ニコラの背中に、嫌な汗が流れる。


「探しても探しても見つからねえ訳だ、孤児院もくまなく探したっていうのによ。。魔女に匿われていたとは驚きだ。だがな、もう隠れられないぜ、お前の父親の積年の恨み、晴らしてやる!!」


拘束されたままで、男は大きく口を開けると、何か黒い気体をニコラに向かって吹き付けてきた!


「きゃああああ!」


これは怨念、呪いの深いものだ。体の中にこんな物を飼っていたらしい。

隊長は、ひらりと剣を抜き、ニコラに向けられた気体をなぎ払った。

黒い気体は、ただの呪いの残像だった様子で、一瞬で霧散していった。


男はケタケタと笑い、憲兵達に今度こそ、ピクリとも動けないほどの拘束魔法をかけられて、運ばれていく。


「後は仲間に任せた!ニコールを見つけたぞ、皆殺しだ!!」


バタバタバタ、と黒い鳥が一斉に市から飛び立つ。

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