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004 初期投資って大事よね

「畜生、ご老体め。何が手短に話す、だ。かなり長かったぞ」


 聞けば占いの歴史から始まり、関係ない話がちまちまと挟まっておりとてもじゃないがチュートリアルとは思えない説明だった。

 演出と言われれば確かにリアルではあるが、ゲームとしてイマイチな仕様ではなかろうか。

 要点だけ言えば、クエストは水晶に触れば受けられるものが自動でピックアップされ、そこで選択すればOK。受付どころか、職員が不在である理由がよく分かった。また、どこまで上げればいいのかわからないが職業レベルと【未来視】のスキルレベルを一定数上げることで何かが起こるらしい。その先は俺が辿り着いたら言うということで詳細不明。

 

「たったそれだけのことなのに、かなり時間を喰ったものだ。あと、やっぱりこのゲームマスクデータ多すぎだな」


 そして、ソウはメルダが最後に言った事が気になって仕方がない。


「占いは幸も不幸も呼ぶ。扱いには気を付けること――ねぇ……」


 正直、いろいろと試すつもりでいたのだが全くやる気が起きなくなってしまった。イベントはすでに始まっているようで、マップの下にイベント進行中を告げるテロップが流れていた。

 

「クエストは受けたとはいえ、まずは準備をしてからだな」


 最初は無難にポーションの素材となる薬草5本採取と、ブラックタートルという亀を1体討伐するクエストだ。どちらも報酬500マーニ。相場はわからんが適正か、少し安めなのだろう。ギルドクエストはそんなものだ。

 モノシスは森に囲まれたフィールドと聞いていたが、どこかに湖があるのだろうか。なんにせよ受けられるクエストがこれだけで期限もないため両方とも受ける。

 さすがに水晶玉担いでクエストに臨む勇気は持ち合わせていないので、せめて手ごろな直剣か短剣が欲しいところだ。

 ソウはマップに従って装備屋を目指した。

細い道を通り、一度大通りに出てから教会とは逆方向に進んでいくとすぐの場所にあった。

 大きく目につく看板には剣とハンマーが交差している様子が描かれており、大変わかりやすいものだ。

 中に入ると遠い対面にカウンターが見える。正面から向かって左側には棚が三列並び、そこに武器が飾られているようだ。右側には防具を着たマネキンが数体設置されており、そこで同じ旅立ちセットを着ているプレイヤーとNPCの店員がやり取りをしているのが見える。カウンターにも店員がいるので、順番を待つことはないだろう。

 ソウは武器棚を物色した結果、どれも高額であることが分かった。

 ……直剣は諦めるか。

 最低でも手持ちの桁を二つは増やさなくてはやっていけない。諦めて短剣を探すと、予算がぎりぎりのどうにか買えるレベルのものがあった。それをカウンターに持っていき即購入。現代の買い物と何ら変わりなかった。

 

「獣骨の短剣か。安直だなぁ」


・獣骨の短剣

  DV:100

  ATK(Attack):30

  

  獣の骨から作られた短剣。骨であるため刃こぼれがしやすく切りにくい。



「フレーバーテキストの優しさよ」


 手入れを怠るとすぐ切れなくなるし折れるので注意しろということだろう。繋ぎの武器だから仕方ないとはいえ、これで4000マーニするのだ。可及的速やかに金策をせねばなるまい。これはお使いクエストの周回を視野に入れる必要があるな。

 武器・防具の手入れは鍛冶師を持つプレイヤーか装備屋に依頼するしかないとのこと。砥石とかで最低限の手入れもできないのか。なかなかシビアだ。店でする場合、初回は無料だが次からは有料とのことなので、2回目を回るまでにはまともな武器に手を出したいところだ。

 なんにしても、武器は手に入れた。後はポーションを揃えてフィールドに出るとするか。

 ポーションは調合ギルドで購入できるということで、そちらに向かう。その前にNPCが経営している商店に寄ってみたのだが、ポーションは売っていなかった。ポーション販売はギルドのみのようだ。

 調合ギルドの看板は試験管に入った液体をフラスコに注いでいる絵だった。

 覗いてみるとプレイヤーの活気が外からでも伺えた。寂れた占いギルドとは雲泥の差であった。

 そういえば、装備屋は鍛冶ギルドと一緒じゃないんだな。

 ソウは扉のない入り口をくぐると急に視界が暗転し、先ほどの光景とは違った作りの室内に立っていた。


「はい?」


 突然転移させられたことで、思わず立ち止まってしまった。


「おや、いらっしゃい。その様子だと初めて来たようだね。ここは調合ギルドが運営する店だよ。調合師のジョブを取っていない人が来る場所だよ」

「ああ、分けられているのか。理解した」

 

 関係ない人がギルド内を往来するのは運営するうえで面倒だろうからな。要件がある場合のみ通行許可が下りるのだろう。

 装備屋とは違ってここはカウンターが一つあるだけの質素な空間だ。ログハウスの内装というのは落ち着いた雰囲気があっていい。人が三人いればかなりきついことを考えると、プライベートスペースだろうか。

 棚が無いのは無暗に薬を手にすることを防いでいるのだろう。


「それで、お客さんは何をお望みかな?」


 黒い肌の禿頭に白衣、30代前半の店員が尋ねてきた。名前が青のためプレイヤーだった。

 ゲインというらしい。


「ああ、済まない。初めて来たもので相場どころかどんなポーションを売っているのも知らないので、一通り教えてほしい」

「そうだね。始めたての君が購入できるのは……初級の青、緑、紫、黄色ポーションだよ」

「それぞれどのような効能があるので?」

「青がHP、緑はMP、紫が毒、黄色は麻痺だね。回復薬には初級、中級、上級と段階があって上に行くほど回復量や効能が良くなるよ」


 ゲインは4種類の細い瓶をカウンターにひとつずつ置きながら説明してくれた。


「ちなみに、初級の価格はさっきの順に、300、500、200、200マーニだよ」

「ふうむ……」


 先ほど短剣で散財したばかりの懐には大部きついが仕方あるまい。

 なけなしの金で青と緑のポーションを購入。毒麻痺は今後でいいだろう。


「まいどあり~」


 ソウはゲインに見送られて外へ転移した。


次回、フィールドで初戦闘

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