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016 クエストの更新

「あらあら、いらっしゃい。待ってたわよ」

「うむ。そろそろ頃合いと見たのでな」


 精霊の森を訪れたソウは相変わらず祠に腰かけていたフェリアに出迎えられた。

 彼女の掌にはアマガエルモドキが乗っていた。

 フェリアはモンスターに好かれるのだな。

 この間追加されたヘルプを見ても、ソウは精霊という立ち位置がどういうものかまだ掴めていなかった。しかし、現状友好的な関係であったとしても今後どう転ぶかはプレイヤーの行動次第と見ている。

 WEOの世界は高度なAIによってNPCが統治されている。これまでのNPC達はどれも自我を持ち、人間と同様の思考をしている。

 あのご老体などはいまだ運営のPCではないかと疑っている面もあるが、これまでのやり取りからしてマスクデータで好感度が設定されていると思っている。


「そうね。前見た時より見違えて強くなっているようだし、改めてお願いしようかしらね」


 こちらの実力も把握できるのか。統治AIは結構なデータをNPCに渡しているじゃないか。ご老体もそうだったがあちらの方がもっと多くの情報を握っていそうである。


「では、改めてお願いね」

「承ろう」


 クエスト欄が更新されましたというアナウンスが響く。

 ソウはコンソールを開いてクエスト欄を眺めた。

 タイトルは変わらず風精霊のお願いだ。しかし、クエスト達成条件が変更されている。


「ふむ、気性の荒い相手を累計3体倒す……か」

 

 ここに来るまでにワイルドボアと戦闘になったが、ほぼ同格になったことでこちらの攻撃がキッチリと入るようになっていた。おかげで短剣の耐久値もそれほど消費することなくワイルドボアを討伐できている。それを加味して、あと3日で3体ならばエンカウントさえできればどうにでもなるだろう。幸いにして明日から休みだ。課題は終わらせているし、多少時間をこちらに割いても問題はない。

 

「ええ、貴方にとってちょっと重いお願いになってしまったわ」

「なに、これくらいの挑戦であれば引き受けよう」


 ソウはこの会話に引っ掛かりを覚えたが、とりあえず先に進めることにした。


「そう……頼もしいわね。でも、前にお願いしたときにも言ったけれど無理だけはしないでね」

「うむ。承知した。では、しばらくこの森で散策をするとしよう」

「いってらっしゃい。貴方の帰りと吉報を待っているわ」


 コンソールを消したソウは、ふとマップに視線が行く。……この泉はセーフティエリアだったのだな。今まで気付かなかった。確かに、フェリアもいてモンスターたちも襲ってこないのであれば納得だ。

 フェリアに頷くと、ソウは泉を後にした。

 ソウは先ほど思わぬ接敵をしたことで青ポーションを使ってしまっている。回復アイテムの補充をすべく、調合ギルドへ向かうのだった。

 コンソールを見たときにソウは気付くべきだったのだ。

 精霊の森でイベントボスであるワイルドボアを討伐しても、フェリアのクエストがクリアにならなかったことに。



 一面の緑と自身の背丈の何倍もある大樹が数多く連なっている光景に、ベルカたちは声が出なかった。

 木々の上にはログハウスが建てられており、梯子が垂れている。

 地面にも建物はあるが、どちらかといえば頭上の方が多いだろうか。


「ほえー、ツリーハウスだよ。まさしくエルフが住んでますって感じ!」


 そう感想を述べたスモポンだった。

 

「だな! てっきり落ち着いている雰囲気かと思ったが、結構活気ありそうだ」


 がっしりとした全身鎧に身長ほどの大剣を背負い、難なく動かしている“MAX”タロウはガハハと豪快に笑う。

 今日は全員ログイン出来て、無事にサートリスへたどり着くことができた。

 最後にロックリザードの大群を引いてしまい、途中のセーブエリアまで飛ばされてしまうのではと危惧していたところに、PTが進んだ場所まで移動できるアイテム、転移石でやってきたタロウが参戦。物理火力の面が安定したことで一気に巻き返して進むことが出来た。


「ほんと、この主人公め。これでタイミング計ってないんだからびっくりよ」

「あん?」

「はいはい、とりあえずそれぞれのギルドに行くよー」

「そうね。ギルドで報告後、教会で集合ということでいいわね?」

 

 いつもの茶々をトーがいなし、ベルカが今後の方針を固める。

 異議なしということでそれぞれのギルドへ散っていった。

 それを見たベルカは教会に向かった。ジョブ僧侶のギルドは聖職ギルドとなっており、拠点は教会となる。諸々を済ませて皆の戻りを待つだけであった。

 ギルドや商店といった必要施設は地上にあり、一々梯子を上って頭上のログハウスに行くという面倒なことをする必要がなくてありがたかった。


「さて、消費したあれこれを補充しに行きましょうか」


 ベルカはまずギルドではなく商店を目指した。サートリスの建築物は木造建築が主流のようで、石やレンガ、アスファルトなどを用いた建物はそれほど多くなかった。地域性を出すには十分である。

 また、プレイヤーを除けば人口はエルフに軍配が上がるだろう。ゲームであるが故、プレイヤーアバターは現実よりもわずかに美化されるものだが、彼ら(エルフ)は軒並み美形揃いであった。

 ベルカにしては珍しく、視線のやり場に困る街であるようだ。

 マップを頼りに街一番の商店で、このエリアの特産やこれから狩るであろうモンスターの素材の相場を把握していく。こういった相場はAIが商業ギルドを通して管理しているため、余程のことがなければ暴落はされないようにシステムが組まれている。よってプレイヤーやNPC間の交渉時にも公平な価格として利用されている。

 

「サートリスは薬草やポーションも商店に並ぶのね」


 意外だったのはポーション類がNPCショップに売っていることだった。ポーションは調合ギルドの直売店でなくては入手が出来ない仕様となっていた。厳密にはNPCであっても許可が出れば販売できるようなのだが、モノシスやアジーラでは見かけていない。

 

「種族差かしらね」


 エルフは自然とともに暮らす民族であり、薬草の調合に秀でている。生活の一部である以上、制限などしようもないということなのだろう。

 むしろ、ギルドが差し押さえなぞした日には、エルフとの関係が変わってしまう可能性すらありそうだ。


「エルフの歴史、少し調べてみようかしら……」


 NPCクエストに繋がるかもしれないと踏んだベルカだったが、調べものよりもまずはギルドに向かうことを優先したのだった。

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