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日常
見慣れない天井を眺めながら、私はそっと掛け布団を肩までかけた。
時刻は午前五時。
空が薄ら明らみ始め、外で鳥が合唱会を開いている。
起きるにはまだ少し早くて、けれど寝る気にはなれない。
起き上がるつもりは全くなく、静かに瞬きを繰り返す。
「なんだ、起きてるんじゃない」
幼さが残る高い声が頭に降り注ぐ。
寝起きに聞くには少々刺激が強い。
「おはよう。今日も早いね」
ひたすらに天井を眺めながら言う。
なんだか見たら負けな気がする。
「私そろそろ散歩に行ってくるわ」
「……いってらっしゃい」
見送る気なんか微塵もなく、右手を僅かに上げて手を振った。
「ヒマリも来る?」
「私じゃ無理でしょ」
「それもそうね」
じゃ、と一言放つと、足音一つ立てることなく去っていった。
いつもの調子は、変に私を現実へと引き戻す。
非現実的なこの家の中で、私だけが既にそれを受け入れていた。