〜朝霧大地の異世界転生〜
逃げなきゃ、逃げなきゃ終わる。ここで終わるわけにはいかない…
腕から流れ出した血は、手をつたって地面に流れ落ちる。
意識が朦朧としてきた。もう駄目かもしれない…
こんなはずではなかった…
寒い、寒い。頭がぼうっとする。視界もどんどん…
あれ?なにも見えない…
「ここはどこだ…?」
いつの間にか俺は全く見覚えのない場所にいた。
周囲を見渡すとまるで宇宙の中にいるような光景が広がっていた。
しかし、太陽はない。地球も月も見えない。
更に自分は立っているのに、地面があるようにも見えない…
透明ガラスがあるようにも見えない。浮いているのか…?
「こんにちは、朝霧大地様」
左のほうから女性らしき声が聞こえた。振り返ると、そこには大学生くらいの女の人がいた。
さっき周囲を見渡した時にはいなかったと思うが、気づかなかっただけだろうか。
「私、いわゆる転生プログラムを担当させていただいているシナイと申します。」
転生…?どういうことだ?まずここはどこだ?
「何か疑問でもありますか?」
目の前の女性は続けて笑顔で俺に話しかけてくる
俺はとりあえず真っ先に感じた疑問を彼女にぶつける
「色々あるんですけど…まずここどこですか?」
女性は表情ひとつ変えずにこう俺に告げた
「ここは、あなた達のわかりやすそうな答えでいうと、天国と地獄の通過前といったらわかりやすいしょうか」
まるで自分とは違う存在みたいなアピールをされて
え?ならこいつ何者なの?と思ったがじわじわとその答えの意味が分かってきた。
天国?地獄?ってことは…
「俺死んだのか?」
「はい!」
女性は表情一つ変えずに答えた。
なんてことだ、俺は死んだのか
だけど全然死んだ実感が湧かない。
だって、頬をつねれば痛いし、地面はないが立っている感覚はあるからだ。
しかし、それよりも不思議なことがある
「俺はなぜ死んだんだ?」
なぜ死んだのかわからない。
しかもだ、俺は自分が誰だかわからない。
「あーそれはですねー」
女性は表情一つ変えずに笑顔で答えた。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――で死にました。」
聞こえない。聞こえそうで聞こえない。一番大事なところなのに耳にノイズがかかってしまう。
「もう一回言ってくれません?」
「だからーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーからです。」
「もう一回」
「え?―――――――――――――――――――――――――――――だからって言ってるじゃないですか。」
聞こえない
「すいません…なんか大事なところだけ聞こえないみたいなんです…」
「え?なによそれ」
「何でかわかんないですけど…」
記憶がない。死因不明。
「えーこいつめんどくさー」
段々目の前の女が本性を表し始めてきた
「まぁいいや。とりあえずあなたは若いし、他の世界でも有効に使えるくらい魂も元気なので他の世界に派遣しまーす」
「え?」
「で、異世界に行ったらその世界は破滅の危機に瀕しているのであなたに解決してもらいます!」
「て…転生って何?世界の破滅…?」
「具体的にいうとあなたがクリア条件を満たしたらOK!クリア条件っていうのは貴方がその世界で達成しなきゃいけないこと!例を挙げると魔王を倒せーだとか魔王の座に登り詰めろ〜とか!
もしかしたらその過程であなたの記憶も戻ってくるかも!なんて!」
は?
「ちょっと質問はまだ終わっ「死後の世界でも難聴のままなんて人は聞いたことないけどめんどくさいからさっさといってもらうわね」
「は?おい待て「何か文句でも?」
「あ、いやなんでもないです」
おいなんで俺折れたんだよここで
「じゃあしゅっぱーーーーーーつ!クリア条件はーーーーーーーーーーー!!!!」
クリア条件すら聞こえないのかよ…
女がそう叫んだ瞬間俺の体は質量が無くなったかのように動き出しブラックホールのような何かに吸い込まれた