マスゴミ①
魔女が100年ぶりにその猛威を振るったためか、世界で空前の魔女ブームが巻き起こっていた。
魔女グッズを勝手に作って大儲けをたくらむ者。
魔女に関する逸話をまとめて出版する者。
その反応はかなり好意的だ。
魔女への視線が好意的なのはサウノリアが悪役であったことも関係しているが、魔女が100年の沈黙を破った瞬間に立ち会ったとして、自分たちが歴史の生き証人になったようで気持ちが高揚しているのだ。
“魔女バブル”は大いに沸き立った。
そうなると、魔女の事をもっと知りたいと思うのは人の常である。
魔女は理性的な相手には理性的に対応するという話は出回っているし、実際に言葉を交わした者もいた。
ならば自分も。
そんな事を考え、自称ジャーナリストたちが動き出す。
「すみませーん! 一言お願いしまーす!」
「少々お時間をいただきたいのですがー!!」
「五月蠅い連中だね! アタシには話したい事なんて何もないよ! とっとと帰りな!!」
もしも、訪れたのが一人か二人であれば、魔女も応対しただろう。
しかし同じような事を考えた連中は十や二十ではきかず、百を超えた。
これでは魔女が顔を出したくないと考えても不思議ではない。
常識で考えればわかる事だが、静かに暮らしたいだけの人間は、家を大勢に囲まれることを好まないのである。
ただ、それは魔女の側の理屈。
誰からも“知る権利”を与えられることが当然だと考えるジャーナリストには通用しない。
「一言だけでいいんでー!」
「前に来た人には話をしてくれたじゃないですかー!」
「もったいぶってないで早く出てきてくださいよー!」
勝手な事を大声で喚き散らし、魔女を引っ張り出そうとするが。
彼らは最終的には魔法で強制退去をさせられる羽目になり、二度と森に入れぬようになるのであった。