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第21話「食事会は逞しい騎士達と①」

【相坂リンの告白⑪】 


 午後7時、レストラン『探索(クエスト)』個室、宝剣の間……


 今日の食事会という名の自由お見合い、すなわち実質的な合コンは、

 私の後輩シスタージョルジエットが企画し手配した。

 

 お相手は、王都の警備にあたる王都騎士隊の精鋭騎士様達である。

 その中に、運命の再会を果たした私の彼氏騎士隊副長クリストフ・レーヌ子爵様、すなわち転生した『トオルさん』も居た。

 

 騎士様達は、ひとりを除いて全員明るい。

 爽やかな笑顔が素敵である。

 中でも私から見て、最もイケメンでカッコいいのは、トオルさんなのだが。


 ただ唯一、隊長のフレデリクさんだけはとても生真面目って感じで、やや表情が硬め。

 まあ、仕方がないかもしれない。

 超が付く硬派で真面目だと、評判の御曹司だから。

 

 少なくとも、女性にだらしない軟派の『チャラ男君』よりはず~っとマシである。

 シスタージョルジエットによれば、アランさんがそういうタイプらしいのだが、彼の礼儀正しそうな物腰から、とてもそうは見えない。

 

 さすがに……

 シスタージョルジエットの思惑は、トオルさんへは言えなかった。

 この飲み会の趣旨が、アランさんを徹底的に弾劾し、吊し上げて告発するモノだなんて……

 

 う~、頭痛い。

 ストレスで胃も痛くなりそう……

 

「こ、こんばんは!」

「聖女の皆さん、お忙しいところお時間を頂きありがとうございます」

「宜しくお願い致します」

「あの子……可愛いっ!」


 騎士さん達は、挨拶をして来たり、嬉しそうに騒ぐ若い子も居た。

 

 トオルさんはというと、やっぱりというか、

 「お忙しいところをありがとう」と優しく労りの言葉をかけてくれた。

 うん、素敵だ!


 ここでシスタージョルジエットが、「そっ」と私へ耳打ちする。

 やはり……念押しだった。

 当然、例の件の……


「シスターフルール、準備は宜しいですか? 最初の取り決め通り、あいつの化けの皮をはぎますから、私をしっかりサポートしてください」


「は、はい……」


 やっぱり気乗りがしない。

 私は遠回しに「当惑」の返事を戻した。

 だけど、怒りに燃えるシスタージョルジエットには全く伝わらないようだ。


 あ~、また胃が痛くなる~。

 

 さてさて、今夜のメンツは女4人に男4人。

 シスタージョルジエットの指示で、男女各4人ずつ並列、女と男が対面になるように向かい合う。

 

 通常は職級、年齢等を考慮し、席順を決める。

 なので、シスターシュザンヌ、私、シスタージョルジエット、シスターミリアンの順に座った。

  

 また会が終わるまでに、全員が話せるようにもするのが、このような会の常識。

 一定の時間が経てば、男子のみが席を時計回りに移動する。

 暗黙の了解なのだが、シスタージョルジエットからは、全員へ通達があった。

 

 もしもファーストインプレッションで、お互いに意識したりとか、

 既に思惑があったしても、以上の仕切りに例外は認められないらしい。

 

 改めて見やれば……

 トオルさんが、私の真向かいに座ったのでホッとする。

 

 だが、今後の女子軍団の動向には重々注意しなければならない。

 え? アランさん糾弾の件?

 いえいえ、それもあるけど、違う件なのです。

 そう、トオルさんの件。

 すなわち、私以外のシスター達が、魅力的なクリスさん、否!

 トオルさんへ熱くアプローチする可能性があるし、

 『彼女』である私としては全く気を抜けないもの。


 そんなこんなで、最初は……自己紹介からである。


 幹事同士は知り合い。

 だから、当然お互いのフルネームを知ってはいる。

 しかし、他の参加者は最初、ファーストネームと職業のみ名乗る。

 もしも話が弾んで親しくなったら、ここで初めてフルネームと詳しい素性を教え合うのが、異世界合コンのローカルルールらしい。


「フ、フレデリクだ。お、王都騎士隊の隊長を務めている、今回は全員が騎士。俺の部下なので名前だけ名乗らせる」


「クリスです」


「アランです」


「カミーユで~す!」


 男性陣の紹介が終了し、続いて女性陣である。


「シュザンヌです! 創世神様にお仕えする聖女をやっています。こちらも全員聖女だから名前だけ言いますね」


 シスターシュザンヌから目で促され、私が続く。


「フルールよ」


 そして同じく、他のふたりも、


「ジョルジェットです!」


「……ミリアンと申します」


 わぁ!

 やっぱりというか!

 

 改めて見やれば、フレデリクさんを始めとして、タイプはそれぞれ違う、

 だが、騎士様は全員凛々しい。

 私も、トオルさんが居なければ、目移りしていたかも!

 

 自己紹介が終わると、乾杯に……

 店の方も心得ている。

 冷えたエールのジョッキが出て来るタイミングは、絶妙かも。

 

 ちなみに、この異世界では、魔力で冷やせる冷蔵庫が普及しているという。

 なので、かつての地球の中世西洋と違い、食材の鮮度は抜群でとても美味しい。

 これ、ラノベで言う『ご都合主義』って事かしら?

 

 飲み物は冷蔵庫で冷やすのは勿論、店専属の水属性魔法使いが居て、

 驚くほど冷やした飲み物を出してくれる。

 

 挨拶後に、乾杯の音頭を取るのは男性幹事の役目。

 今回は、アランさんである。


「では! 今夜の素敵な出会いを祝して! 貴女達、聖女の美しさに乾杯!」


 うっわ~。

 さすがは、イケメン騎士。

 きざなセリフも違和感が全くない。


 さあ、乾杯だ。

  

「「「「「「「乾杯!」」」」」」」


 カッチーン!

 コーン!

 コン!


 陶器製のマグカップが、軽くぶつけられる乾いた音が鳴り響く。


 さあ、いよいよ合コン……否、食事会の開始である。

 私は左横のシスタージョルジエットを、そっと見た。

 

 一見可愛い笑顔なのだが、やはり表情が硬い。

 少々心配、否、大いに心配。


 シスタージョルジエットの真向かいに座るのは、彼女の『標的』アランさんである。


 彼が言った乾杯の音頭を聞き、まずは透き通るような美声に驚いた。

 まるで一流歌手のようだ。

 

 もしも、こんな声で甘く愛をささやかれたら、女子はたまらない。

 加えて、さらさらの美しい金髪に碧眼。

 端整な顔立ちは、女子にもてもてなのも凄く良く分かる。

 

 片やシスタージョルジエットだって、女性から見ても魅力的。

 もしもふたりがくっつけば、とてもお似合いのカップルなのだが……

 

 ふたりを見守る私は、何となく嫌な予感がしたのである

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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