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014 互いの進捗状況

「残りあと3日でイベントも終わりだが、蒼は今どんな状況なんだ? イベント参加出来そう?」


 課題やらバイトの都合で蒼は3日間、それほど長くログインできなかった。


「うん? 琢磨には言ってなかったか? 不意打ちだったがイベントボス1体を討伐したくらいだ」

「おや、意外と早かったじゃないか」

「俺もこればかりは想定外だった」


 いつものラウンジで来週までの課題をやりつつ、蒼たちはイベントについて話していた。今いるメンバーは俺と琢磨、啓子、隼人の4人だ。

 鈴香は講義、康太郎はバイトらしい。二人とも、今日は会わずに終わることだろうな。


「あれ? でもレベル低いほど当たりやすいって話じゃないですか」

「それは10代からの話よ。蒼が当たった時はレベル5だったみたいだし、運が悪かった…… 逆に良かったんじゃない?」

「いや、俺としては勘弁してほしいのだが。いきなり10レベ差はきつい」

「ですよねー」


 紙パックのイチゴオレを啜りながら、隼人は俺を見てきた。


「で、蒼先輩は今レベルいくつになったんですか?」

「今は占い師が13だったな。盗賊が8。サブは5レベから急に上がらなくなったが、仕様だよな」

「うん。知っての通りサブは経験値がかなり必要になるからね。最初はメインとさほど変わりないんだけど……」

「とは言っても、俺のスタイル的に占い師のような動きはしてないがな」


 俺は水晶玉を持った盗賊だからな、元から占い師はおまけでしかないのだ。とはいえ、メインとして据えている以上は手を出さないとこの先が厳しくなって来るかもしれない。


「それからが鬼門ですよね。僕もまだ弓士4レベですし」

「隼人は私たちよりもログイン出来ないんだから、それでも早い方よ」


 泉以降、【未来視】を使っていない。というよりも、あまり使う先が見つけられないでいた。とりあえずはフェリアのクエストを優先してレベル上げに勤しんでいる。あれが片付いたらまた使ってみるか。


「しかし、始めて早々称号取るのは流石だよ」

「昔の勘が戻ってきた?」

「さあな」

「さてさて、蒼はいくつクエスト隠しているのやら」


 啓子はニヤニヤしつつジト目でこちらを見ていた。

 隠しているのは確定なのか。確かに言ってないものはあるが。


「お前らは最近どうなんだ? というよりも、そっちの情報全く聞いてなかったな」

「うん? 確かに聞かれてないからね」

「今はねー解放された第三の街に向かう途中だよー」

「サートリスだったか」

「そうそう」


 第一の街で田舎をモチーフにしたモノシス。水の都と呼ばれる第二の街、アジーラ。そして今回のイベント中に解放された大自然の中にある街、サートリス。

 そしてサートリスにはなんと、


「エルフがいたと」

「うん。NPCだけど、ヒューマンとエルフが一緒に住んでる。いくつかスクショが出回ってるよん」

「聞いた限り、僕たちとは友好的な関係らしいね」

「そうなのか」


 エルフは作品によって閉鎖的だったり迫害の対象で敵対関係にあったりすることもあるので、友好的なのはいいと思う。大自然が舞台ということでマッチしている。

 

「僕らの話に戻るけど、4人ともレベル30を超えたよ」

「わーお」

「ほう」


 さすがベータ勢。邁進しているじゃないか。


「30レベがアジーラのMAX帯だったな」

「うん、通常エリアの敵はそうだね。フィールドボスは45だけど」

「因みに、フィールドボスを倒したら俺と同じ称号は手に入るのか?」

「いいや、確認されてない。フィールドボスはフィールドモンスターとはレベルが10以上離れていることが前提で組まれているんだ。そのような確定してる環境下で称号は貰えないよ。何か別の条件があるんだと思う」

「やっぱソロじゃない?」

「それはあり得ますね!」


 10レベ離れたワイルドボアをソロで狩ったと言った時のこいつらの反応は驚きよりも呆れの方が強い。なんせ、蒼はこれまで幾度となくソロで格上の相手をしてきたのだ。

 琢磨たちにとっては今更である。

 

