魔女の森⑧
死神の鎌は、いつ、その首筋に刃を当てていたのだろうか?
世界中に謎の訃報が一斉に届いた。
その数は百を超え、とてつもない規模の混乱が起きた。
世界中に届くような訃報だ。死んだ人間は一般人ではない。
石油王、大銀行の頭取、世界一のIT企業の社長、国連の事務総長……。
死んだ本人の名前はともかく関連組織の名前は誰でも知っているような、世界に多大な影響力を持っていた人間が一度に心不全で亡くなった。
そして、その部下も少なくない数が死んでいた。
謎の突然死だ。
分かっている。
これが、魔女によって引き起こされたという事は。
多くの人は知っている。
彼らの組織がサウノリアに対し、不当な締め付けを始めていた事を。
だからみんな考えた。
これは、魔女の制裁だと。
――魔女の逆鱗に触れた者は、必ず死ぬのだと。
当たり前だが、これだけ大勢が一度に死ねば、シーナ大央国の時の比ではない混乱が起きる。
前回は大陸にある、大国ひとつで済んだ
今度は世界中で大混乱だ。
石油王が死ねば、石油を輸入に頼っていた国が困る。
大銀行の頭取が倒れれば、資金繰りが一時的に硬直する。
大企業の経営陣がマヒすれば、多くの人が職を失う。
一つの国で済む話などではなかった。
かつて魔女は、サウノリアはシーナ大央国がテロリストに乗っ取られたときに、一年を期限とした制裁の限定解除を行った。
それから一年が過ぎていて、すでに魔女の制約は再び魔女を縛っている。
だから、今は魔女の制裁は森に対し直接行動を起こそうとしたものだけのはず。
実際、文言はネット上でも公開され、解釈の介入がしないようにと考え抜かれたものだから、穴は無い。
魔女の制約とはいったい何だったのだろうか?
混乱する世界に、不条理を体現した魔女の笑い声が響き渡る。




