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第20話「食事会は清らかな聖女達と①」

【大門寺トオルの告白⑩】


 7時の集合まで時間がなかったので……

 俺とリンちゃんはお互いの現状と気持ちを確かめあった後……

 この異世界へ来た経緯のみ、極めて簡単に話して集合場所へ戻って来た。

 

 でも、これでもう安心。

 余裕を持って、食事会へは臨める。

 幸せの足音は確実に聞こえている! 


 まあ、あまり仲良くべったりで帰還すると、いやらしいし、バレバレ。

 せっかくの合コン前なのに、しらけてしまうに違いない。

 

 なので残念ながら、リンちゃんとは怪しまれないよう別々に戻った。


 ……という事で午後7時、レストラン『探索(クエスト)』個室、宝剣の間。


 今日の食事会という名の自由お見合い、すなわち実質的な合コンは、

 俺の後輩『赤い流星』ことアラン・ベルクール騎士爵が手配した。

 

 改めて言えば、お相手は創世神様に仕える聖女様達。

 その中に、運命の再会を果たした相思相愛である俺の彼女フルール、

 すなわち異世界転移した『リンちゃん』も居た。

 

 聖女様達は、全員明るい。

 可愛い笑顔が素敵である。

 中でも俺から見て、ダントツ一番は当然リンちゃんなのだが。


「今晩わ~」

「今晩わ!」

「宜しくね!」

「あの人……恰好良い」


 聖女様達は元気良く挨拶をして来たり、ぽつりと呟く子も居た。


 ここでアランが、「そっ」と俺へ耳打ちする。

 やはり……念押しだった。


「クリスさん、度々申しわけない。最初の取り決め通り、フレデリク隊長をしっかりサポートしてください。それと乾杯以降の司会も宜しくお願い致します」


「了解、任せてくれ」


 当然、俺は「打てば響け」の返事を戻した。


 さてさて、今夜のメンツは男4人に女4人。

 アランの指示で、男女各4人ずつ並列、男と女が対面になるように向かい合う。

 

 通常は爵位、職級、年齢等を考慮し、席順を決める。

 今回俺はフレデリクさんのフォローを頼まれた。

 なので、違和感なく一番上座にフレデリクさん、俺、アラン、カミーユの順に座った。

  

 また会が終わるまでに、全員が話せるようにもするのが、このような会の常識。

 一定の時間が経てば、男子のみが席を時計回りに移動するのだ。

 暗黙の了解なのだが、念の為、全員へ伝えておく。

 

 もしもファーストインプレッションで、お互いに意識したりとか、

 既に思惑があったしても、以上の仕切りに例外は認められない。

 

 改めて見やれば……

 リンちゃんが、俺の真向かいに座ったのでホッとする。

 

 だが、今後の男子軍団の動向にはじゅうぶん注意しなければならない。

 フレデリク隊長やアランが、魅力的なフルールさん、否!

 リンちゃんへアプローチする可能性だってあるし、全く気を抜けない。


 最初は……自己紹介からである。


 幹事同士は知り合いだから、当然お互いのフルネームを知ってはいる。

 だが、他の参加者は最初、ファーストネームと職業のみ名乗る。

 話が弾んで親しくなったら、初めてフルネームと詳しい素性を教え合うのが、

 これまた、異世界合コンのローカルルールなのだ。


 あらら、隊長そんなに緊張して大丈夫ですか?


 俺達隊員が見守る中、フレデリク隊長は、キレイな聖女さん達を前にして緊張でガチガチ。

 名うての猛者とは思えない……


「フ、フ、フレデリクだ! お、お、王都騎士隊の隊長を務めているっ! こ、今回は、ぜ、全員が俺の部下なので名前だけ名乗らせる……」


 ここで、元気に俺達隊員も挨拶。


「クリスです」


「アランです」


「カミーユで~す!」


 男性陣の紹介が終了し、続いて女性陣である。


「シュザンヌです! 創世神様にお仕えする聖女をやっています。こちらも全員聖女だから名前だけ言いますね」


「フルールよ」


「ジョルジェットです!」


「……ミリアンと申します」


 おお!

 やはりというか!

 シュザンヌさんを始めとして、タイプはそれぞれ違うが、全員可愛い。

 俺も、リンちゃんが居なければ、絶対目移りするところだ。

 

 そして少し驚いた。

 間違いない!

 彼女を王宮の晩さん会で何度か見かけた事がある。

 何と! 

 枢機卿の孫娘ミリアン殿()が居るではないか!


 どうして?

 と、思ったが……

 よくよく考えれば、こちらにも公爵閣下の御曹司フレデリク()がいらっしゃる。

 何か、事情があるに違いないが、下手に詮索などするのは野暮だ。


 自己紹介が終わると、当然ながら乾杯をする。

 店の方も心得ていて、冷えたエールのジョッキが出て来るタイミングは、バッチリである。

 

 ちなみに、この世界では、魔力で冷やせる冷蔵庫が普及している。

 なので、かつての地球の中世西洋と違い、食材の鮮度は抜群でとても美味しい。

 

 飲み物は冷蔵庫で冷やすのは勿論、店専属の水属性魔法使いが居て、

 キンキンに冷やした飲み物を出してくれる。

 

 挨拶後に、乾杯の音頭を取るのは幹事の役目である。

 今回は、男性陣の幹事役であるアランだ。

 乾杯以降は、俺が仕切りを頼まれている。


「では! 今夜の素敵な出会いを祝して! 貴女達、聖女の美しさに乾杯!」


 うっわ~

 さすがは、イケメン騎士。

 不器用な俺なら、絶対に無理!

 

 アランは気障(きざ)台詞(セリフ)を平気で言い切った。

 でも、カッコいいから、全然嫌味に聞こえないのが凄い。


「「「「「「「乾杯!」」」」」」」


 カッチーン!

 コーン!

 コン!


 陶器製のマグカップが、軽くぶつけられる乾いた音が鳴り響く。


 さあ、いよいよ合コン……否、食事会の開始だ。

 フォローを頼まれた右横のフレデリクさんを、俺はそっと見た。

 

 何となく、表情が硬い。

 挨拶の時も、緊張して噛んでいたし、少々心配だ。


 フレデリクさんの真向かいは、シュザンヌさんである。


 長いさらさらの金髪を、ポニーテールにした綺麗な碧眼の女性。

 少し冷たい雰囲気もあるが、顔立ちは整っている。

 胸もそこそこあってスタイルも良く、正統派の美人と言えるだろう。

 

 そして……

 まともに聞いたら「殺される」ので、絶対にそんな事はしないが……

 シュザンヌさんはおおよそ30歳といったところ。


 俺は再び、フレデリクさんを見る。

 

 髪はシュザンヌさんと同じ金髪でさっぱりとした短髪。

 彫りが深く濃い顔立ち。

 クラシックな2枚目タイプであり、体格もごつい。

 鍛えぬいた、典型的な騎士という雰囲気だ。

 もしシュザンヌさんとくっつけば、ホントお似合いのカップルなのだが……

 

 でも……

 さっきから気になっているが……

 フレデリクさんは、物腰までがやけにぎこちない。

 

 俺は、何となく嫌な予感がしたのである。

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