「琢磨先輩たちも強いですよねー。SNSで話題じゃないですか!」

「さすが」

「まあ、これでも一応上に立ってたものだし」

「あはは……前のゲームでのやんちゃがこっちでも引き継いじゃってるんだよね」


 最先端の攻略こそしていないが、彼らもトッププレイヤーに含まれているようだ。

 なんとなく想像はしていたので、こちらとしてもそれほど驚くことでもなかった。WEOをやる前は別のVRゲームでもトップ集団に混ざっていた連中だ。最近は課題量が増えて継続的なログインが出来ないことを理由に攻略組には加わっていないが、それが無ければ絶対に前を行く奴らだ。みんなで履修を考えて前期に詰めているのでスタートダッシュは犠牲にした感じだ。夏休みから後期はほぼ全力で挑むことになっている。


「ソウだって、広まれば大変じゃない?」

「ほっとけ」


 出来るだけ目立たないようにソロでやってるのだから、その話はしないで欲しい。本格的にこいつらと合流するとなれば腹を括るしかないが、それまではのびのびと静かに暮らしたいものだ。


「ハンネは?」

「みんないつも通り」

「わかりやすいことで」

「探しやすいでしょー?」

 

 康太郎は“MAX”タロウ、周りからは太郎、M太郎とかマックスとか呼ばれてるはずだ。啓子はスモポン、鈴香はベルカ、琢磨はトー、隼人はハヤブサ、暦さんはクロである。それぞれリアルの名前から一部流用している。そのままなのは俺くらいだ。

 

「まだクランシステムが解放されていないからパーティだけだけど、そのうち結成できるだろうからその時はよろしくね」

「いや、俺がリーダーはやらんだろう?」

「勿論。頭は康太郎がやると思うよ」

「方針とか、その辺だよねー。丸投げ!」


 俺らがクランを作るとトップは康太郎を据えて、あとは鈴香と俺が回す感じだな。琢磨と啓子は顔が広くて他との交渉に一躍買っているし、色物枠として隼人がなんか引っ掛けてくるので侮れない。俺と同じくらいユニーク発見器で自由に動いている組だ。


「そういえば、あいつらは?」

「スルメイカなら見たわ、爺と根暗はまだ見てない」

「烏賊はいたのか」


 彼らもまた、クランを結成したらひょっこり居つく連中である。昔から一緒にゲームをやっているメンバーであるが、別に強要などはしていないのに自然と集まっている。なんだかんだ居心地がいいらしい。


「蒼はまだ根暗とは会ってないのよね?」

「知らんな」


 蒼は最近までデジタルゲームを絶っていたこともあり、知らないメンバーもかなりいることだろう。


「あ、僕はネクロニカさんを見ましたよー」

「そっちも知らん」

「あのひとは深夜しかいないからね。まだ見てないな」

「有名なら掲示板などで話題に上がったりするのでは?」

「うーん。私たちもまだ本格的に攻略とかしないから、誰がいるのかまだ把握してないのよ」

「そのうち勝手に集まるでしょって放置してる」

「さようで」


 クランが結成されれば勧誘合戦が始まるだろうし、それまでは放置でもいいのかもしれんな。爺がいてくれると武器関連が楽になるんだが、こればかりはわからないことだ。スルメイカがいるのであれば、防具の方は頼るのも有か。

 因みにクランシステムはゲーム内に各自クランホームを設ける都合上サーバーに大量の負荷がかかることが予想されており、リソース確保のため現在開発中とのことだ。予定では夏頃解禁されるみたいなことを運営が報じていたが、どうなることやら。


「さて、課題終了。悪いが俺は先に帰らせてもらう」

「むぅ、相変わらず早い……」

 

 啓子は俺と同じ課題のはずだが、話に夢中になって手が止まっているようだ。

 ちらりと視線を琢磨と隼人に向けるが、彼らも同じく終わっているようで苦笑を浮かべていた。


「どうやら終わってないのは啓子だけみたいだぞ」

「えぇ~、なら帰ってやるよー。皆、先にログインしてて」


 ここで後回しにしないのは、啓子のいいところであった。


「じゃあ、帰るぞ」


 机を綺麗にすると、一同はラウンジを後にした。

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