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第13話「お見合いの勧め」

【相坂リンの告白⑦】


 『ぼっち』になった私は、仕方なく単独行動で会場をうろうろしていたが……

 やがて、午後6時30分となり、主催者の挨拶が始まった。


 このパーティの主催者は王家、

 それも国王陛下の弟君テオドール様。


 国民から親しみを込めて、『殿下』と呼ばれるテオドール様は32歳。

 王国宰相も務める重鎮で、頭脳明晰な凄い切れ者。

 その上、超が付くイケメン。

 だけど王位への野心が全く無い、誠実清廉な方だから陛下の信望も厚いそうだ。


 え?

 じゃあ、殿下が恋愛対象にならないかって?


 そんなの無理無理!

 絶対無理!!

 テオドール殿下は王族で、遥か雲の上の方。

 いくら私が貴族の娘とはいえ……

 しがない男爵家では身分が違いすぎるというもの。


 さてさて!

 前世日本でも、私はパーティなるものにあまり出席した事はない。

 いつかはすっかり忘れたが……アリサではない友人から、婚活パ―ティに誘われた事があった。

 だが、行かなかった。

 看護師の仕事が超の付く多忙さだったし、知り合いが皆無に近い会合など行きたくはないからだ。


 でもこのような時の作法は知っているし、この世界の聖女フルールの知識も後押ししてくれる。

 うん、この後の展開は、っと。

 確か……

 テオドール殿下の挨拶終了後に合図をされ、シャンパン、ワイン等で全員が乾杯するはずだ。


 やがて……

 殿下の挨拶は終わった。


 予想通り、乾杯準備の声がかかり、皆が一斉に近くのグラスに手を伸ばした。


「ルナール王国の、ますますの発展を創世神様へ祈願し、乾杯!」


「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」


 当然私もグラスを高々と掲げ、乾杯を唱和した。

 そして冷えた白ワインに口をつけたその時。


「おいおい、フルーじゃないか? 一体どうしたね?」


 魂が同居するフルールが、聞き覚えのある声だぞと教えてくれる。

 だから私リンには分かる。

 

 この人は……身内である。

 母の兄にあたる方、すなわち伯父さんだ!


 そう、声をかけて来たのは、

 私が身体を借りたフルール・ボードレ-ルの伯父、

 冒険者ギルド総務部長バジル・ケーリオだった。


 それもバッタリという言葉がぴったり。

 正面から向き合い、目まで合ってしまった、

 だから、今更どこかへ隠れるわけにもいかない。


「バ、バジル伯父様?」


「うむ、フルール、久しぶり。一体どうしたね?」


 いや、一体どうしたね? じゃない。

 こっちこそ、どうしようか、私は大いに迷った。


 ここで正直に「合コンなんです」などと理由を言ったら、すっごくややこしい事になる。


 自由お見合いはイコール婚活食事会。

 すなわち私フルールが結婚を望んでいると丸わかり。

 それは困る。

 凄く困る。


 何故ならば、心に棲むフルールの記憶がはっきりと教えてくれる。

 この伯父さんには困った性癖があるのだと。


 私リンからすれば、もう大昔? になるだろうか、

 前世私の居た日本には良く言えば世話好きな、

 悪く言えばお節介なオジ、オバがい~っぱい居た。


 彼等彼女達は、適齢期またはそれ以外の対象へでも……

 ひたすら『縁結び役』として徹し、

 結婚成約数を生き甲斐として来たのだ。

 このような方々のセリフには、いくつかのパターンがある。


「良い人が居る」

「良いご縁の口がある」

「いいかげん良い年齢だし、そろそろ結婚を考えてはいない?」

「せめて写真だけでも見てくれる?」等々……


 物腰は柔らかく、断りにくい誘い文句で、半ば強引に『お見合い』を設定してしまう。

 まあ、こういう方々がずっと健在ならば、もう少し日本の成婚率は上がっていたかもしれないとは思った。 


 このバジル伯父はまさにそういう人。

 彼の伴侶、つまり伯母にはフルールがとても可愛がられていたみたい。

 だから、彼女は幼い頃から、良く遊びに行っていたのだが……

 大人になってからのある日、事件は起きた。


 実は『婚約破棄事件』があって、各所から何度もお見合いの話はあった。

 フルールはずっと断っていたのだが、この伯父から、『あるお見合い』を勧められたのだ。

 

 当然フルールは断った。

 

 しかし伯父は諦めなかった。

 「めったにない好条件だ!」とやたらに強調。

 何度も何度も誘って来たので、下手をすれば大喧嘩になりそうなくらいになったのだ。

 

 でも……

 幸い伯母が間に入り、事なきを得た。

 だが、それ以来この伯父の家からは足が遠のいていたのである。


 閑話休題。


 ここはフルールの意思を尊重しよう。

 私リンは、少し考えてから答える。

 

「ええ、ちょっと職場の友人達と食事会です」


 自分でも思う。

 とても曖昧(あいまい)な言い方だって。


 でも聖女という職業上、嘘はつきたくなかった。

 だからこう言うしかない。

 実体は合コンなんだけれど、食事をする。

 ね、嘘はついていないでしょ?


 私の言葉を聞いたバジル伯父は「ふうん」と言う。

 自分から聞いといて、あまり興味なさそうな返事。


 ああ、ピンと来た。

 もうこの人、自分の話したい話題へ切り替えようとしているんだって。


「ちょうどよい、フルールに紹介したい人が居るんだ」


 わぁ~~!!

 案の定、来た来た来たぁ!!

 必殺の「お見合いしましょう」攻撃が来たぁ!!!


 私はヤバイと思い、すかさず身をひるがえし、逃げようとした。

 だが、しかし!


「へぇ、貴女が部長の姪御(めいご)さんですか?」


 伯父の声ではない、全然若い男性の声が背中へ追っかけて来た。

 ハッとして、思わず立ち止まり、振り返ると……


 背が高く逞しい、法衣(ローブ)姿の男性がひとり立っていたのである。

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