マスゴミ③
魔女を正義とするネットの流れ。
そこに都合のいいほころびが出始めたことに気が付いたマスコミは、次の手を打つ。
「サウノリアの現状」
「サウノリアに多くの難民が発生」
「混乱する世界経済」
サウノリア王国は魔女によって政権が交代した。
交代した新政権は旧政権、魔女の森を責めた前政権を厳しく批判し、魔女との融和路線を取っている。
魔女自身、新政権に思うところは無く、以前と変わらぬ付き合いをしていた。
しかし魔女との戦争で多くの軍人が引退を表明してしまうなど、混乱の種は尽きない。
他にも魔女と戦う為に購入した兵器の代金など、多額の戦費を投入したことで国庫は空っぽになっていて、サウノリア王国は非常に厳しい状態にある。
マスコミは、それを大々的に報じたのだ。
「話し合いで解決できなかったのか」
「国連は話し合いの場を設ける用意があった」
「なぜ、魔女はサウノリアに挑発行為をしたのか」
もともと、サウノリア王国の掲げた大義が偽りであった事は明白だ。
それは世界中の誰もが知るところであった。
ならば、話し合いで解決できたのではないか。
国連を味方に付け、戦わずして森を守るという選択肢があったのでは無いか。
そうすれば、サウノリア王国への被害はもっと少なかったのでは無いか。
反魔女であるマスコミはそういった論調で足並みを揃えていった。
これらの宣伝は非常に上手くいった。
サウノリア王国が「魔女の森はサウノリアの領土である」と言いだしたとき、世界中でそれが嘘だと暴き立てられ、大義はそこで地に墜ちている。
あのまま戦争をできたかというと、非常に怪しい。
魔女の挑発がなければ戦争はすぐに始まらなかっただろうし、その時間で戦争を仕掛けるのを止めるように言い出す国が多く出ただろう。
多くの名声を集めた人間ほど、何かあったときの落差は激しい。
英雄ほど、民衆から多くの「英雄像」、高潔なる振る舞いを求められる。
それが適わなかったとき――英雄は、誰より強く叩かれる。
さすがに世界中の全員がいきなりという訳ではないが、多くの人間が手のひらを返す。
魔女を疑問視する者、魔女に恐れを抱く者が静かに増えていくのであった。