今日もベランダ
「お腹空いたなぁ」
窓の縁に座りながら静かな夜空を眺める。
日中とは違い、空気はどこか澄んでいて、私だけの世界にいるような気がしてくる。
時折遠くの空に車の走行音がこだまする。
重く爽やかに響くその音に耳を傾けてながら、二つしか見えない星を見つめた。
こういうとき視力が良かったら、無数の煌めきが見られるのだろうか。
遠い昔に消えた輝きを……。
私は目を瞑って深呼吸をする。
夜の空気が二十四時間私に纏わりついたなら、少しだけ呼吸がしやすくなるんじゃないだろうか。
昼間の重苦しい空気の中にいるのは正直堪える。
不純物が混ざっているような、濾過する前の濁った水のような、そんな空気は私の肺を無意識に圧迫する。
息が吸えないというのは、私の存在を証明するものが一切消えてしまっているということだ。
昼間の私には酸素ボンベが必要だ。
今目の前にある空気に首輪がつけられたなら、昨日よりも少しだけ堂々と街中を歩ける気がした。
下の階でガサガサと袋を弄る音がした。
ドキッと肩を震わせた私は、深夜の空気を肺いっぱいに満たしてから室内に戻る。
夜食はラーメンに決めた。
私は私を証明するために、今日もベランダに座る