表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結] 銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。  作者: Moonshine
銭ゲバ事件簿・偽宝石と、聖職者
112/115

24

「ねえフォレスト知ってる?」


ニコラが、悪い顔をして、考えに浸るフォレストに、その美しい顔を近づけてきた。


(本当にこの娘は、美しい。)


フォレストは、ため息をつく。

おそらく、間違いなく、もしもこの娘が犯罪に巻き込まれていなければ、正しく伯爵令嬢としての人生を歩んできたなら、フォレストをはじめとする、この国のやんごとなき貴族の子息は、皆ニコラのその手を求めたであろう。

社交界の花となって、この王国の真珠と、呼ばれただろう。


(だが、今のニコラちゃんの方が、俺はよっぽど、好きだな)


王国の真珠と呼ばれて花のように社交界で微笑むニコラと、道端のゼニを拾って、いひひと屈託なく笑うニコラ。

どちらのニコラの方が、幸せそうだろうか。


フォレストのぼんやりとした複雑な思いを、ニコラは笑い飛ばすかのように、こんな話をする。


「南の国の悪い魔女はね、村に紫の目の子供ができたら、その子供を攫ってきて、肉体を刻んで、魔術の道具にしてしまうんだって」


ニコラは続ける。


「でも、ちょっと東に行けば、目の紫の子供は、光の神様の使いだとかで、今度は大切に、神殿から出してもらえないらしいわよ」


「フォレストは、東の国に生まれた紫の目の子供みたいなもんよ!」


カラカラとニコラは笑う。


(そうか)


ふ、と心が軽くなる。

ニコラにとっては、特権階級に生まれたフォレストは、尊敬の対象でも、侮蔑の対象でもない。


「そう難しく考えないで、得したと思って笑ってればいいのよ!」


(そうだな)


ただ、人よりも「得した」子供。それが、ニコラが考える、フォレストの全てだ。

フォレストの、身分も、富も、与えられたその全てが。

ニコラの心は、清々しい。銭以外の価値観の主軸を持たないこの娘の、その清々しい心は、いっそ慰めになる。


「ねえ、今から、ジャン様が、今日は私のお祝いに、私のお家でお肉を焼いてくださるの。あんたも一緒に来る?一応おめでたいんでしょ?それ?」


ニコラは、こてん、と可愛らしく首を傾げて、先ほど王から受け取ったばかりの、新しい絹のリボン製と小さな黄金でできた、徽章を指差した。


ちなみに、一応、どころではない。

次の満月の夜には、公爵家での爵位の継承を祝う大きな夜会が催される、大きな慶事だ。

今夜は公爵邸には、一族の親族が集まって、大晩餐会が開かれ、フォレストの爵位継承が祝われるという。


だが。


(ニコラちゃん、本当に銭以外に興味ないんだな・・)


ニコラが受け取った、恩寵タバコと銀のボンボニエールの方が、うっぱらうとしたら、この小さな徽章よりは銭になる。こんなもん受け取るだけのために、上から下までガッツリ着飾らされて、王宮に呼ばれたフォレストを、どうやらこの銭ゲバ、気の毒に思っている、様子なのだ。


ジャンは面白そうに笑うと、ニコラに続けて、片目をつぶって言った。


「ああ、フォレスト、よかったら君もおいで。そんなつまらないものをもらう為に、君は難儀な人生を義務付けられてしまったからね。一緒にお祝いをしよう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