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010 不穏な噂

 占いギルドに入ると、メルダがカウンターに座っていて本読んでいた。

 表紙は読めないが、魔導書か何かだろう(偏見)。

 ちらりとこちらを見てきたが、すぐに本へ視線を戻している。大した用はないらしい。

 ソウも言葉を交わすことなく、大水晶の前に立つと受けられるクエストを探した。


・薬草5本採取:500マーニ

・モノシスの泉の水を3本納品:2000マーニ

・ホーンラビットの肉5個納品:600マーニ

・フォレストウルフ1体の討伐:700マーニ

・フォレストウルフの肉5個納品:1000マーニ

・マッドフロッグ1体の討伐:400マーニ

・マッドフロッグの毒袋3個納品:400マーニ

・ホーンホース1体の討伐:800マーニ

・ホーンホースの角1対の納品:4,000マーニ


 めっちゃ増えてるが、特に気になったのは水汲みクエストだ。

 ソウはメルダへ恨めしい視線を向けた。向こうは視線に気づいたようで、憎たらしいほど清々しい笑みを浮かべていた。

 報酬が半分だったんだが!

 まあ、あの段階では受けられないクエストだったのだから必要経費と思うしかあるまい。

 とりあえず、フォレストウルフとホーンラビットの依頼は受けておくか。水汲みは恐らくだがフェリアの許可が下りない限り汲むことは難しい。となると周回は期待できないだろう。一応期限がないから受けておくが。

 このゲームのシステムとして、採取クエストは期限が書かれているもしくは緊急と付いていない限り期限なしのクエストとして扱われる。期限なしの依頼でもいつの間にかクエストリストから消えていることもあるので無限に受けることは叶わないが、受けられるクエストが無くなるということは無いように設計されているらしい。

 カエルと角馬に関しては裏の森でしか見ていないので、討伐しようにも憚れる。そのため今は受けずに置いておこう。

 待てよ、このラインナップは……


「もしや俺が一度出会ったのみが表示されている?」


 だとしたら先のブラックタートルはどうなのかという話だ。


「常駐クエストは定期的に入れ替わるよ。お前さんの見聞は関係ないね」


 ご老体からありがたい一言が飛んできた。なるほど。


「感謝する。無駄な検証をせずに済んだ」

「それは何よりだねぇ……」


 しまったとばかりにご老体は顔を顰めていた。やはりこいつ確信犯ではないか? 

 ギルドマスターがこれでは所属者が増えないことにも納得だ。未だこのギルドでプレイヤーを見た覚えがない。ギルドが密かにインスタンス化されていたりしないだろうな?


「ソウ、何か失礼なことを考えているね?」

「こういうときだけ名前で呼ぶのな!」


 思わず素が出てしまった。


「ふぇふぇふぇ」


 これ以上あのご老体に遊ばれるのは癪なのでもうログアウトするか。


「ご老体、上の部屋を使っても構わないだろうか」

「構わんよ。お前さんはいろいろとしてくれそうだし、サービスしておくさ」

「では、使わせてもらう」


 ピコンと、脳内アナウンスが聞こえる。どうやらマップに使用できる部屋の案内が追加されたようだ。

 なんにせよ宿を確保できた。

 今度は無事すり抜けることが出来た。


「……たまに封鎖しておこうかね」


 とても不穏なぼやきが聞こえてきたので、是非とも止めて頂きたいものだ。



 蒼たちはロードの店内でカードをしつつ、WEOの意見交換をしていた。


「いるとは思っていたけど精霊がこんなに早く見つかるなんてね」

「だよねー。見つけた人、テイムでもできたのかな?」

「ヘルプを読んだ限り、使役は不可って書いてあったよ」

「ほんとですか? 俺、精霊を見てみたいんですけど」


 きりっとした細身で色白な少年を連想させる容姿をした、路原隼人みちはらはやとは出したカードで場をリセットすると新たな札を切った。


「隼人ー、それ強くない?」

「これでも最低の方……しまった!」


 見渡せば卓を囲む全員の顔がニヤついていた。まんまと手持ちを推測させる発言をさせられてしまったことに、隼人は後悔した。


「ほんと、うちの子は純粋よね。お母さん心配になるわ」

「あいつらが悪さするのもありますが」


 それを眺めていた暦は嘆息気味に呟いて、蒼と鈴香は苦笑。


「なーによう、蒼たちだってよくやるじゃない」

「お前ら相手にはな」

「贔屓だー!!」


 後輩にカマかけている啓子には言われたくないものだ。

 ほかにもちらほらと人がいる中、蒼たち5人は店側の暦と隼人を加えてWEOについて話していた。無論、内容は先日蒼が解放した精霊についてだ。

 蒼は自分が解放したことを告げておらず、一同の推測に耳を傾けている。

 

「そういや、モノシスの街で心霊現象が起こっているって、掲示板で話題だぜ?」


 しれっと手札を無くして上がっていた康太郎が興味深いことを口にした。

 ゲームで心霊現象とな。


「それは私も聞きました。なんでも教会の裏方で壁を通り抜けた人の姿が見られたそうですね」

「それは面白いな」


 蒼は努めて自然な表情を張り付けて会話に混ざった。いや、俺は壁にある扉を抜けたはずだ。ギルドのように壁へ激突した覚えはないので人違いだろう。


「見たやつがその人間の名前が見えなかったって証言してるから、プレイヤーであることは確定らしいぜ。早速モノシスの隠しクエストをしている奴がいるようだ」

「WEOにも隠しクエストあるのか」

「そりゃ、あるさ」

「前線組の何人かもNPCとの会話からクエストが生えたって証言してるし、そっちじゃないかな?」

「いいですねー。個別クエストってやつですよね?」

「そうそう」


 独自クエスト、個別クエストとプレイヤーが勝手に付けているだけなので、正式名称は分からない。

 隼人が目を輝かせながら話しているのだが、君また最下位なのはどうなんだ?

 本人は至極楽しそうにしているので結構なのだが。暦さんは頭を抱えている。ゲームを提供する店員としてもう少し頑張ってほしいという親心が伝わるのはいつになるのだろうか。


「そういや、隼人は合流したのか?」

「はい! 先輩たちのPTに先日合流しました。残るは蒼先輩と母さんだけですね!」


 元気が良くて何よりだ。

 隼人は本当に犬のようで、しっぽが視えてしまいそうなほど表情で機嫌がよくわかる奴だ。明るく友好的なためすぐにいろいろな人と溶け込んで人気者となるため、ロードの広告としては成功しているのが救いだろうか。


「息子よ、私はしばらく合流できないわよ」


 暦さんは疲れた顔で答えた。今にもやりたいオーラをまき散らしているのは皆知っているので話題に上げることはないのだが、この愚息に気遣いと空気を読む機能は完備されてはいなかったようだ。搭載しているものの、発揮することの方が稀というだけだった。


「俺もまだ合流はイベント後になると思う」

「あら、蒼も何かクエストをしているのかしら?」


 スッと目を細めて鈴香が聞いてくる。おっと、藪蛇だったようだ。


「ギルド関連の依頼だ」

「お使いクエストね」

「やっぱどこにもあるんだねー。因みにどんなの?」

「収集クエだな。用途は教えてくれなかった」


 嘘は言ってない。


「ふうん。あ、そういえばさー、騎士団の友達から聞いたんだけどモノシス領のお嬢さんの病気が治ったんだって」

「あら、そうなの?」

「うん。なんでも高価なポーションが手に入ったみたいでね。その原料が希少だって話だよー。調合ギルドの連中が騒いでたから、多分別の処から出てきたんだろうねー」

「それって、俺らも使えんのかね?」

「さあ? そのポーションがどんなものか分からないんだよね。領主は公開するつもりがないって調合ギルドに言ったらしいし、」

「だよね」


 それを聞いた蒼は思案顔になった。

 まさか、泉の水ではあるまいな?

 だとしたら、俺は間接的に領主の娘を助けたことになるのだが、さすがにそれはないか。


「ねえ、みんな。蒼がなんか考えてるけど、あれってさー」

「そうだね。でも聞かないでおこうか」

「あいつ頑なに吐かねえからな」

「そうですよ。例え蒼先輩が人助けクエストをしていたとしてもどうせ後で分かるんですから」

 

 おうおう言ってくれるねえ、後輩君。

 後ろから大きなため息が聞こえたので、心の中で暦さんには合掌しておく。


「そういえば、隼人は何のジョブにしたんだ?」

「蒼先輩逃げましたねー。別にいいですけど。どうせなら先輩たちと違うものにしたかったので、メインは弓士でサブは調合師です」

「エルフみたいだな」


 自然の中で育つ狩人みたいなジョブ構成に思わずエルフを連想してしまった。


「確かにエルフっぽいですね! もしアバター変えられる機能実装されたらエルフにします!」

「なんか、元気な村っ子なイメージがすんなりと出てきたのだけれど」

「俺もだ」

「同じく」

「いやー、照れますねー」


 笑顔で頭をかいている隼人に、暦さんのHPは限界を迎えたようだ。カウンターの下でもがいていらっしゃる。これ以上は暦さんが持たないだろうな……


「今度胃薬でも差し入れしようかな……」

「そうね。蒼、後で買いに行きましょうか」

「だな。割り勘でいいよな?」

「ええ。大丈夫よ、啓子たちにも出させるから」

「別にそんな心配はしていない」


 ロードは今日も平和だった。


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